タイムシフトのためのタイムシフト

HDDレコーダーからどんどん逃がし - まんぷく::日記でHDDレコーダーの容量不足が。
ヴィデオデッキが普及した頃からずっと、家庭用録画機器の利用目的はタイムシフト、即ち放送時間の先送りにあったと言える。外出中の放送分や裏番組の視聴など、当時からその手の需要は高かっただろう。
1週間あたりどれぐらいの時間がシフトするのか、それは人によって/状況によって違うから一概には言えないが、仮に毎日1時間〜2時間程度のシフトが発生するとしよう。そうすると週あたり10時間程度、それの消化に充てる時間が必要になる。
例えばヴィデオ時代のサラリーマン生活。毎日19時に帰宅して23時に就寝するとする。うち1時間程度が食事と入浴などに費やされ、1時間ばかりニュース番組を見るとして、2時間程度は空き時間がある。これならばシフト分の消化は充分に可能な筈だ。余剰分もわずかだから休日に回せば充分消化できる。
ところがHDDレコーダー時代になると少し様相が変わって来る。毎日のシフト時間はそう大きく変わらないかも知れない(キーワード自動録画や2チャンネル同時録画など手軽になり適用範囲が広がった分増えるとも考えられる)が、帰宅後の時間割が大きく違う。恐らく食事と入浴で1時間、インターネットに1〜2時間、ゲームに1〜2時間……1時就寝としてもタイムシフト分の消化に当てられる時間は精々1時間だろう。余った分は休日に送られるが、休日は休日で普段できない分まとめてゲームしたりちょっと外出したりしているうちに消化できる時間が激減する。
こうして僅かづつでもシフトされた時間が蓄積して行く。HDDの容量はたっぷりあるから「あとで暇な時に」とどんどん先送り、気が付けば消化し切れないほどの時間が……


タイムシフトは「空き時間を有効活用する術」であって「空き時間を増やす術」ではない。偶の情報集中時間帯を均一化する余裕のあった時代ならいざ知らず、この情報氾濫社会にあっては均一化してもなお帯域が上限まで使い切られる。最早単純なタイムシフトは限界に達しているのだ。
今必要なのは「空き時間へ移す」技術ではなく「空き時間を移す/作る」技術である。拘束時間の短縮が望めないのであれば、拘束時間を二重に利用する。例えば風呂場で利用可能な防水テレビや通勤中に録画分を見る携帯動画再生機器はそうしたコンセプトの産物だ。また、録画データのハイライト要約機能やWebの「まとめサイト」は情報取得にかかる時間自体の短縮を目指した機能と言える(後者に関しては、却って取得情報量を増大させる可能性もあるが)。
しかし有効利用できる時間がそうそうあるわけでもない。どんなに追求したところで1日は24時間しかないのだし、その全てをフルに使うことなどできない。次に要求されるのは「不要な情報取得を抑える」機能なのかも知れない。