アポロが月へ行ったことを理論的に説明する

何故か根強いアポロ陰謀論であるが、先日ふと反証を考えついたので書いておく。
結論から言えば、米国の有人月面着陸がフィクションでないのは、ソ連がそれを検証可能だったからだ。


アポロの月面有人飛行という目的が科学的意識から出たものではなくイデオロギーの対立としての、米ソによるある種の代理戦争であったことは論を俟たない。
そうした中で相手に先んじることは何よりも急務であって、その意味では「できそうにないからでっち上げた」という陰謀論者の主張は一見筋が通っているように思える。
しかし、この論はソ連の動向を考慮に入れていない、弱い理論と言える。


NASAが実際に月へ人類を送り込むことができず特撮によって誤魔化そうと考えたと仮定する。他に月面を見たものは居ないから、きちんと科学考証を行った末に再現すれば、それは充分な説得力を持つことができるだろう。ただ一つの例外を除いて。
例外、それは即ち競争相手たるソ連に他ならない。当時、宇宙開発ではソ連の方が先を行っていた。世界で最初に人工衛星を打ち上げ、世界で最初に生命を大気圏外へ送り出し、世界で最初に有人宇宙飛行を成し遂げ、世界で最初に月面へ探査機を送り込んだ。そのソ連が、月面にソ連人を送り込まない筈があろうか。
特撮は想像による再現でしかなく、それは実際に行ったものには敵わない。もし特撮で一時的に誤魔化せたとしても、数年、あるいはひょっとしたらほんの数ヶ月のうちに嘘はバレてしまう。
これが、特撮を検討した場合のごく自然な結論であろう。


無論、実際にはソ連は有人月面着陸を行わなかったのだが、当時の情勢を考えればその僅かな可能性に賭けるという危険は冒せなかった筈だ。もし一時的な勝利を得られたところで、すぐにその嘘は暴かれ、ソ連は怒りを以て米国を非難するだろう。国内に対しては「ソ連が嘘をついている」でシラを切り通せるかも知れないが、国内を煽ったところで冷戦外交上の効果は薄い。


以上から、NASAは確かに有人月面着陸を行ったと断言できる。