星月夜の井戸

その「蟲師空間」にキーワード登録せんと、「星の井戸」について調べてみた。確か帝都物語でも語られた、白昼に星明かりの見えるというものである。
Google様の御託では、どうやら神奈川県にあるものらしい。それも複数。


一つは鎌倉市坂ノ下、海岸沿いは極楽寺へと至る坂の下に「星月夜の井戸」なるものがある。
今ひとつは小田原市、山王川近く山王神社の境内にありて社の別名を「星月夜の社」という。
更に、座間にも同様の言い伝えを持つ井戸が存在する。星谷寺の「星の井戸」である。


いずれも能書きはほぼ同一であるので、うちいずれかがオリジナルであり残りは伝承を模倣したものと考えられる。或いは、すべてが模倣であるのかも知れない。そもそも神奈川県にばかり集中するというのも妙な話で、条件さえ揃えば再現する現象であるならばこんな狭い範囲に集中するのは奇妙と言える*1。全国、どころか世界中にあっても不思議ないものだが、少なくとも検索では出てこなかった。


帝都物語では「深い井戸が白昼の散乱光を吸収して、真上の星が見える」と謳うが、これは恐らく荒俣氏が文献に見出した井戸の能書きなのであろう。実際のところ只の深い井戸にそのような効果のあろう筈もないが、「星が見える」という以外に何の効能も因縁話もないらしいのが、伝承としてはなかなか面白い。

*1:条件の一つが「神奈川県下」なのかも知れないが(笑)