「iPod携帯」を成功させるために

DoCoMoによるiTunes連携端末開発の報
記事中ではNTTドコモauの優位性に対する切り札としてiTunes連携端末を打ち出してきたようだが、果たしてその目論見は成功するだろうか。


iTunes連携端末、所謂「iPod携帯」の利点とは何だろうか。
携帯を音楽プレイヤーにする発想は古くからあった。携帯は日常的に持ち歩かれるが、大半の時間を待機に費やす。では、未使用の時間を何か有効に活かせないだろうか。その答えがカメラの搭載であり音楽再生機能であるのだろう。
ではiTunesと連携できさえすればiPod代わりになるのか?それは疑問だ。


iPodの優位性の一つは、自分のコレクションをすべて持ち歩けることにある*1。従来のポータブルオーディオのように外出前に持っていく曲を決めるのではなく、外出先で「今聴きたい曲」を決めるというのは、一度知ってしまったらもう戻れない世界だ。今更インターネットのない世界に戻れないように。
その点で、携帯サイズでは全曲を持ち歩く容量を確保できないという問題が生じる。メモリーカードを使用しても精々512MB程度、100曲ちょっとが限界だろう。
まあ、容量についてはiPod Shuffleもほぼ同様の問題点を抱えているが、Shuffleの場合はそれを(ほぼ)シャッフル再生専用機とすることで解決した。1000曲からランダムに100曲を再生するのも1000曲からランダムに抜き出された100曲をランダムに再生するのも、価値は変わらないという発想だ。しかし大胆にも表示部を持たないShuffleと違い、iPod携帯では液晶画面があるからシャッフル専用とはし難い。
そうすると、iPod nano程度の容量は欲しいところだ。韓国では既にHDD搭載携帯も出現している。4GBマイクロドライブの内蔵はそう難しくはないだろう。


iPodのもうひとつの優位性は、操作の簡易さにある。回転するホイールによる直感的なインターフェイスiPodを語る上で欠くべからざる要素であろう。然して携帯にホイールを装備するだけのスペースがあるだろうか。
Expiredでも結論づけられているように、現在の音楽携帯のインターフェイスは決して優れているとは言い難い。携帯で一般的な十字キーでは、スクロール時に連打または長押しが必要となるが、そのような操作方法で長大なリストを操作するのは容易ではない。せめて、旧SONY端末に見られたジョグダイアルは欲しいところだ。
これに対する一つの解決策は、キーボードはタッチパネル──ドコモと三菱、2画面携帯を試作 - ITmedia Mobileのように液晶タッチパネルを搭載して擬似的にスクロールホイールを再現する方法である。本家の持つクリック感によるフィードバックを期待できない欠点はあるが、ナンバーキーとスクロールホイールをスペース的に両立する方法としては適切ではないだろうか。


本当はそこまで含めてAppleが端末をデザインし、各キャリアが実装するという体制が望ましいと思うのだが。


ところでiPod携帯にはもう一つ問題があって、それは「携帯での音楽ダウンロードに於いて着うたを上回ることができるか」という点であるが、正直言ってこれは少々疑問視せざるを得ない。
着うたの利点は、携帯端末のみで完結する点にある。ダウンロード/データ管理端末としてのPCを経由せず、直接携帯にダウンロード可能という特性は、PC保有率の低いヘヴィユーザー層-----中学〜高校生-----に対するアピールとして絶大な効果を持つ。いずれはこの層にも個人のPCが浸透するだろうが、それには尚数年を待たねばなるまい。大学のように、授業に必須となれば少しは違ってくると思うのだが。
むしろiPod携帯のターゲット層は「新しもの好き」な20〜30代男性だろう。しかしこの層には既にiPodが浸透しており、今更携帯との一本化に魅力を感じる割合は少ないのではないだろうか。特に、携帯に見られる多機能化傾向とiPodのSimple is Best思想は相反するものであり、その矛盾は下手に扱うと「中途半端」として見向きもされなくなる可能性を孕む。
更にはバッテリー容量の問題も出てくるだろう。現行のiPodでさえバッテリーの保ちには厳しい評価が与えられている。それを、更に通信/通話機能にも割くのだから、どうしても動作時間の短縮化は避けられまい。しかも2つの機能を一本化するということは、バッテリーが切れれば両方が一度に使えなくなるということで、重要度は倍加している。
あるいは2007年頃実用化と見られる燃料電池によって、問題は解消するかも知れないが。

*1:正確にはこれはiPodだけの優位性ではない。大容量のHDDプレイヤー全体に言えることである