ARTIFACT ―人工事実― : ネットによっていきなり世界統一ランキングに放り込まれると努力するモチベーションを持ちにくくなる

「考えついたことが既に実践されているのを見てやる気消失」はこの際置いておくとして、ランキングの話を。
数字がはっきり見えるランキングでは母集団が大きくなると上位浮上は大変困難になる。わずか1ポイントの差が数百〜数万の順位差になりかねない。
まあ順位の問題だけなら気にしなければいいのでは、などと身も蓋もないことを言っておくとして、ネットゲームや将棋/囲碁/チェスなどのように直接対戦するような場合で考えてみる。


どんなゲームでも、高位のプレイヤーと初心者では全く相手にならないことは明白である。
伝統的なゲーム界では高位プレイヤーは様々なハンデを設けたり、あるいはレベルをちょっと上程度に合わせて指導する習慣があるから、対戦は励みになりこそすれ気力の喪失には繋がらない。また、段位制などで同レヴェル集団での対戦を基本とし、原則として地域単位など狭い範囲でのランキングの中で動くから、いきなり上位との差に目がくらむこともない。
対してネットゲームでは、レベルに応じて対戦を制限するようなシステムが存在しないことが多く、また指導が習慣づくほどプレイヤー層が形成されていないから、高レベル対初心者は只の虐殺になってしまう。
対戦前に順位が明確に示されるならば最初から挑まなければ良いだけの話だが、最近のゲームは同一空間内に多数のプレイヤーが混在するパターンが主流であり、このような場合高位プレイヤーとの同居を防ぐ方法は無いに等しい。


もしレベルに応じて強制的にサーバーが変更されるならばどうか。
高位プレイヤーは高位同士、下位プレイヤーは下位同士でしか対戦しない。
経験値傾斜は常に一定レベルに保たれ、レベルアップの喜びは(システムの許す限り)無限に続く。
青天井のパラメーターは相対化によって有効性を保ち、ゲームは破綻しない。
残念ながらこれだけでは、「母集団が多すぎて上位浮上が困難」という問題は解決しない。何故なら上位は少数でも、下位に行くに従ってその数は飛躍的に増加するから。従って下位サーバーは細分化して人口の集中を防ぐ必要がある。ヒエラルキーを登り詰める快感は得られねばならないから、サーバー遷移にはある程度の幅を持たせ、また時間的な猶予を設けることで「比較的簡単にトップに到達できる」「暫くトップを維持できる」という飴を与え、またサーバー遷移により次の空間の最下層に放り込まれることで努力目標を復活させる。
これでは最高位ユーザーの目標設定に問題が出るような気もするが、そこは敗北による順位の下落幅を上位ほど大きく取るという手法が有効かと思う。最上位クラスは負ければ即転落という緊張感の中での対戦を強いられる。


……というようなシステムもないわけではないらしいが、残念ながら多くはなさそうである。クリエイターはちゃんとユーザーを長時間楽しませることを考えているのだろうか。