「Linuxはオフィスで使えるか」――産総研,実験1年目の課題と期待

24部署中14部署は移行不能、8部署は移行に作業が必要---この結果をどう見るべきか。「たった2部署しか移行できない」のか「10部署が移行可能」なのか。
プリンターの53%がLinuxで利用可能というのは思いのほか高い割合である。
最終的にはすんなり移行可能と言えるのは2割に過ぎないが、これは8割が移行不可能ということではない。


移行に際し、Windowsの環境との完全互換を望むのは現実的ではないだろう。例えばOpenOffice.orgは能力的に見てMS Officeに匹敵し、またMS Officeのファイルをほぼそのまま読み込むことが可能だが、レンダリング結果が完全に一致するわけではないし、マクロもそのまま流用することはできない。それは「違うソフト」なのだから当然のことだ。それでも、個人的に使用した経験から言えば、MS Office同士のヴァージョン違いと同程度かそれ以上の互換性は確保されているように感じた。
その「些細な違い」を許容できないならば、MS製品からの乗り換えなど論外だ。


今回の実験はオープンソース製品への移行に際しある程度の指針になっているとは思う。が、実際にこれを元に移行を検討する企業などほぼ皆無だろう。移行に際し発生する一時的な追加費用、取引先とのやり取りにおける互換性への不安、技術的サポート体制の不在。
こうした問題点を解消するには、まずは行政組織から積極的にオープンソース環境へ移行し、そのノウハウを蓄積・公開すると共に、他企業の脱MS依存への動機を作らねばなるまい。そうした行動の第一歩として、今回の実験は充分な成果をあげたのではないかと思う。