星を継ぐもの

読み始めて、驚くほど内容を忘れていることに気付く。そう言えば前に読んだのは中学の時、もう十数年前か。
改めて感じるのは訳の文体、例えば太陽の輝きの中で眩く白い峨々とした尾根が聳えていた。スコット卿を除いては上司を認めず、部下を擁することを潔しとしなかった。ナヴコムが一枚加わること自体筋が通らないのに、ましてやそのナヴコムが主管の衝に当たるに至っては言語道断であるその職掌の然らしめるところで人類の行くところ常に出現せざるなき光景としてなど、なんとも味のある表現が目立つ。こうした言い回しは古風ではあるが、それは却ってハードSFの厳格さを際立たせる良い味付けとなっている。無論表現と内容は別物ではあるが、読み手を退屈させない表現力はまた訳者にも求められるものであろう。