オースン・スコット・カード「ゼノサイド」(上巻:ISBN:4150110727:ISBN:4150110735)。今作は完全に前作からの続き。シリーズ通しての主人公たるエンダーの影は薄いが、代わりに前作の傍役たち大活躍でこれはこれで。
これまでの話はいずれも人間たちについて描写しながら異質な知性体について理解していく話だったが、今回はその大半を意見のすれ違いや軋轢、そして(厄介な)信仰問題に費やしている。
登場人物らはいずれも目前に迫った問題の解決について重要な役割を担っているのだが、それぞれの感情に従って互いの協力を頑なに拒む。そして我等がエンダーの役割は、鮮やかな手腕で敵を殲滅することでも死者を代弁し相互理解を進めることでもなく、ひたすらに諍いを調停するという地味な役回り。
ところでカードは本当に物理科学方面に弱いのだということをこれで確信した。いくらなんでもそれはないだろ。単なる「何でもあり」じゃないか。