35mm f0.95で小田原観光を

これまでも度々「汎用レンズ」を追及してきた。1本でポートレートからクローズアップ、テーブルフォトに風景まで、日常的なあらゆる用途を1本でこなせるレンズはあるか。
なるべく焦点距離の幅が広く、なるべく最小F値が小さく、なるべく最大撮影倍率が高く、それでいてなるべく軽く……もちろんそんな万能レンズはどこにもないので、何らかの性能に妥協することで他を可能な限り高いレベルでバランスさせることになる。
今回は「焦点距離の幅」と「オートフォーカス」を捨てることで、それ以外を満遍なく押さえたMF単焦点レンズを使ってみたい。

ボケるレンズを求めて

「35mmフルサイズはボケる」とはよく言われる(実際には「同じレンズならどんなフォーマットでもボケは同じ」なのではあるが、計算上「同じF値で同じ画角の」レンズを使うならば、APS-Cに対して1.5倍、マイクロフォーサーズに対して2倍のボケ量ということにはなる)。
ボケることは必ずしも利点とは限らず、たとえばボケすぎて絞らざるを得ないことでシャッタースピードの不利を被るような場合だってあるわけだが、しかし一方で「ボケの強さによる立体感」、被写体の背景からの浮き立ちはやはり魅力的な要素ではある。
もちろんマイクロフォーサーズでも、撮り方によってはしっかりとボケを得ることは可能だ。とはいえ「同じ画角、同じF値であればボケ量は半分」であることの制約は否めない。
半面、マイクロフォーサーズの利点である「同じ画角、同じF値ならレンズを小さくできる」ことを生かせば、安価軽量な大口径レンズによってボケ量の不利を補うことも不可能ではないはずだ、ということになる。
そして実際、マイクロフォーサーズには多種多様な大口径レンズが揃っている。

7Artisans(七工匠)の35mm f0.95は、F値が1を切る非常に明るい大口径でありながら、重量400gを切るコンパクトなレンズである。35mm(すなわちマイクロフォーサーズでは換算70mm)という「標準よりは若干望遠」域であることも、ボケ量にはプラスに働く。
風景などを撮るには若干狭くなるものの、望遠レンズほど致命的に画角が不足するわけではなく、逆に周囲が切り落とされる分だけ被写体に集中できる利点もある。最短撮影距離34cmでは画面一杯で10cmほどの範囲とまずまずのクローズアップが可能で、だいたいの状況には対応できそうだ。
今回は、これ一本での観光を試みたい。

ファーストレビュー

外箱は一辺が10cmの白い立方体で、上端から3cmの位置に2mm幅のスリットがあり、内箱の赤色が覗く。箱は1mm厚の厚紙にマットなシールを貼り合わせた構造で、被せ式の蓋は内径の内箱にぴったり合わせてあり、その精度へのこだわりはレンズの品質にも通底するものを感じさせる。

レンズ本体は金属鏡筒で、すべての文字は刻印されている。大径ガラスによる重み(とはいえ380gほどなので言うほど重いわけでもないのだが)も相俟ってしっかりした密度感があり、とても3万を切る安レンズには感じられない。
被せ式のレンズキャップもアルミ製。レンズ先端より僅かに大きな径の内側に布貼りをして隙間を調整してあり、適度な摩擦感でしっかり止まる。こちらも決してチープな作りではないのだが、縁5mmの内側が一段凹ませてあり「7Artisans 七工匠」とプリントしてあるだけなので些か安っぽさは否めない。
全長は60mm程度とコンパクトで、胴回りはマウント外周より僅かに太い程度。同程度の重さのOMDSの12-40mm F2.8 PROと比べると径は二回りほど細い(35mm F0.95はフィルタ径52mm、12-40mm F2.8は62mm)。
ローレットは指かかり良く、滑らかに回転する。いずれもクリック感のない無段階で、絞りについては意図せず回ってしまわない程度のクリックが欲しかった気もする。

PEN Fに付けるとこんな感じ。
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重量は合計で800g強、ボディとレンズの重さが釣り合っておりバランス感はとても良い。
電子接点がないのでピント補助は機能しないが、ボケが強い分だけピント位置は把握しやすい(それでもMF なので若干のピンボケは生じ得るが)。

小田原

都内主要ターミナルから東海道本線で1時間半ほどと日帰りアクセスしやすい小田原は関東有数の城を有する(とはいえ一度は廃城となり現存のものは再建だが)手軽な観光地である。
新幹線も停車する駅前はなかなかの賑わい。土産物などを販売する「小田原新城下町」も雰囲気ある外観だ。
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東口を線路沿いに進むと、ほどなく小田原城が見えてくる。
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桜も流石に古樹が多く、苔生して素敵な風合い。
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……が、今回の第一目的は城ではない。ひとまず通り過ぎて報徳二宮神社(二宮尊徳を奉じる神社)の側へ。
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道の向かいにある二宮尊徳博物館……の脇を入ったところにある国登録有形文化財、旧黒田長成邸「清閑亭」が今回の目的地である。
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小田原は明治時代に保養地として人気を博し、多くの華族やら 実業家やらがこの地に別荘を築いたそうで、清閑亭もその一つである。
3/31を以て一般公開を終了し、今後は料亭となる予定だそうなので、その前に駆け込みで撮影に訪れた次第。

小規模ながら素敵な庭を持つ日本家屋で、イベントへの貸し出しなども行なっており、また喫茶も行なっている。
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喫茶で地元産の蜜柑「湘南ゴールド」のジュースを頂いたが、蜜柑のイメージに反してオレンジ色ではなく林檎ジュースぐらいの白色だった。酸味と少しの苦味が爽やか。
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清閑亭を辞し、城も少し見物。
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なにやら武者姿で行列が。
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本丸広場にて、みかん氷を食す。
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城はそんなに期待していなかったのだが、あちこちに立派な松や桜があって、撮影が楽しい。

これはイヌマキの巨木。樹皮が落ち、捻れた肌が剥き出しになっている。ちょうど桜の枝がかかって絵画のよう。
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堀にも多くの桜が枝を垂れ、水面に美しく映える。これを撮るだけでも来た甲斐があろうというもの。
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城の向かいには真新しい観光センター。ここで軽く食事。
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ここからしばらく街を歩く。大通り沿いには蒲鉾屋を中心に古い店舗が散見され、見ているだけでも楽しい。
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使用感

というわけで35mm F0.95のみで観光写真を撮ってみた。
中望遠としては然程画角が狭くなく標準画角寄りなので、「全体が収まらず撮影を断念する」ようなことはほぼ生じなかった。もう少し望遠があればと思うことはないでもなかったが、料理写真などにも過不足なく、非常に使い勝手が良い。
F値0.95の強いボケはマイクロフォーサーズでも十分な効果を発揮し、わずかなボケ量の差が立体感を作り出してくれる。なるほどボケのために35mmフルサイズが欲しくなるわけだ……
一方でマニュアルフォーカスのため動きものには対応できないし、色収差が強いのかボケの縁がくっきり色付く傾向があるなど若干癖のあるレンズでもあり、決して万全というわけではないものの、「とりあえず安価に明るいレンズを手にすることができる」という利点は大きい。
F1.2 PROなどに手を出す余裕がない人には是非おすすめしたい。

防災備品を揃える

これまでの人生で、災害によって避難を強いられたことは(水害などでの予備的なものも含め)一度もなかったが、いつ来るとも知れぬのが災害というものではある。
以前から備えが必要という認識はあり、保存食などを試したこともあったが、一揃い整えるとなると結構な出費となるし、またアウトドア系の用品などに詳しくないため「どのようなものを買っておくべきか」がよくわからないということもあって放置気味であった。
しかし、先日の地震もあって改めて防災用具をという意識になったところで、勢いを付けて買ってしまうことにした。

まずは、買い揃えるべきものをざっくりリストアップしてみる。
これには首相官邸の防災情報や、東京都の防災冊子などを参考にしている。

備蓄

主に自宅内で、ライフライン復旧まで待機する前提でのストック。持ち出しは(安全に回収可能でない限り)想定しない。
ストックは多いに越したことはないが、あまり買い込むと置き場にも困るし、ローリングストック(古いものから順次消費しつつ新しいものを買い足す)にしても消費し切れないので、とりあえず3日程度を目安にすれば良いかと思う。それ以上はまあ、政府/自治体がなんとかしてくれるはずだ。

飲料水

1人1日3リットルが目安だそうなので、×人数分×3日分。

食品

カップ麺やレトルト食品など日持ちの良い日常食などを、最低3食×3日×人数分。これは日常の買い置きも兼ね、随時消費しつつ入れ替えてゆくのが望ましい。

生活消耗品

トイレットペーパー、ティッシュペーパー、カセットコンロ用ガスなど。もっとも、これは常時2週間分程度がストックされているのではないかと思われる。
唯一ストック分量がわからないのがカセットガスだが、岩谷の防災情報に拠れば(気温次第だが)だいたい2人分あたり、1日に1本程度の消費と考えれば良さそうだ。

持ち出し用品

避難時の持ち出し品は、家族で1セットあれば良いものと個々に1セットづつ持つべきものに区分できる。

各自1つ用意するもの

靴底のしっかりした、足に合うもの。普段から履き慣らしたものが望ましいが、非常用として別途用意するとなるとどうしても新品かそれに近くなってしまう。「寝る時はいつも枕元に普段履きの靴を置く」習慣を作るか、非常用の靴を別に慣らしておくか。
瓦礫を歩くことも想定すると鉄板入りの「安全靴」もしくは「踏み抜き防止」インソールがあると安心感が高まる。

寝袋

避難所で布団が得られるとは限らないので、最低限の寝具として寝袋を用意しておきたい。
寝袋にはすっぽり全身を包み顔だけ出す「マミー」タイプと長方形の袋状になっている「エンベローブ」タイプがあるが、長期使用を想定すると拘束性の弱いエンベローブの方が寝やすいのではと考える。
保温性の高いものほど厚みがあるため嵩張り、また重くなる。屋外ではなく避難所内で使用するため、防寒性よりは持ち運びの負担軽減を重視したい。長期使用による汚れを鑑みると洗濯可能なものが望ましい。

比較的薄いものを買ったつもりではあったが、φ25xL45cm、重量1.9kgと決してコンパクトとは言えない。

防災用途に特化した寝袋を見付けた。「普段はクッションに」「枕、アイマスクも装備」「貴重品ポケット内蔵」など使い勝手は良さそう。

マット

床上に直で寝袋を敷くと背中が硬く、また底冷えするため断熱とクッションを兼ねたマットは必須。
マットにはいくつか種類があり、それぞれに特徴がある。

  • 銀マット
    • 発泡性のクッション材にアルミシートを貼り付けたもの。コンパクトで断熱性を有するがクッション性は弱い。
  • エアーマット
    • 空気を入れて膨らませるマット。空気を抜けばコンパクトになり、クッション性は高いが断熱性はやや弱い。息で膨らませるのは大変なので足踏みポンプ内蔵が良さそう。
  • インフレータブルマット
    • 内部に発泡ウレタンスポンジが仕込まれており、栓を空けると自動的に空気を吸い込んで膨張する、エアーマットの一種。スポンジなしのエアーマットに比べ重量と圧縮率は低くなる代わりに、膨らませるのが楽で、クッション性・断熱性は高め。

特徴を鑑みてインフレータブルマットを選択した。面積が大きいほど寝やすいと思われるが重く嵩張ることにもなる。厚さは3cmでは不足、5cmあれば足りるというが商品の一覧に5cm程度のものが見当たらず、ひとまず8cmを試したが、思ったよりも嵩張り重い。収納状態でφ20xL65cm、重量2.4kg。エアータイプも視野に入れるべきか。

ヘルメット

落下物から頭部を守るために。家から被って出るのでコンパクトである必要はないものの、畳めるタイプの方が室内配備でも邪魔になりにくいとは思う。

避難用バッグ

手を空けておけるよう、背負い式のものを。
これには以下のような装備一揃いを入れておく(寝袋やマットなどは嵩張るため、これとは別に持つことになる。可能であればリュックの上か下に括り付けたいが)。

椅子

直に床へ座る生活は長く続けるといささか辛くなろうかと思われるため、折り畳み式の椅子を用意したい。背もたれのあるものを用意できれば最良だが、大きいほど持ち出しにくくもなるので、コンパクトさを優先して。
バッグと折り畳み椅子がセットになっているものがあるので、それらを用意することを考えている。

アルミブランケット

防寒の不足に備えて。薄く軽量で邪魔にならず、体温の熱を外に逃がさないため冬場の体温維持に1枚あると安心できそう。

眼鏡

我が家は全員近視なので眼鏡は必須。新調した時に、以前のものを予備用に回してバッグに入れておきたい。

簡易トイレ

断水時も速やかに仮設トイレなどは用意されるとは思うが、それまでの急場凌ぎとして1回分程度は用意しておいた方が良いのではなかろうか。

飲料水

避難当初まだ配給も儘ならない時期を乗り切るため、備蓄とは別に500mlのペットボトル1本でいいので各自持っておく。

非常食

水も火もなしに食べられるものを、最低でも1食分(可能なら3食ほど)。
しかし水も火も要らない保存食はだいたいレトルトパックや缶詰となるため少々重く、各自の持つ分に1日3食分以上を配備するのはあまり現実的でないように思われる。
たとえば白米・レトルト・缶詰・加熱用発熱剤をセットにした「レスキューフーズ」は1食分600g、1箱あたり12.5*16.5*6.5cmと結構な重さ・大きさである。これで3食を揃えるとバッグ容量の大半が埋まってしまう。

重量を抑えるなら、一部をカップ麺やアルファ化米などに置き換えるのも良いだろう。

カロリー補充用おやつ

カロリーさえあれば当座は凌げる。また心理的にも甘味が用意できると心強い。
チョコレートは暑さで溶けにくいものを。

井村屋の「えいようかん」とイザメシのチョコバーを試食したが、どちらも日常のおやつにしたいぐらい美味しかった。これなら非常時にも安らげるだろう。

箸・スプーン

弁当用のプラ製カトラリーで十分なので、1セットづつ用意しておく。

モバイルバッテリー

当座のスマホ充電用と、何らかの形で電源が供給されるならそこで充電・蓄電できるように、モバイルバッテリーは各自用意しておきたい。

家族で1つ用意しておくもの

ラジオ

大規模災害時は通信インフラも遮断される可能性が高い。通話回線がパンクしていても使えるTwitterやLINEは心強いが、それも電波が通じればこそ。
最後の情報源はラジオ放送に頼るしかない。もちろんラジオアプリは(放送電波を受信しているわけではなくインターネット経由なので)使えない。受信機を備えたラジオは防災用品に必ず入れておきたい。
比較的電池の消費は少ないと思うが、できれば手回し発電/ソーラーパネルを備えた防災ラジオだと安心感がある。

懐中電灯・ランタン

停電状況下を歩かねばならぬ可能性も低くはないので懐中電灯は必ず用意したい。
また、前方のみを照らす懐中電灯は避難生活空間を照らすにはいまいち向かない。水を入れたペットボトル(少しの濁りがあれば尚更効果的)で散乱させる方法もあるが、最初から周囲を照らせるランタン機能があるものなら尚良い。
これもソーラーパネルなどを備えていると安心できる。

誰かが外に出ているあいだ待っている人が灯りを使えないというのも不便なので、最低2つは用意しておこう。

水タンク

水は生命維持に不可欠だが、断水していると給水所まで汲みに行かねばならないので水容器は必須となる。
一人あたり3リットルが目安とのことであるから家族人数を鑑みれば10〜20リットルぐらいが必要だが、それはそのまま手にかかる重量でもあるので、あまり大きいものだと却って困難ではなかろうか。
また、水を使うたびに容器を傾けるのは面倒なのでコック付きのものにしたいが、必然的に水の取り出し位置が底に近くなるので床に直置きでは水が出せなくなる。何か台になるものも用意しておくか、台座がセットになったタンクを購入するといいだろう。
ハードタンクの方が安定感は高いが、非使用時に嵩張るのが欠点。できれば中が見える透明なものにしておくと水の残量が把握しやすくなる。また広口なら使用後のメンテ性も高いし、なんなら持ち出し品の幾許かを中に入れておくこともできる。

テーブル

食事にせよ水タンクにせよ、床に直置きでは色々と不都合なのでテーブルのひとつぐらいは用意したい。なるべく小型軽量、かつ水タンクを支える程度の耐荷重が要る。

カセットコンロ&ガスボンベ

いかに非常食と雖も、加熱調理なしで食べ続けるのはしんどいものがあろうし、水で作れないことはないアルファ化米やカップ麺でも可能ならば湯を使いたい。
アウトドア用の、携帯型ガスコンロとボンベ数本ぐらいは用意しておきたいところ。

クッカー

ガスコンロだけあっても調理はできないので、アウトドア用の軽量コンパクトな調理器具を買っておきたい。
底面に熱伝導性を高めるヒートエクスチェンジャーのあるものだとガスの熱を効率良く使えて湯沸かしも早い。

追記:ヒートエクスチェンジャーを含め、熱伝導性を高めるための「炎を囲い込む構造」を持つ鍋は、空気の通りを悪くしてしまうため不完全燃焼により一酸化炭素が発生しやすいとのこと。「炎を絞ってエクスチェンジャーには直接炎を当てない(弱火で加熱できるということではある)、閉所で調理しない(避難所では室内での火気使用はそもそも禁止かと思うが)など気を付けねばならないようだ。
ガス消費を節約できそうなので被災時にも役立つとは思うが、ちょっと扱いに気を使うので面倒なら普通のクッカーにした方がいいかも知れない。

カップ

飲み水などのためにカップも必要だろう。一人にひとつまでは要らないとしても、1〜2個ぐらいは欲しい。

食器

基本的にはレトルトも袋から直接食べたり、袋麺などは鍋から直接啜ることになろうかと思うが、皿がある方が食べやすいのは確かだ。荷物が増えてでも用意するなら、破損に強いメラミン樹脂皿が良いのではないかと思う。

洗い物に使う水も勿体ないのでラップをかけるなどして使ったという話も。

ソーラー充電器

可能であれば日光でスマホを充電可能なソーラーパネル充電器を用意したい。タブレット用だと5Aクラスの出力が必要になって条件が跳ね上がってしまうが、スマホに限れば2.1A程度で行けるのではないか。

ソウルオブエデン初心者のための基本戦術解説

ソウルオブエデン(以下「ソルエデ」)は、いわゆる「クラロワ系」と呼ばれるタイプのリアルタイム対戦ゲームだ。

時間経過と共に増加するリソースを消費して手元のユニットカードを場に出すと、自動的に相手の「守護者」めがけて進軍、範囲内に敵ユニットがいればそれを攻撃する。先に相手の守護者を倒した方が勝ちとなる。
プレイヤーが操作できるのは基本的に「どのタイミングで」「どの種類を」「どの場所に」出すかという点のみ、あとは自動で戦闘が行われるのを見守るだけ(とは言いながら、数秒ごとに何らかの操作をすることにはなるのでそれなりに忙しない)。

この手のゲームでは、嚆矢となった「クラッシュ・ロワイヤル」に倣ってファンタジーをモチーフとすることが多いが、ソルエデはSF風とファンタジー風の両方が合わさったようなイメージになっている。機械ユニットを多く持つ人間種族「共和国」と虫や軟体生物のようなイメージの生命体「異種」、魔法を使う人間種族「帝国」に獣人の集団「獣族」、4種族はそれぞれにカード種類の半数ほどを共有している。ミニチュアゲーム「ウォーハンマー」をご存知ならば「40KとAoSの混ざったような」、PC系RTSで言えば「スタークラフトウォークラフトを合わせたような」と言えばイメージしやすいだろうか。
また種族ごとにはっきりした戦術の違いがあり、それらを使い分けながら対戦してゆくことになる。

基本的なルールは、クラロワをご存知の方ならば「戦場が分断されずタワー1本」「デッキは30枚で循環なし」「ユニット配置時、画面をなぞることで分散して配置できる」といった違いを押さえておけば問題なくプレイできるかと思うが、この手のゲームに不慣れだと勝ち方がわかりにくいかも知れないので、少し解説しよう。

隊列の基本形

ソウルオブエデン(に限らず、この手のゲーム全般)ではユニットは自動で行動するため、倒したい敵を狙ったり仲間に庇わせたりといった細かいコントロールはできない。
その代わり、出すときの位置関係を工夫することによって有利な状況を作り出すのが基本テクニックとなる。

各ユニットは自動的に周囲を認識し、「最も近い敵」を狙う。この性質を利用して、HPの高い近接ユニットを先行させ盾代わりとし、後列から射撃ユニットが援護射撃を行なうように陣形を組む。
こうすると敵のダメージは硬い盾役に集中するので、攻撃役は盾が破壊されるまでの間安全に攻撃を続行でき、またそれによって盾役を攻撃する敵を効率良く排除できるため盾の生存性も高まる。
この「前盾/後射」隊列はすべての基本となるので、しっかり押さえておこう。
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ユニットの右上には赤い剣/青い盾/黄色い剣・盾のマークがあるが、これは「ダメージが高いがHPが低い」攻撃タイプ/「HPが高いがダメージが低い」防御タイプ/「どちらもそこそこ」バランスタイプを表している。基本的には、盾マークのあるユニットを前に、剣マークのユニットを後ろに出してゆくといいだろう(ただしユニットの能力によっては使用感がマークと異なる場合もある)。

相性

ユニットは、その性質によって得意な相手・苦手な相手がある。
たとえば一撃の火力が高いユニットは高HPの的も素早く倒すことが可能だが、小型ユニットの群れを相手にすると手数の少なさが仇となって効率が著しく落ちる。
逆に小型ユニット群は一撃のダメージこそ低くとも数の多さを活かした手数で瞬く間に対象のHPを削り取るが、範囲攻撃を受けると一斉に消し飛んでしまう。
範囲攻撃は群れ相手には強いが、その分だけ単体への火力は低めであることが多く、高HPの盾ユニットで受け止められると削りきれない。
それぞれの特性を理解して、有利な組み合わせで当たれるように研究しよう。

受け

攻める時はただ手札のユニットで陣形を作ればいいとして、問題は「攻められた時」だ。ここで対処を誤って、あるいはそもそも対処できずに、そのまま負けてしまう人が多いように見受けられるので、相手の攻撃を「受ける」方法を解説する。

実は、受けに於いてもやることは攻めの場合とそう大きく変わらない。基本は「盾で攻撃を受け止め、火力で削る」だ。相手のユニットが攻撃を開始する前に、その視界内に盾ユニットを配置することによって相手の攻撃を引き付け、その後に相手ユニットを確実に射程内に捉える位置へこちらの攻撃ユニットを出すことで、安全に効率よく敵を殲滅する。
ただ、攻撃の時とは異なり敵が近づくまでの間に手筈を整えなければならないので、最良の組み合わせを選んでコストを貯める余裕はない。相手の出方に合わせて、今ある手持ちで凌ぐ方法を考える必要がある。

まずは手札を確認しよう。ユニットカードは何枚ある?ダメージスペルはある?

→盾ユニットと攻撃ユニットがある

まずは盾を敵軍の前に出してターゲットを取り、攻撃を受け止めよう。そして敵ユニットに近い位置に火力ユニットを出してダメージを集中させれば、相手の侵攻を止めることができる。
このとき、大事なのは「焦ってコストが貯まらないうちに出さない」こと。1コスト貯まるのには3秒ぐらいかかるので、先に盾を出してしまうと援護ユニットが出るまでに3〜10秒ぐらい、盾が撃たれ続けることになる。だいたい1〜2秒ごとに1発攻撃されることが多いので2〜5発ぐらい無防備に殴られる計算だ。その分だけ盾が盾として機能する時間が短くなってしまう。盾を出したらすぐに支援部隊を出せるよう、コストは貯めてから動こう。

問題は盾と攻撃ユニットとが揃っていない場合だ。その場合はちょっと受けが難しくなる。

→盾ユニットはあるが攻撃ユニットがない

この場合、盾ユニットは自分の守護者直前に出そう。すると相手が足を止めて攻撃を始める位置が守護者の攻撃範囲に入るので、守護者を援護射撃代わりに使うことができる。
またダメージスペルがある場合、盾を出して相手を足止めしたところにスペルをぶつけると確実に仕留めることができる(スペルは位置指定してから実際にダメージが発生するまでにタイムラグがあるため、足止めせずに使用すると思ったようにダメージを与えられず範囲から抜けられてしまうことがある)。

→攻撃ユニットはあるが盾ユニットがない

盾はなくてもユニットが2枚以上あるなら、攻撃ユニットのひとつを盾代わりに使おう。しかし盾ユニットほど長くは保たないので苦しい戦いにはなる。
もし攻撃ユニットが1枚しかない場合、仕方ないので守護者を盾代わりに使おう。つまり相手が守護者に攻撃を始めるまで待ってから攻撃ユニットを出すことで、ユニットがダメージを受けずに一方的な攻撃ができる。
その代わり守護者がダメージを受けてしまうので、相手が高火力だとそのまま負けてしまうこともある諸刃の剣。なるべく使わないで済むに越したことはない戦術だ。

→攻撃ユニットも盾ユニットもない

この場合もう仕方ないので、安いカードを無駄に使ってでも新しいカードを引くしかない。なるべくそうならないように、デッキを組む時はユニット以外のカード枚数を少なめにしよう。

プレイ中の戦術ではなくデッキ構築時点での話になるが、「使う場面がなく手札で腐った」「コストが高くて出すに出せなかった」などで使えない場面のあったカードは1枚減らし、「この場面でこのカードがあれば防げたのに」と思う場面があったカードを1枚増やす、という感じで調整するといいだろう。

→大型範囲ユニットへの対処

不慣れだと対処の難しいユニットが、範囲攻撃を持つ大型近接ユニットだ。たとえば「ソウルリーパー(5)」「マンモス兵(6)」「顔なき聖者(7)」「ヤコブ(8)」など。
通常ならば大型ユニットは手数差を利用して小型ユニットで取り囲むのだが、範囲攻撃ユニット相手にそれをやると一網打尽にされかねない。
しかし、こういう相手にも「前盾/後射」の基本セオリーは有効。丈夫な盾で敵を足止めしてダメージを1体に止めつつ、範囲攻撃の射程外から射撃を集中させて仕留めよう。

→回復持ちへの対処

「ソウルリーパー(5)」「ヒルキング(6)」「ゴリアス(6)」など、攻撃や撃破のたびに回復するユニットは予想以上に倒すのが難しい。
「撃破回復」の場合は、撃破されなければ回復しないので前盾/後射で対応できるが、攻撃回復型のヒル系などは逆に火力が不足すると倒せないので盾よりも火力型で直接殴った方が有効性が高い。

→前盾/後射への対処

非常に有効性の高い前盾/後射隊列だが、当然ながら敵も使ってくる。そうするとこちらの火力は盾に吸われ、後ろに控える主力からの攻撃でみるみる削られてしまう。
そうさせないためには相手の隊列を崩す必要がある。
一番手堅いのは「自陣側に引き込む」やり方。ギリギリまで敵を引きつけておいて、盾を無視して無防備な後列に火力ユニットをぶつけ、あるいはプステルやボムカツなどで処理する。
指定範囲に直接ダメージを与えるスペルなどがあれば、それを後衛に使うのも良い。

デッキ構築

デッキのバランス

理想的なバランスはプレイスタイルによっても異なってくるが、目安としては盾ユニットと火力ユニットのコスト合計が「盾2:火力3」ぐらいのバランスを目指し、またスペルや建物、回復ユニットなど直接的な火力を持たないカードは合計で10枚以下にしておいた方が良いだろう。
方向性が定まるまでは、1戦ごとに「手元にあったが使い所がなかった」カードを減らし、「この場面で欲しかった」カードを増やすなどして調整してゆこう。

種族ごとの特性

種族はそれぞれに特徴があり、それを活かした戦い方ができるように組むと大きな力を発揮する。
ただし、やり過ぎには注意:コンセプトを尖らせすぎると、上手く行った時は強いが対応できない場面も増えてしまう。主力以外は程々にして、幅広い対応力を目指した方が結局は勝率が高まる。

共和国(守護者スキル(3):降下地点にダメージ+マリン隊4体出現)

初撃のみ大ダメージあるいは特殊な打撃を与える「ファーストアタック」に特徴がある(スナイパー、暗殺者、ステルスブラスター、ステルスストーマー)。また、発動済みのファーストアタックを再発させることのできる「コマンダー」による不意討ちも強い。
盾ユニットや射撃ユニットが揃っているため序盤から隊列を組みやすい点は初心者向け。また指定位置に範囲ダメージを発生させるスペルが充実しているため、後方からの厄介な支援を潰しやすいのもありがたい。

異種(守護者スキル(2):範囲7の敵ユニットスタン)

盾となるユニットが少ないが、「ダメージを与えるたびに回復する」ユニット(ヒルヒルキング、バーンズ姉妹)などがスペック以上の硬さを発揮する。また敵ユニットを乗っ取る「コントロール」、倒した敵をマゴットに変化させる「マゴットクイーン」、敵も味方もプステルに変えて爆発させる除去スペル「プステル変化」などトリッキーなカードが多い。
召喚すると自軍守護者にダメージを与える代わりに低コストで高性能な「ソウル」系、守護者HPが30%以下だと強いがそうでない時はHPが半減する「アボミネル」系など、強いが使い所の難しいカードも多い。

獣族(守護者スキル(1):範囲7の味方を毎秒回復)

ユニットを生産する建物を多く持つ。またHPが半減すると攻撃速度が上昇する「狂暴」ユニット(ヒヅメ、ラービ、ヘコキツネ、ウルファイター、キョウタチ、ドンクサイ)が多く、それを強化するスペル「捧血の儀」と組み合わせると爆発的な火力を叩き出す。
反面、全種族で唯一、敵ユニットを除去する手段を持たないため大型ユニット対策が悩ましい。

帝国(守護者スキル(2):範囲10の味方を火力強化)

味方ユニットが登場するたび強化される「センサー」を持つユニットが非常に多い(テミス、ホーリーガード、ダークシールダー、荒野の魔女、災厄の使者、パンチタンク、フォレストアーチャー、シールダー、破城槌、アックスウォリアー、ヒルダ)。
また補助系スペルが充実している。反面、指定位置へダメージを与える術がないため敵の後方支援対策には苦労する。

平均コストの目安

ソルエデは他のクラロワ系と異なりデッキが循環しないので、30枚を使い切ったらもう何もできない。そのため低コストカードを中心にした高回転編成などは避けた方が無難と言える。
ゲーム開始時のコストは7、以降「10秒あたり3」の割合(後半2分は倍速)で回復するので、1戦中に利用可能なコストの合計は最大で115(初期7+前半2分=36+後半2分=72)。これをデッキ枚数の30で割ると3.83...となるので、これを下回る平均コストでデッキを構築すると手札が尽きる恐れがある。
もっとも、必ずしもコストが貯まり次第消費し続けるとは限らず、相手の出方を待って10貯まっていても動かずにいる場合などは、使えるコスト上限がもっと下がることにはなる。

まほり

意味の掴めぬタイトル。黒バックに禍々しく紅い円が乱舞する装画。いかにもホラーめいた佇まいだが、本書はホラーというわけではない。では何なのか、というと……

作者の高田大介はファンタジー作品「図書館の魔女」でデビューを飾った。しかし本書はファンタジーでもない。
高田の本職は対照言語学者であるが、本書は言語学ものというわけでもない(あながち無関係とも言えないが)。
では何か、というなら「民俗学ミステリ」というのが最も納まりの良い説明だろうか。

読み始めると、まず文章の巧さに舌を巻く。潤沢な語彙に支えられた幅広い表現力。普段読み慣れぬ書かれ方ではありながら、しかし意味を捉えかねるようなことはなくスッと頭に入ってくる。
表現だけではなく構成も巧みで、章ごとに興味を引き付ける謎を示し、さりげなく伏線を織り交ぜながら、複数のまるで無関係な道筋が一点へと収束してゆく。

主人公は社会学を志す大学生で、主に数理的な解析を得意としている。ゼミの卒研で「都市伝説の伝播と変容」という広範なテーマを掲げたグループの手伝いに引き込まれ、調査範囲の絞り込みを検討する流れから、気になる「実体験」を聞く。それは自身の郷里に程近い、群馬県は奥利根地方のとあるお堂での出来事で、それに興味を持った彼は夏休みを利用して地元へと戻り、お堂の由来を調べるべく図書館を起点に文献調査を開始するが……

寺社仏閣の来歴というものは真贋確かならざるものが多い。というか「確かな来歴を伝える」方が稀なぐらいではないか。時代の都合に合わせて様々に変貌し、それに応じて来歴が「整えられる」こともしばしば。
そもそも史料文献というのは、「書かれたという事実」はあっても「書かれたことが事実」ではない。まったくの嘘ではないとしても、都合良く書き換えられたり都合の悪いことは書かれなかったりする。それを様々な文献と突き合わせて傍証を拾い集めることで検証してゆくのだが、そのためには「関連する文書」を知悉しておかなければならない。その文書が書かれた時代、その文書に書かれた時代、その地方に何があったのか。地方史を記した膨大な文献史料は当然ながらテキストデータどころか活字でさえなく、検索できる範囲には自ずと限度がある。
一介の学生の手には余る専門分野を導くのは博覧強記の学者たち。一を尋ねれば十が返ってくる、立板に水の如く繰り出される膨大な情報はいずれも実在の史料で、それらが様々な角度から奥利根地方の過去を紡ぎ出してゆく様は心踊るのだが、同時にここを詳しく語ることはネタバレにもなるので紹介は控える。

この地方にどのような「隠された」歴史があり、それは主人公の境遇とどう繋がってゆくのか。中学生の目撃した少女とは。そして「まほり」とは何なのか。
あとは、自分の目で確かめられたい。

芦ケ久保の氷柱

埼玉県秩父地方には、山中に氷柱の並ぶ奇景がある。
三大氷柱と呼ばれるもののうち、天然のものは二瀬ダム下流荒川沿いの崖に連なる「三十槌の氷柱」のみ。
残る2箇所は水を撒いて凍らせた人工のものだそうだが、規模として最大のものは尾ノ内氷柱で、こちらは吊り橋上から氷柱を眺めることができる。
つまり芦ケ久保の氷柱は、天然のものでもなく最大規模のものでもない、ということになるわけだが、その代わり他2箇所にはない強みを持つ:「アクセスの良さ」だ。

三十槌の氷柱は、西武秩父駅から秩父鉄道に乗り換え22分、三峰口駅からバスで45分ほどの場所。
尾ノ内氷柱に至っては関越道花園ICから100分、あるいは西武秩父駅からバスを2本乗り継いで更に徒歩20分の距離。
だが、芦ケ久保の氷柱は西武芦ケ久保駅から徒歩で10分と、格段にアクセスが良い。池袋駅から片道1時間半、悠々と日帰りできる距離だ。

www.yokoze.org

夕方17時半からはライトアップが行なわれており、本日が最終日だったので行ってきた。

池袋から西武池袋線で飯能へ。
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西武秩父線に乗り換えて芦ケ久保で下りる。
山間の駅で、駅前には何もない。道に沿って少し歩くと道の駅的な建物が見え、ここの売店および食堂が、近隣で唯一の商業施設である……のだが、なんと夜間ライトアップイベントを実施しているというのに18時には食堂が閉店してしまう。ライトアップを観るなら予め腹拵えをしておくか、列車に乗る前にどこかで軽食を買っておくこと。
売店の方は、19時時点ではまだ開いていたが、おにぎりやサンドウィッチのような軽食はあまりない(既に買われたのかも知れないが)。最後に残ったコロッケバーガーと、磯部餅や「みそポテト(マッシュポテトの天ぷら串にみそタレをかけたもの)」で飢えを凌いだが、手を汚しやすくあまり食事向けではない……営業時間も含め、観光アピールするならもうちょっと改善されたい。

駅からの坂を下った先で受付が行なわれるが、会場はそこから坂ひとつ越えた先。道は舗装こそされていないが歩きやすく整備されてはおり、足元に不安はない(とはいえハイヒールは推奨しないが)。西武鉄道秩父方面線路を潜った先が氷柱の会場である。「暗くなるのを待たないで先へ進んでください」というアナウンス。

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山奥のローカル線というのは、それだけで絵になる雰囲気がある。

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入口付近に鳥居。正面からも撮ったが、このあたりで記念撮影する人が多く写り込んでしまうので割愛。

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刻一刻と色を変える照明が、立ち並ぶ氷柱を彩る。

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ハート型の撮影スポット。
この付近には三脚使用可能エリアも用意されている。

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足元を照らす灯りもなかなかに雰囲気が出る。

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帰りの便は30分に一本しかないので時間を忘れずに。

超音速・垂直離着陸戦闘機 F-104V/J

F-104Vは、実用戦闘機として初のマッハ2を達成した超音速戦闘機F-104を素体として開発された、超音速VTOL戦闘機である。

当時は東西冷戦下であり、東側と国境を接する国々では常に臨戦状態の緊張が続いていたため、兵器の開発は青天井の予算を投じて非常に早いペースで進められた。航空戦力に於いては新技術であるジェットエンジンとミサイルの発達に伴い、ドッグファイトのための機動力よりも敵機を振り切るマッハ2前後の超音速性能が求められ、F-100から始まる「センチュリー」シリーズと呼ばれる超音速機シリーズが誕生した。
当時はまだ大陸間弾道核ミサイルが実用化されていなかったため、主な脅威として想定されたのは核爆弾を搭載した高高度爆撃機であり、これを即座に迎撃するための要撃戦闘機には卓越した上昇性能が要求された。これに対しロッキードは、最小限の武装のみを備えた軽量の胴に極限まで空力抵抗を削ぎ落とす鋭利で小さな主翼を配した、一撃離脱の高速戦に特化した設計で応えた。
F-104として制式採用されたそれは、最大速度マッハ2.2(エンジン推力の限度ではなく耐熱性の限度であり、後の改良型ではマッハ2.4にも達する)と最大3万mを越える高度、そして高度1万6千m到達までわずか1分という凄まじい上昇能力を見せつけた。

そのような要求仕様を出したにも関わらず、仮想敵国と海を隔てる米国ではF-104の航続距離の短かさと搭載力の低さは不評で、ごく短期間の運用のみで退役となった。しかしその比類なき高速性能は東西緊張の最前線にあった国々では重宝され、特に西ドイツには総生産数の実に半数が配備された。
また専守防衛により国土付近での迎撃任務のみで航続距離を必要としない航空自衛隊に於いても、F-104は主力戦闘機として採用されている。

だが最大の配備先たる西ドイツも決してF-104の性能に満足していたというわけではない。要撃が主任務であるとはいえ、主力機として採用した以上は多用途に用いざるを得ず、結果として高高度・高速要撃を旨とするF-104の仕様に反する運用に就くことも多く、改良あるいは代替を求める声は少なくなかった。
とりわけ、高速性を最優先した小さく薄い主翼の代償としての低揚力による滑走距離の長さは、主任務たる要撃に於いても懸念事項となった。常に東側との戦争を想定していた西ドイツ空軍では、敵の攻撃により満足な滑走路を確保できない状況下での迎撃戦を想定して短距離離着陸性能が必要との論は根強く、F-104にロケットブースターを装備して専用発射台から斜め上に打ち上げるスクランブル装備などの実験も行なわれたが、実用には至らなかった。

そこでベルコウ社・ハインケル社・メッサーシュミット社は合弁事業体EWRを設立し、F-104をベースとしたVTOL機の開発に着手する。目標としたのはF-104の持つ高速度・高高度要撃性能を維持しつつ垂直あるいは短距離離着陸を可能とすることだった。独自設計ではなく既存機体をベースとしたのは開発期間短縮の目論見とともに、増大する防衛予算への批判を躱す目的があったと見られる。
基本プランは翼端に取り付けたジェットエンジンが垂直から水平へと角度を変えることによって離陸から飛行へと遷移するティルトエンジン式VTOLで、小型のエンジンを上下双発の形で組み合わせることにより前面投影面積を大きく増大させることなく、F-104に近い重量推力比を実現する目論見であった。
折しも同時期に英国でもVTOL機(ホーカー・シドレー ケストレル FGA.1)が開発されており、これは亜音速機であり西ドイツ空軍の求める要撃性能を満たすものではなかったため採用には至らなかったものの、VTOL向けとして開発されていたロールスロイスターボジェットエンジンについてはライセンスを得てメインエンジンとする計画となった。

EWR-VJと名付けられた試験機はF-104の胴体からエンジンを取り外し、主翼の先端にそれぞれ2基のロールスロイスRB.145ターボジェットンジンを配した。この小型のエンジンは1基あたりの推力こそ12.2kNとさほど高くないものの小型軽量であり、重量推力比ではF-104が搭載するJ79の倍にも達する。4基の小型エンジンは、J79単基とも遜色ない合計推力を生み出した。
F-104の刃のように薄かった主翼はエンジンポッドの回転軸を通すために厚みのあるものに作り変えられ、また回転軸を水平にするため下反角を付けた中翼配置から水平の高翼配置へと改められた。併せてディープストールを引き起こす原因となったT字尾翼も廃して低翼に配置し直している。
主翼前縁には翼端失速を防ぐドッグトゥースが設けられているが、レイアウト的に翼端からの気流剥離はエンジンポッドによっても抑止されるため、あまり意味がなかったようだ。

初号機は垂直離床からの水平飛行遷移でアフターバーナーなしに軽々と音速を突破し、十分に実用的な性能を示した。初号機は後に自動操縦装置の欠陥により失われたものの、二号機はアフターバーナー併用でF-104に迫るマッハ1.8を叩き出した。
三号機ではエンジンをより推力の高いロールスロイスRB.162へと換装しマッハ2を突破、上昇速度についてもF-104のそれへと迫ってみせた。

エンジンポッドが胴体から翼端に移動したことで重心モーメントが左右に分散し、空力による旋回能力自体はF-104よりも若干低下しているが、翼幅が短かいため分散化の影響は比較的抑えられており、代わりに左右の推力バランスを変動させることによる旋回補助が可能となったため、総合的には旋回性能の低下は見られない。チップタンクを失った代わりにエンジンを取り外した胴部後方へタンクを配置できるため、航続距離は却って延びた(ただし垂直離着陸に消費する分を考慮すると同程度ということにはなる)。

F-104がベースとなっているとはいえ推進系や制御系はまったくの新設計であり、F-104との部品共通性は3割程度に過ぎない。事実上の別機種であったが、予算承認上の都合で同機はあくまでF-104のヴァリエーションとされ、F-104Vの形式名が与えられた(これは米国に於けるF-86Dの事例が参考になったものと思われる)。
ロッキードの設計を流用しているため形式的に「ロッキードからのライセンス供与を受けた」体で西ドイツ内で国内製造されると共に、設計はロッキードへもクロスライセンスされ、独自に他国へF-104Vをライセンス供与することが認められた。

このため、F-104を導入している日本に対しても「改修」の体でF-104Vの導入が打診された。
地上基地から洋上へのスクランブル発進を主任務とする航空自衛隊では、特段VTOL能力を重視してはいないためF-104Vは性能試験機として少数を導入するに留まった。一方で海上自衛隊では以前から艦載機としてのVTOL取得に積極的な姿勢を見せており、F-104Vにも強い興味を示したものの、依然「空母」を持つことは専守防衛の原則に反するとして政治的に強い反発があったため戦闘機としての配備は断念し、代わりに機銃を下ろしてカメラを搭載した偵察型を艦上高速哨戒機として導入している。

超音速VTOL要撃機というコンセプトを高いレベルで実現したF-104Vではあったが、その後に核兵器の運用が爆撃から弾道ミサイルへと移行していったことによって防空要撃のドクトリンにも変化が生じ、マッハ2クラスの高速性能や搭載量の少ない軽量VTOL機の需要が減少したため、生産数は少数に止まった。



……という適当設定で作ってみたF-104改、「もしEWR-VJ101自衛隊に制式採用されたら」架空機である。機体としての設定はWikipediaとか読みながら適当にでっちあげたが、航空機の設計技術に詳しいわけでもないので不自然なところはご容赦願う。
新型機なのに新たな機種名にしなかったのは、F-104の通称名スターファイター」があまりに素敵すぎて、F-102デルタダガーとF-106デルタダートのように発展名を考えるのが難しかったから。

去年は架空戦闘車両を立て続けに製作し、架空設定でそれっぽく作る楽しさに目覚めたので、次は航空機をやってみようかと考えていたところ、たまたまWebでEWR-VJ101のことを知り、このキットも碌にない実験機を作ってみるのもいいかなと考えた。

計画

まずは改造プランを立てるために実機の三面図を探して、素体となる機種と改造先の図をカタログスペックに応じたサイズに調節してスケールを合わせ、重ねる。
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機種部分はほぼ同一なので流用はできそうだ。エンジンのない胴部はF-101よりもだいぶ細く絞り込まれており、垂直尾翼もカットされている。水平尾翼は取り付け位置こそ変わっているものの、形状的には流用できそうだ。
主翼はかなり形状が違う。類似形状のキットから流用するか、それともプラ板から自作するか……これは要検討。
問題はエンジンポッドで、こんな風に上下双発の配置はあまり例がない。BACライトニングの尾部は丁度良いのだが、エアインテイク部分は中央にショックコーンを置いた円筒形であり、VJ101のものとは異なる。
一番近いのはF8クルセイダーの機種直下インテイクで、これを半分のスケールで上下に置くとおおよそVJ101のエンジンポッドに近いイメージになりそうだ。

というわけで1/72 F-104を1機と1/144 F-8を4機購入。

F-8は機首と尾部以外を切り捨てるという、些か勿体ない使い方となる。

工作

最初に、F-104の胴体パーツからエアインテイクの膨らみを切り落とす。
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また併せて尾部も斜めに削ぎ落としておく。これには新規導入のエッチングソーが大活躍した(使い慣れないので早速1枚を折ってしまったが)。

機首側には先に操縦席を組み込むのだが、これは組み上がってからでは塗れないので、先に操縦席だけ塗装を済ませる。
シートには1mm幅に切ったマスキングテープを貼ってシートベルトを追加。計器・スイッチ類はスミ入れした後で適当に白や赤を点々と乗せる。コンソール中央のレーダーはクリアの蛍光グリーンで塗った。
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操縦席と前輪部を組み込んで機種を組み立て、後半と接着して胴体を組んでゆく。後半は腹側に主脚の引き込み部があり、本来ならば上側3/4周分と引き込み部の土台で機首側とがっちり接着されるようになっているのだが、左右エアインテイクを除去した結果として接着面積が背側の幅1cmほどと腹の引き込み脚基部しか支えがなくなってしまい頼りないことこの上ない。とりあえず接触部を瞬着で固めて補強しつつ、空いた部分を埋めて強度を確保することにする。

VJ-101に準拠するなら胴体後半は細身になるはずなのだが、F-104の主脚を流用する都合で引き込みスペースの幅より細くすることはできないので、F-104の胴径に合わせて成形する方向で行くことにした。
超音速機は音速付近での抵抗を軽減するために主翼付近で胴体を絞って全体の断面積変化を抑える「エリアルール」を採用するものであるらしいが、結果としてはそれを無視した形状になってしまった。だがまあF-104自体がエリアルールをあまり考慮していなさそうな形状であったし、アレはあくまで音速付近での抵抗に関わるものであるためマッハ2超の音速機ではアフターバーナー等で強引に音速を超えてしまえばあまり関係なくなるという情報もあり、細かいことは気にしないことにしよう。

穴をパテで塞いで形を整える。中まで充填すると消費量が多くなりすぎるので、盛るのは表面のみに留めたい。しかし胴パーツを接着してしまった後では裏打ち材を貼るのが難しいため、プラ棒を寸断して詰め込むことで芯材とし、その上にパテを盛ることにした。尾部も同様に、まず中央へ構造材を接着し、そこに水平尾翼を取り付けた上でパテで塞ぐ。
芯材を入れて軽量化を図ってさえ、パテの重みは決して少なくない。機体を支える主脚は機体全長の中央に近い位置にあり、その先にはまだ4割ほどの長さが残っている。そこへ胴中央〜尾部にかけてパテを詰め込んだことで重心が主脚よりも後方に移動し、尻餅を搗くようになってしまった。
これでは展示に問題があるので、機首側の重みを増やすべく操縦席の隙間から錘代わりのパテを充填することで重量バランスを調整。

パテをやすっては盛り、胴をできる限り滑らかに仕上げてゆく。本当ならば胴体の完成後に脚を接着すべきだったのだろうが、形状を検討する都合もあって先に脚を接着してから胴体を成形したために、切削中にうっかり負荷をかけて脚を折損してしまった。前脚はそのまま紛失したため真鍮パイプとアルミパイプで作り直し、カットした丸棒にパテを盛ってタイヤを作る。また後脚もフレームに合わせて真鍮線を瞬着で貼り付けて補強。
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本体と平行してエンジンポッドも作ってゆく。F-8の機首と尾部をカットし、操縦席は不要なので上半分をさらにカット。これを2機一組で接着して隙間をパテで埋め、エンジンポッドの形を作る。
表面を整えたところで回転軸を通す3mmの穴を穿ったら、パテが割れてしまったので瞬着で接着して成型し直す羽目に。
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削り/埋めてしまったモールドはエッチングソーで彫り直してみた。スジ彫りテープを貼ったりしてはみたが曲線に沿って直線を貼るのは難しく、あまり綺麗に彫れたとは言えない。

本体に主翼を取り付ける。VJ-101に倣って高翼配置とするため、胴にピンバイスで穴を空けて翼の基部を差し込むためのスリットを作り、差し込んだ翼と胴との隙間をパテで塞いで固定。
エンジンポッドの回転軸を考慮するとF-104のカミソリ翼ではあまりに薄すぎるので、F-8の使わない主翼をカットして上下から貼り付けることで厚みの確保を試みた。翼形が異なるため全体を均一には覆えず翼断面がだいぶ謎なことになっているが、エンジンポッドのおかげで断面をはっきり確認できないのであまり気にしないことにしよう。結果としてF-104の台形翼ともVJ-101の後退翼とも異なる翼形になった。
それでも回転軸を貫通させるには厚みが不足するので、翼端に3mmプラパイプをカットして接着、基部をパテで滑らかに成形しておく。

脚以外の細かい部品を接着してゆく。主脚のハッチは、一度前方が開いて脚を出してから閉じるものらしい(それにしてはハッチ部品の曲面が胴と合わない)が、基部には油圧配管が覗き見えるため先にこれをざっと塗装してからハッチを閉じる必要がある。どうも航空機はそういうの多いな……

ほぼ形状が完成したので下色として全体をアルミシルバーで塗装してみたら、なんか「安いおもちゃの飛行機」感が出てしまった。エンジンポッドが翼端にあり細長いデザインも60年代特撮っぽさがある(実際に60年代の機体なわけだが)。塗装でどうにか実機ぽい雰囲気にできるのだろうか……
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とりあえず図面に色を重ねて配色を検討。付属デカール自衛隊とカナダ空軍の2種なのでそれを元にマーキングする前提で自衛隊っぽい塗装にしようかと思うが、架空機なので部分的には適当なカラーリングをでっち上げなければならない。
エンジンポッド先端はF-104のエアインテイク塗装に準拠して黒で塗り、赤矢印のコーションマークを貼る。F-104ならばショックコーン前方位置へに先端を前向きに貼られるところだが、本機の場合はそこへは貼りようがないのでエンジンポッド側面へ逆向きに貼ることになる。
箱絵を参考にマークを貼ってみると、のっぺりとしてオモチャ然とした雰囲気が俄に精密な雰囲気になる。細密デカールすごい。
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ただ、ハセガワのデカールは日の丸の白縁を「白丸の上に赤丸を重ねて貼る」形で再現するのが辛い。恐らくは隠蔽力と発色を優先しての仕様なのかとは思うが、位置決めに神経使うので一体化して欲しかった(実際にずれて貼り直した結果、破れて大変なことになってしまった)。またキットが古かったのかなんなのか、水に浸しても部分的に台紙から剥離しない箇所があり、色々と難儀した。

ともあれ、全体にマーキングを施してみると、(塗りやパテ成型痕の粗さに目を瞑れば)意外と「それっぽく」見えるものだ。
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なるべく手軽に菓子を焼く


甘いものを食べると心が穏やかになる。色々と買い置くのも良いが、一手間かけて自作するのも良い。
ただ、あまりに手間がかかったり難易度の高いレシピだと、一度挑戦してみるのは良いとしても繰り返し作る気にはなれない。
なるべく手間を省いて雑に作れる方法を模索している。

下記にいくつかレシピを紹介する。いずれも大体「混ぜて焼くだけ」といった感じで、手間も洗い物も少なく済み、十分に美味しい菓子が作れる。

チョコケーキ

「眠れぬ夜はケーキを焼いて」の午後(@_zengo)さんのレシピを元に簡略化。


材料を計る必要すらなく、電動器具なども不要なので非常に手軽で良い。最初に作るケーキとしてオススメ。

材料(マフィン型4個またはパウンド型1個分程度)

  • チョコ:150g程度
    • 板チョコ推奨(チョコ以外のものが入っていないものならなんでも良いが、50g単位で分量を調節しやすいものが望ましい)。
  • 鶏卵:チョコ50gあたり1玉
    • 大きさは問わない。
  • 粉糖(オプション):一摘み程度
    • 焼き上がったチョコケーキに少しふりかけるとそれっぽくなる。基本的に見た目のためのオプションなので、なくても良い。

工程

  1. チョコを非金属のボウル(丼でも可)に入れ、電子レンジで加熱する
    • 出力は500W程度で30〜60秒程度、ヘラで押してみて軟らかく崩れればOK。まだ硬い手応えがあるようなら10〜20秒づつ様子を見て追加加熱。
  2. 溶けたチョコをヘラで均一に混ぜる
    • 電子レンジは点で加熱するため温度分布にムラができるので、全体を混ぜることで溶け残りを溶かす。このとき、加熱しすぎて温度が高いようなら卵黄を凝固させないように少し冷ましておく。
  3. 卵を混ぜる
    • ボウルに卵を割り入れる。ヘラで卵を潰しチョコとよく混ぜ、均一に攪拌する。
  4. 型に流し込む
    • 用意した型へ均等に流し入れる。
  5. オーブンで焼く
    • 200度に予熱後、20分焼く。
  6. 冷ます
    • 大気に放熱することで温度を下げてから、型ごと冷蔵庫で冷却。
    • オプションの粉糖は冷却後に振り掛ける。

洋酒を入れたり洋酒漬けのドライフルーツを混ぜ込んだり、あるいはナッツを入れるなどの応用もできる。お好みに合わせ各自研究されたい。

チーズケーキ

愛妻がチーズケーキ好きなので頻繁に焼く。
クリームチーズと少々の材料を混ぜて焼くだけで手軽だが、軟らかいとはいえ固形であるクリームチーズを液状に混ざるまで攪拌するのは結構疲れるので、フードプロセッサやミキサーなどに頼ることをおすすめする。
クリームチーズ雪印メグミルクのものを推奨。これは品質や味わいの問題ではなく、「箱の裏にチーズケーキのレシピが書いてある」という理由によるもの。

レシピも雪印メグミルク公開のものに準拠しているが、いくつか材料や工程を簡略化している。
www.meg-snow.com

材料(円形ケーキ型15cm、マフィン型4〜6個またはパウンド型2個分程度)

  • クリームチーズ:200g
  • 鶏卵:2玉
    • サイズは問わない。生クリームを200ml使用する場合は3玉にする
  • 生クリーム:100ml
    • 1パック200ml入りのものが多いため半量余るが、他に使う当てがなければ腐らせるだけなので200ml全部混ぜてしまっても良い。その場合は卵を3玉に増量する。
  • 砂糖:60g

工程

  1. 攪拌:手動と電動で多少異なる。
    • 手動の場合
      1. ボウルにクリームチーズのみ入れ、ヘラで潰して軟らかくする。潰しにくい場合は木べらやスプーンなど先端が固く平たいものを使ってもいいだろう( 洗い物が増えるが)。
      2. 卵を割り入れ、泡立て器で混ぜる。
      3. 生クリームを入れ、泡立て器で均一になるまで攪拌する。
    • 電動の場合
      1. 材料すべてをフードプロセッサに入れ、攪拌する。側面に混ざり切れなかったクリームチーズが貼り付く場合はゴムべらで削ぎ落として再度攪拌。
  2. 型に流し込む
    • 用意した型へ均等に流し入れる。
  3. オーブンで焼く
    • 20度に予熱後、40分焼く。
  4. 冷ます
    • 大気に放熱して粗熱を取ってから、型ごと冷蔵庫へ。

焼く前の生地に洋酒を混ぜるのもいいし、またインスタントコーヒーなどを混ぜ込んで味変するというのもアリだ。型の底に砕いたクッキーを敷いておくなどの応用技も。

プリン

プリンは作るのが面倒なのだが、それは主にカラメルソースの作り方と、鬆が入らぬように蒸すためにコツが要るからだ。逆に言えば、その2点を自力でやらなくて済むならば非常に簡単になる。
カラメルについては、タブレット状のものが販売されているので購入を推奨する。袋の裏にプリンのレシピも付いており、至れり尽くせり。

蒸しについてはスチームオーブンレンジを推奨。まず間違いなく「茶碗蒸し」調理モードがあるため非常に安定してプリンを作ることができる。
ない場合は各自、蒸し方を調べること。

材料(プリン容器6個程度)

  • 鶏卵:3玉
  • 牛乳:360ml
  • 砂糖:60g(好みに応じて調節のこと)

工程

  1. 砂糖を牛乳に混ぜて溶かす。鍋に入れて軽く火を通すと溶けやすい(卵を混ぜる前に冷ましておくこと)。注ぎ口付きの鍋を推奨。
  2. 別の容器に卵を割り入れ、卵黄と卵白をよく混ぜておく。
  3. 牛乳を入れた器に卵液を混ぜる。
    • どうしても細かい卵白がダマになって滑らかな食感を阻害するので、卵液を混ぜる際に茶漉しを通しすことで粒状の残留物を除去すると良い。
  4. プリンの容器にカラメルタブレットを入れ、3のプリン液を均等に注ぐ。
    • 器は耐熱性であればなんでも良い。よくある瓶型のプリン容器だとだいたい6個分になる。
  5. タブレットがプリン液の水分で溶けるまで20分ほど待ってから、茶碗蒸しモードで蒸す。

個人的には甘さを控えめにしつつ、ラム酒を少し混ぜるのが好み。

カヌぽ

杏耶@あや(@ayatanponpon)さんのレシピ。雑に言えば「粉入れて焼いたプリン」だこれ。


カヌレは表面をカリッと焼き上げるのがポイントだが、カヌぽは難しいことを気にしない。

材料(マフィン型6個程度)

  • 薄力粉:80g
  • 砂糖:80g
  • 鶏卵:1玉
  • 牛乳:250ml
  • バター:10g
  • ラム酒:キャップ1杯
  • バニラオイル:6滴

工程

  1. 薄力粉と砂糖に卵を混ぜ、練る。
    • 必ず粉材料と卵だけを先に混ぜておくこと(粉に牛乳を混ぜようとするとダマになるので)。
  2. 牛乳をレンジで温めてバターを溶かし、混ぜる。
  3. 1に2を少しづつ混ぜて伸ばし、均一な液状にする。
    • 一度に全部入れるより、少しづつ入れて粘性を下げる方が均一に混ぜやすい。
  4. ラム酒とバニラオイルを混ぜる。なくても作れるが、カヌレっぽさが違う。
  5. マフィン型に均等に流し入れる。
  6. オーブンを200度に予熱し、60分焼く。

本場のカヌレほど表面カリッとは行かないが、モッチリ具合と香りは十分で満足度は高い。

番外:ゼリー

焼かないレシピ。
ゼラチンで作ってもいいが、加熱しすぎると固まりにくくなるし蛋白質分解酵素を持つフルーツは加熱しないと使えないし、色々面倒なのでアガーを使っている。

「やわらかい寒天」のようなもので、粉末状のものを溶かして使う。

材料

  • 水:400ml
    • 水分であれば水以外でも可。コーヒーやジュースなど、お好みで。
  • アガー:10g
    • 水に対するアガーの比率を変えることで固さをコントロールできるので、好みに応じて調節のこと。
  • 砂糖:50g
    • 水で作ることを想定した時の分量なので、甘味や液体の種類などで各自調節のこと。

工程

  1. 琺瑯やガラスなどの蓋付き耐熱容器に液を入れ、アガーを少しづつふりかける。
    • 一度に入れるとダマになりやすいので注意。少量を入れながら混ぜてゆく。
  2. 砂糖を入れ、火にかける。
  3. 沸騰したあたりで火を止め、しばらく放置して冷ます。
  4. 冷蔵庫で冷やす。

鍋を使わず、そのまま冷蔵庫に入れられる耐熱容器で直接作ってしまうところが手抜きポイント。

ただしフルーツゼリーには注意:アガーは凝固温度がゼラチンより高く、50〜60度ぐらいで固まりはじめるのでフルーツが煮えてしまい、いちごなどは表面が白っぽく変色したりとイマイチ綺麗にならない傾向がある。
ギリギリの温度まで冷ましてからフルーツを投入し、すぐに冷却すれば大丈夫かも知れないが、温度管理が面倒になって「手軽」ではなくなってしまうので、そういう時はゼラチンを使った方が良さそうだ。
多少煮えてもあまり影響のないフルーツならアガーで問題ない。特にキウイやパイナップルなど、蛋白質分解酵素のせいでゼラチンが使えないフルーツには最適。

カスタードクリーム

これだけでは菓子にならないが、菓子に添えるものとして覚えておくと何かと便利。

材料(丼一杯分程度)

  • 卵:1個
  • 薄力粉:15g
  • 牛乳:200ml
  • 砂糖:50g程度

工程

  1. 非金属のボウルか丼に薄力粉と砂糖に卵を割り入れ、ダマがなくなるようにすり混ぜる。
  2. 牛乳を加えながら混ぜ、液状にする。
  3. レンジで500W2分ほど加熱、一度取り出して混ぜ、追加で2分ほど加熱