サマーナイトミュージアム×東京メトロ「7つの謎解きミステリーラリー」

夏休み期間中、都内の美術館・博物館では金曜日の夜に閉館を21時まで延長し、また入館料も割引するサマーナイトミュージアムを実施している。
これに連動して、都内の国立・都立、7つの美術館・博物館を巡り謎を解くラリーイベントが開催されている。
mysteryrally.com
これを書いている時点では私もまだ最後まで解いていないのだけれど、思ったよりも時間がかかる上に会期の終わりまであまり間がないので、今のうちにお勧めしておこうと思う。

必要なもの

謎解きに参加するためには、いくらかの準備が要る。

  • 東京メトロ各駅で配布している冊子(A4サイズ)
  • A4の冊子を持ち歩きやすい鞄
  • 鉛筆
    • 美術館内では鉛筆以外の筆記用具が使えないので注意。
  • 入館料
    • 一部の美術館・博物館では入場して展示を確認する必要がある。通常料金で入場するとして合計1800円。
  • 交通費
    • 各館への移動は参加者負担。1日乗車券で回る手もあるが、正直1日で回り切れるとは思えないのでお勧めしない。

といったところか。

謎解きの流れ

最初に、入手した冊子を一通り読んでおこう。まずは館ごとに1ページが割かれ、2/3ほどの面積の文章と1/3ほどの謎が示される(水色枠のページ)。次いで後ろにピンク枠で行くべき場所の案内がある。路線図、各館のアクセス情報と「謎を解いてから行くべき場所」の指示という組み合わせになっている。
場所を把握したら、いよいよ各館に出発だ。水色ページ「Step1」の指示を見て展示品から情報を得ると、行くべき駅の名が示される。その駅で情報を得てもうひとつの謎を解くのがStep2だが、解いては駅に行くのでは効率が悪いので、先に7館すべて回ってから7つの駅を巡るのが良いだろう。

あなたがどの路線にアクセスしやすいかにもよるが、最初は2館一気に回れる上野(国立西洋美術館東京都美術館)あるいは恵比須と目黒の間にある2館(東京都写真美術館東京都庭園美術館)あたりからアタックするといいかも知れない。余裕がありそうなら、上野からは日比谷線秋葉原へ出てJRに乗り換え両国で江戸東京博物館、恵比須からだったら六本木の国立新美術館へも接続できる。国立近代美術館のある東西線竹橋駅だけがどちらからもやや行きにくいが、たとえば両国から錦糸町へ出て半蔵門線で大手町→竹橋とか、乃木坂から千代田線で大手町→竹橋といったアクセスが考えられる。

ただ、正直なところ謎解きはかなり難易度が低く、それを主体に全力で楽しむような感じはあまりない(まだ最後まで解いていないので最終的な手応えについては書くことができないのだが)。なので、「謎解きのために行く」というより「普段行かない美術館に足を運ぶきっかけ」ぐらいに捉えて、それぞれの館を楽しむことを中心にした方が良いと思う。どの館も公立の大手美術館であり収蔵品も多いので、一通り見るだけでも1時間では収まらないぐらい時間がかかるはずだ。特に上野は、謎解き館の2館以外にもふたつの博物館と動物園まであり、これだけで1日では終わらないぐらい密度が高い空間だ。そういった沢山の楽しみをスルーして謎だけ解くのは勿体ない。

まあそうは言っても9月半ばでラリーの会期が終わってしまう前になんとか情報を回収したいところではあるので悩ましい。
美術館の中で常設の展示品ではないものが謎に関わっているのは竹橋の国立近代美術館のみ、また美術館の謎を解いた後で回収すべき駅の情報のうちで会期中にしか掲示されないものは第一の謎(国立西洋美術館)のみなので、この2箇所さえ先に押さえてしまえば会期終了しても解けそうなものではある。
しかし、すべてを解いた後の最終問題が特設Webサイト上にしかないので、これが会期終了時点でクローズされてしまうとすれば期間中にしか解けないのかも知れない。

各館の紹介

今回巡る各館を簡単に紹介しておく。

国立西洋美術館

JR上野駅 公園口改札を出て上野公園に入るとすぐ右側にある、東京文化会館向かいの建物。装飾を廃したそっけない造りを特徴とするモダニズム建築の第一人者ル・コルビュジェによる設計で、建物自体が代表作として世界遺産登録されている。
川崎造船所社長だった松方幸次郎のコレクションを中心とした西洋美術400点ほどを中心に展示されており、特にロダンの彫刻やモネの油彩などが多い。

東京都美術館

日本で最初の公立美術館として大正末期に開館したもので、コレクションの展示だけではなく企画展やワークショップ、作家の登竜門となる公募展などを総合的に運用する美術館として運営されている……らしい。謎解きに必要なのは館外の彫刻展示のみだったので中を見ておらず、詳しい説明ができない。
煉瓦壁の直方体を連ねたシンプルな外観に、大きく設けられたガラス窓から見える通路壁の鮮やかな色彩が映える。

国立新美術館

東京都美術館のコレクションが増えすぎて公募展の場所がなくなってきたなどの理由から、「独自のコレクションを持たない純然たる貸し館」として建てられたもので、現在はルーヴル美術館展、荒木飛呂彦原画展が開催されており混雑していた。
建物としては、黒川紀章設計による、波打つガラスウォールのエントランスが特徴的。

東京都庭園美術館

皇族の邸宅および庭園だったものが戦後に払い下げられたもので、美術館とはいうが美術品の展示を目的とするものではなく、館そのものがアール・デコの粋を凝らした美術品である。館内の公開期間は限られるが、入口のルネ・ラリックによるガラス彫刻などは見ることができる。
docseri.hatenablog.jp

東京都写真美術館

写真および映像専門の美術館で、1階は映画館として館の選んだ作品を上映しており、2階・3階がそれぞれ展示室になっている。
建物の内装自体が白と金属に統一されているのは、モノクロの写真を意識しての設計なんだろうか。
docseri.hatenablog.jp

東京国立近代美術館

明治から現代までの美術品を展示する館。展覧会の場ではなく美術品を収集しコレクションを常設する形の美術館として国内で最初のものであったらしい。
外苑から皇居を望む景観そのものを展示するかのような「眺めの良い部屋」など、建物としてもちょっと面白い。
また少し離れた場所に煉瓦造りの旧近衛師団司令部だった建物を使用した別館「工芸館」があり、同じチケットで入館できる。

江戸東京博物館

両国駅の隣りに鎮座する異様な巨大建築。今回の参加館で唯一の博物館で、江戸時代から現代までの東京の文化風俗を展示している。内部には1/1スケールの建物が複数再現され、内部を見て回ることもできる。
両国駅は東西に改札があり、西口から出るとすぐ博物館だが東口からはかなり大回りとなるので注意。

1日で全館回るプラン

どうしても謎解きだけ最短でやりたい、という人のためにプランを考えてみた。
入館してから謎を解いて出てくるまで30分として、駅から美術館までの移動時間と駅間の移動時間を計算してゆく。

いちおう、これで7館ぜんぶを1日で巡ることが可能である。ただし途中での休憩どころか昼食すら予定に組み込んでいないので実際にはもっとかかるだろうし、目的の展示以外何も見ない前提だし、その上でこの後さらに7駅を巡る必要があるので、まあ1日でやるのは諦めた方がいいと思う。