「本好きの下剋上」を追う博物館の旅


印刷博物館

2018年1月初頭まで、文京区の凸版印刷小石川ビル内にある印刷博物館にて「本好きの下剋上」コラボが行なわれている。
www.printing-museum.org
といっても、常設展示のうち作品に関係のある部分にちょっとした立て札があるのと1階ショップでグッズ販売が行なわれている程度なので、既に見学済の人が改めて訪れるほどではあるまいが、逆に「本好き」から印刷技術に興味を持った人にとっては良い展示内容だろう。

まずは印刷以前の記録から始まり、印刷の発展を一瞥する壁展示を見ながら進む。ここは「本好き」とは関係が薄い感はあるが、それを抜けるとガラス壁の向こうにグーテンベルクの「ブドウ圧搾機を改造して作った」印刷機の復元品がある。これは80%縮小模型なので実物よりは小振りだが(それでも結構大きい)、これこそがローゼマイン工房が最初に導入した印刷機そのものだ。
その奥の、企画展コーナー(現在は子供向け絵本「キンダーブック」の足跡を特集している)を抜けると、プランタン=モレトゥスの印刷工房が見えてくる。
ここからは様々な印刷技術や製本の発達を追う総合展示コーナーである。木版印刷/銅版印刷/石版印刷/孔版印刷(ヴィルマの繊細な絵を印刷するために用いたガリ版も孔版印刷の一種だ)の比較や活字の字母(活字を量産するための原型となるもので、ヨハンもまずこれを作るところから始めたものと思われる)、グーテンベルクの42行聖書(西欧最初の印刷物は聖典であった)やチェーンドブック(神殿図書室にもあった、稀覯本を書棚に繋ぎ持ち出せぬようにしたもの)なども。またヴァチカンから寄贈された羊皮紙やパピルス(マインは草を織っていたが、実際には薄く削いだ茎を縦横に重ね圧着して作る)の写本などもある。
奥には活版印刷ワークショップがあり、(ローゼマイン工房で使っているものとは異なるが)活字を並べて印刷する体験ができる。またザックの改良による「てこの原理やばねを利用した」印刷機も置いてある。

なかなかに充実の展示ではあるのだが、如何せん説明が足りない。一つひとつの展示物に、これは何なのか、印刷史上どういった意義があるのか、といった説明があるべきではなかろうか。
館内撮影禁止なのが惜しまれるが、ワークショップ参加者は工房内については撮影OKなので活版印刷機などを撮影したい人は是非。わりとすぐに定員埋まってしまうようなので、できれば見学よりも先にワークショップに参加するといいかも知れない。
ついでに曲面パノラマスクリーンに投影する「VRシアター」を見るのも良いだろう。現在のプログラムは印刷とは何の関係もない、ロシア・クレムリン中央にあるウスペンスキー大聖堂の内部再現映像だが、雪深い地の神殿イメージの参考にはなるかも知れない。どうせなら世界の名図書館ウォークスルー映像とかだと嬉しいのだけど……

プリンティング・ミュージアム

印刷博物館の最寄り駅からだと江戸川橋から有楽町線で8駅、新富町付近にも別の印刷博物館がある。
www.mizunopritech.co.jp
ただしこちらは独立した博物館ではなく社内なので見学は平日のみ、要予約。

紙の博物館

印刷博物館の最寄り駅(のひとつ)、後楽園からだと東京メトロ南北線で5駅。王子駅飛鳥山に、王子製紙の紙業史料室を前身とする「紙の博物館」がある。
www.papermuseum.jp
こちらは特にコラボはしていないが、ローゼマインのもうひとつの中核事業である製紙について学ぶことができる。洋紙の機械製紙についてはあまり関係がないものの、和紙の方はエーレンフェスト紙の製法のモデルでもあり、色々と参考になるかと思う。
また土日の昼頃には使用済み紙パックを利用した紙すき体験ワークショップも。

プランタン=モレトゥス印刷博物館

江戸川橋から有楽町線で池袋へ出て成田エクスプレスで空港からおよそ15時間、ベルギーはアントワープ/アントウェルペンに今も残る、かのプランタンの印刷工房が、今そのまま博物館として公開されている。
www.hollandflanders.jp
「書物および写本3万、木版画1万5千、銅版画3千、インキュナブラ150、その他絵画やデッサンなど、世界最大のコレクションを誇る印刷博物館」だそうで是非一度は訪れたい場所である。