NERF西部劇化計画 第二弾:Winchester Style SlingFire


以前西部劇風NERF改造計画リヴォルヴァーを作ったが、シリンダーの後ろにプランジャーを配置する必要があるNERFではどうしても実銃の雰囲気に近いスタイルの再現は困難で、シンプルな外観に長い銃身という西部劇風とはかなり離れたデザインになってしまった。
というわけで今度は、比較的イメージを一致させ易そうなライフルを作ってみることにした。

西部劇で印象的なライフルといえば、なんといってもレバーアクションタイプだろう。

これはグリップの下に装填用のレバーを配したもので、右手をグリップから離し左手で銃身を支えたまま右手レバーを下に倒し再び引き上げることで次弾が薬室に送り込まれ、素早く連射できるという代物であった。自動連射機構のなかった西部開拓時代、この手動連射能力が極めて有用だったことは間違いない。南北戦争では南軍を悩ませ、その後は先住民の殲滅に効力を発揮し「西部を征服した」銃として広く知られた。またこのレバーを利用することで銃全体を跳ね上げたり一回転させたりするようなリロードアクションが可能となっており、その派手なイメージもあって西部劇に於いては定番の銃として使用される。

NERFにもレバーアクションのブラスターが一種類だけ存在するが、残念ながら国内では未発売なので割高ではあるが平行輸入品を入手。

グリップ下の装填レバーという形式はまさにレバーアクション・ライフルそのものだが、弾倉は銃身と平行な管型弾倉ではなく垂直の箱型弾倉だ。また細身の実銃と異なり、わりとがっしりした箱型の本体に短かい銃口を持つ、ライフルというよりもマシンガンといった雰囲気で、あまり西部劇っぽくはない。
とはいえライルフタイプのブラスターにレバーアクション機構を後付けするよりは、レバーアクション機構のあるブラスターをライフルに改造する方が簡単だろう。というわけで、これをウィンチェスター・ライフル風に仕立ててみることにする。

実はそういう改造事例は少なからず存在しており、3Dプリンタで出力されたMODパーツも販売されていたりするのだが、いずれも上下二連バレルで上がダミー、下が実際の銃身という構造になっている。しかし本当のウィンチェスター・ライフルは上が銃身、下は管型弾倉なのであって、可能な限りそのスタイルを踏襲したい(とはいえ管型弾倉は結局ダミーでしかないのだし、そこに拘ることに意味があるのかと言われると返す言葉もないが)。

まずは分解して中身を確認する。

基本的にモナカ構造であることの多いNERFだが、時折ハメ殺し部分があったりして分解しにくいモデルもある。SlingFireの場合はショルダーストックが一体型で、本体後部を挟んで長いネジで留める構造になっているので、先にこれを引き抜かないと本体が外れない。
中身を見ると、箱型の本体の上部はほとんど空洞であることが判る。ならば、この部分をすっぱり切り落としてしまっても問題ないのではないか(図のピンク線)。後端部はトリガーによって動く部分が収まっているのでここは残す必要があるが、なんならこの部分だけ本体から飛び出させてしまっても良いかもしれない。
というわけで切断位置を検討した結果、「SlingFire」ロゴのあるプレート上端に合わせて切ると丁度固定ネジ部分を残しつつ3cmぐらいスリムにできて良さそうだ、ということが判明した。

切断にはモーターツールに取り付けた丸ノコを利用している。

手作業で切ると線がブレたりしやすいし結構力が要るし、やはりこういうのは電動化するに限る。数十分〜数時間かかるような作業がほんの数分で済むので電動工具は偉大だ。

……実はこの時まだ気付いていなかったのだが、トリガー機構部分は本体右側面後部のフレームで支えられているので安易に切断してしまうわけには行かなかったのだ。結局、最低限のフレームを残すようにしながら後端を切り落としてなだらかに処理することで落ち着いた(図のオレンジ線)。当初の目論見ほどにはスリムにならなかったが、円形の飾り部分を取り去って垂直だった部分を斜めにしただけでも印象はかなり違う。
トリガーを引いた時に動く長方形のパーツは上部と後部を丸ヤスリで一部削って成形し、撃鉄っぽく見せた。

タクティカルレールは本体を押さえるプレート状部品と一体化しており、ツメで嵌め込まれているので外しにくい。そのためプレートを根本から分離し、個別に再利用することにした。切り落とした本体の上にバルサ材で蓋をし、その上にレールを貼り付け、隙間をパテで埋めてなめらかに削る。レールを置いたことでディティールの少ない平面に密度感が生じ、ついでにスコープなどのオプションパーツも取り付け可能になった。

銃身の延長をどう処理するかは最大の問題だった。銃身として使うために内径25mm厚さ3mmの塩ビパイプを入手してあったが、そのままでは固定できない。市販のMODパーツは銃口の取り付け部を流用する形で、元のパーツに代わる部品に差し替えて固定するように作られているが、そんなパーツを作る手段がない以上は別の方法で固定するしかない。しかしパイプをパテで着けただけでは強度に不安がある。
幸いにして本来の銃口パーツの内側が丁度パイプの外径ぴったりだったので、これを肉抜きしてパイプを差し込み固定することにした。

銃口パーツの裏側は、8本の支持材で八角形の外側と円筒形の内側が繋がっている。

これを切断する必要があるのだが、手作業では奥の方まで刃を入れて切るのは難しい。かといって電動の丸ノコでは刃が届かない。最初はヤスリを差し込んで削るなど色々と試みたのだが、諦めて細刃の電鋸を導入したところあっさり解決した。

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ただし部品を手で固定すると激しく前後する鋸歯が食い込んで一緒に振動してしまうので些か効率が悪い。できれば万力を使用したいところ。

さて、肉抜きした銃口を本体に戻し、パイプを差し込んでみる。固定は問題なさそうだ。

ここで、銃身の長さをどうするか考えることにした。ウィンチェスター・ライフルにも何種類もあって銃身の長さも様々だが、あまり長いと取り回しが悪いのでショートライフルモデルを基準にバランスを調整する。Photoshopでウィンチェスター・ライフルとSlingFireの画像を重ね、レバーのサイズを基準に全体を比較して大体の長さを割り出した結果、実銃の全長約1mに対しショルダーストックがやや短かい分だけ詰まった90cmほどとすることにした。機関部が倍以上の長さを持つため純粋な銃身長ではだいぶん詰まって30cm程度だが、弾倉部を計算に入れると45cmぐらいの銃身長に相当する。
なお長さを測って切断するにあたりマスキングテープを利用した。

銃身に沿わせる弾倉には、銃身よりもやや径の細いパイプを使用したい。銃弾が収まる部分なのでダーツよりも太くなければならないが、塩ビの銃身が肉厚もあって結構ずっしりと重量があったので、軽量化のためにも軽い部材が好ましい……ということで100均のNERF的ダーツを飛ばす吹き矢を採用。

安全 安心 吹き矢 2個セット おもちゃ

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根本は木製のフォアグリップで覆う。この部分はパテを持って成形することになるが、流石にパテのみで盛ると消費量も半端ないし重くもなるので、細く切ったバルサ材を芯材として嵩増しを試みた。また抜いた銃口パーツの内側も埋め込んだが、それでもタミヤのエポキシパテ100g入りを丸ごと使い切らざるを得なかった。

パテを盛っては削って平滑にする作業には、木工用のサンダーが役立った。

タジマ サンダーSA-30型 中目 SA-30C

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本来の銃口は上から巻き布風パーツで押さえて固定するようになっており、強度の面からもこれは外すわけに行かない。しかしその上にフォアグリップ部分を被せてしまうので巻き布の下の方が木に埋まるような感じになるのはイマイチだ。結局、木を磨き終えた後にパテで巻き布を延長することにした。固まる前にカッターで縦横に刻んで質感を作る。

管型弾倉と銃口は結束バンドで結合した。ついでに本来の銃口の上にあったアイアンサイトを切り落としたものに穴を空けて結束バンドを通し、銃身の上に固定する。

弾倉の差し込み口も、下に飛び出た部分をカットすることもできなくはなさそうだったが、それをやったところで弾倉の全長が短かくできるわけではないので意味が薄いと判断し、下手に加工しないことにした。

こうして仕上がったのがこれである。

元のSlingFireと比較すると随分印象が変わったのがわかると思う。
最後に黒のサーフェイサーを吹いてからドライブラシでペイントしてゆく。イメージとしては所謂「Yellowboy」のような真鍮色をイメージしてメインプレートを金色に、フォアグリップとショルダーストックはブラウンで木目調にしつつ、他の部分はシルバーとブロンズで暗めに色を乗せる。最後に白に少し茶を混ぜて布を塗り、塗装終了。






なお銃身とフォアグリップでかなりフロントヘヴィーなバランスになってしまったが、その結果としてグリップから手を離すだけで先が下がって次弾装填され、手首を返して銃口を跳ね上げれば発射可能になるという使い勝手の良さも得たので良しとする。