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バザリの研究

名作ボードゲーム「バザリ」が復刻された。しかもコンパクトな箱に手頃な価格で。

バザリ 日本語版

バザリ 日本語版

 

 元は1998年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作で、中東の市場をイメージしたボードにプラスチックの宝石というコンポーネントだった。長らく絶版の後、コンパクトになったリメイク版が出て、こちらはボードデザインが簡素化され、宝石はガラス製に。

この度の再リメイク版は、元よりもコンパクトな箱になったがボードの雰囲気は初代を継承しつつ、宝石は種類ごとに色だけでなく形も異なる、これまでで一番凝ったパッケージ。雰囲気の問題だけでなく色覚的にも、形で判別できるのは重要なポイントである。しかも完全日本語化……とはいっても元々言語依存性ゼロのデザインだったので、付属の説明書が翻訳別添ではない、というだけのことだが。

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バザリの目的は3度の決算で点数を最大化することだが、そのための手段は「市場を誰より速く巡る」「手番ごとに点数を集める」「宝石を集めて決算で点数化する」と3種類用意されており、どれを実行するか選ぶ部分はバッティングゲームになっている。
バッティングが生じた場合は手持ちの宝石による交渉を行ない、行動権を取るか、権利を放棄して相手の出した宝石を貰うかの二択となる。

速く巡るにはダイス運が物を言い、行動選択の段階では互いの心理を読む能力が、バッティング時の交渉では計算高さが求められる。このバランスの良さこそがバザリの魅力である。

交渉について

前述の通り、バザリの交渉は宝石によって行なわれる。具体的には「相手よりも多い宝石を提示する」か「相手と同じ数だがより合計価値の高い宝石を提示する」ことによる競りを行なう。
ここで重要なのは、宝石が単に交渉のためのリソースに留まらず決算に於いては最大40点もの得点源でもあるということだ。即ち、この交渉は「自分が宝石数最多を得て得点を取るか、相手に宝石数最多を与えて得点を許すか」の勝負でもある。
逆に言えば宝石数が最多にならないような出し方で数や価値を増やせば、相手は得点に至らぬと知りつつ受け入れるか、あるいは無理にでもその数・価値を上回る宝石を出すしかなくなり、それは結果としてこちらを最多宝石に押し上げたり、行動権による利を許すこととなる。 

手の選択について

基本的には選択肢3つを4人で、あるいは選択肢4つを5人で出すことになるため、必ずバッティングが生じる。止まった場所の宝石数と点数からある程度他プレイヤーの望みが推測できるので、その上でバッティングさせるか避けるかの読みが要求される。バッティングさせて交渉を迫るつもりが避けられたり、あるいは複数人で同じことを目論んだ結果多重バッティングになって行動権を失ったりするのでなかなか悩ましい。

さて、それでは、手筋としては3(あるいは4)選択肢のうちどれを選ぶのが好ましいのか考えてみよう。

この中でも重要なのは「ダイス」で、この選択肢はラウンドの終了を早める効果があり、そのことによって他の選択肢に影響を与える。とりわけ点数はモロにその影響を被り減収となる一方、宝石の方はたしかに個数こそ減ることになるものの点数自体は固定であるから影響を受けにくい。そしてダイス選択者自身の見入りは必ずしも良いものではないため、使いどころを選ぶ必要がある。

ひとまずは、ごく単純な手法としてバッティングを考慮せず必ず同じ手を選択する手法を考えてみる。

走り戦術

毎ターン、ダイスのみを選択するプレイ。追加で1D6進めるため速度に勝り、また6-出目が点数にもなるため点数効率もそれなり。
市場全体は30マスなので、誰もダイスを選択しない場合の1ラウンド平均は8.57ターンとなるが、逆に毎ターン走った場合はおよそ4〜5ターンで周回できる計算になる。
4ターンだとしてダイスから得られる得点合計は平均10点、加えて(恐らくは最初に周回を終えると思われるので)ゴール報酬10点が加算され、1ラウンドでおよそ20点を得ることができる。

点数戦術

毎ターン、点数のみを得るプレイ。点数は4〜7だが全マスの平均は5.3、8ターンかけて周回するなら1ラウンド42.4点、4ラウンドで終わるとして21.2点。得点力としては安定して高いが、他プレイヤーに全力走りがいた場合は得点が半減し、ほぼ拮抗する。全力宝石で全数最多を取られた場合でも8ターンなら拮抗するが、短かく終わるとやや不利。

宝石戦術

ひたすら宝石のみを集めるプレイは得点の期待値を計算しにくい。
各マスの宝石数を平均すると青は0.6個、その他は0.7個となるので2.4〜4.8/2.8〜5.6個ほど得られる計算になる。点数は全部の色で最大数を確保した場合で40点、ただし最大数を取った色は市場に3個戻すことになるため、最低でも3個差を付けておかないと次ラウンドが不利になる点に注意が必要である。

宝石の利は得点力以上に、交渉材料を得ることにある。バッティング時のあらゆる交渉には宝石が必要であるし、直接自分が交渉しない場合でも、多くの宝石を持つことが結果として他プレイヤーの交渉判断を変動させることになる。

小商い戦術

これは5人時専用の選択肢であり、バッティングを回避する目的のものに過ぎないため他の手に比べ優位性は低い。基本的には宝石を1増やし価値をアップグレードするだけで、大きく手を伸ばすことも他人を妨害することもできないが、専念すれば青3緑3を黄6赤6に変え、黄を緑1赤1にした後緑を黄1赤1にすることで最終的に8ターンで黄+6赤+8にまで伸ばせるので、26点ほどの点数を狙い得る。ただし青緑を捨てることでその後の交渉および小商いに伸び悩むので、適度に宝石確保も織り混ぜつつ展開することになるだろう。また走られると交換機会が減少するため効果が弱まる。

バランス型

マスごとに宝石価値と点数価値を評価し、どちらかが高ければそれを取り、どちらも低ければダイスを振るスタイルを考えてみる。下の表はバザリのボード上各マスについて評価を産出したものだ。スタート位置が固定されていないため、便宜的にスコアトラック0の位置に一番近い2マスの左側から記録している。

選択 6マス点数 6マス宝石 偏差値
33 178 51.84
32 178 48.12
30 168 38.54
31 174 43.55
32 178 48.12
31 166 41.84
32 174 47.27
32 180 48.55
33 188 53.98
32 190 50.68
33 200 56.54
33 200 56.54
30 190 43.24
30 196 44.52
29 202 42.08
31 206 50.38
30 212 47.94
32 228 58.80
33 214 59.53
33 214 59.53
32 206 54.10
30 208 47.08
31 188 46.54
31 180 44.83
32 178 48.12
33 166 49.28
36 170 61.30
36 156 58.31
34 156 50.87
33 160 48.00
平均 32 186.8 50

(本当なら各マスの宝石数・点数を記載するとどの項目がどのマスの部分なのかわかりやすくなるのだが、如何せん言語依存ゼロでルール・コンポーネントともシンプルなゲームだけにボード情報を全公開してしまうのは憚られるため、このような表になっている。ご了承戴きたい。)

ここではまず「選択」の項をご覧戴こう。これは各マスについて宝石、点数のどちらが優位かを示したものだ。点数平均が5.33であるのに対し宝石平均は31.13と6倍の差があるため、宝石価値は合計の1/6を算出して点数と比較し、より高い方を示している。なお点数が5以下、かつ宝石価値が20(緑2または青1黄1)以下の場合はダイスが最良、と示すようになっている。

宝石価値との比較基準やダイス優先の基準については異論もあろうが、ひとつの指標にはなるかと思う。

それ以外のデータについては次項で解説する。

スタート位置評価

バザリのマスにはそれぞれに異なる点数・宝石数が示されているので、現在位置から一手番で到達し得る範囲内の得点価値には差がある。
前掲の表に、各マスから1D6範囲内のマスに示された宝石および点数を合計しスコアを付けたものを示した。

点数と宝石では数値を単純比較できないので、それぞれに偏差値を算出して総合スコアを出したが、点数が29〜36と5:6程度の比に収まるのに対し宝石は2:3近い比になっているため単純に偏差値を合計してしまうと比率の大きい宝石評価に引きずられる。そこで点数偏差値の3倍と宝石偏差値の2倍を合計し5で割るという処理によって最終的な偏差値を出した。

紫は最も低い値、緑は最も高い値だ。

 

もっとも、スタート位置を任意に選択できるのは1ラウンド目の最初だけで、得られるものは出目と行動選択次第だし、その後はダイス目によって位置が分散してゆくから、スタート位置の選択がゲームに大きな影響を及ぼすことはないと思われる。