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横浜駅の無限工事に関する仮説

架空

博士「横浜駅無限増殖仮説を知っているか」
助手「なんですそれ」
博士「100年以上も工事を続けて、未だ完成しない横浜駅はこのままどこまでも増築を続け、やがて全世界は横浜駅に飲まれてしまうだろうという説だ」
助手「でも戦前の横浜駅に対して現在の横浜駅ってそれほど大きくなってないような」
博士「それは『どこまでが横浜駅か』という概念の変化である程度は説明がつく。駅とは改札内空間だけではなく、改札へ連なる部分もまた駅の一部だが、そう考えると横浜駅地下空間は西側400m、東側600mほどにも及ぶ。また土地面積は大きく増えていないが駅ビルによって床面積はかなり増加しているはずだ」
助手「なるほど、でもそうすると横浜駅の増殖は主に線路と垂直な方向に行われていて、増加率も100年程度ではそれほど大きくないということになるのでは……」
博士「そう、100年も工事を続けている割にはちっちゃいのね、というのが膨張りt……もとい、増殖説の弱点だ。そこで別の仮説を考えた。実は横浜駅は永劫に工事を続けているわけではない」
助手「ほう」
博士「逆だ。工事している駅が横浜駅なのだ」
助手「ちょっと言っている意味がわかりませんが」
博士「昔横浜駅であった駅が、現在では桜木町駅となっていることを示す記録がある。これはなぜかと言えば、駅が完成したからだ」
助手「……はい?」
博士「つまり、横浜駅とは駅が工事中であるという状態を示すものであって、完成すればそれはもう横浜駅ではないのだ。横浜駅状態は別の着工駅に転移し、そこが工事を終えるまでの間は横浜駅である」
助手「だとすれば工事中の駅は全て横浜駅ということになるし、逆に全ての駅は工事中であったことがないということになりませんか」
博士「それについては横浜駅の憑依が解けた時点で横浜駅であった時点の記憶が元の駅にすり替わっていると考えられる」
助手「なるほど、しかしそれでも同時に複数横浜駅が存在し得る問題の答えには」
博士「複数横浜駅という状態を我々が認識できず、それらが同一のものとして認識されている可能性が」
助手「そうすると同じ横浜駅にいるのに行き先が違ったり横浜駅で待ち合わせたのに出会えなかったり」
博士「あるいは横浜駅同士──というのもなんだか妙な表現だが、それらは同一の駅でなければならぬのだから相互に空間が繋がって存在するのかもしれない」
助手「横浜駅を通じた空間転移……もしかして神隠しの一部はそうやって」
博士「工事が終わっても、これが最後の横浜駅であるとは限らない……いつかまた、君の町にも第二、第三の横浜駅が」
助手「誰に向かって語りかけてるんです?」