懐中星天儀紙盤とライティング

5月初頭からの点滴堂「少女への手紙」展でご好評頂いた、箔押しのカードセット「懐中星天儀紙盤」。明日から始まる『La couronne du fleur Ⅸ』(花の王冠展9)にてこちらを販売するにあたり、ちょっと撮影のコツ的なことをご紹介しておこうかと思う。

写真というのは「陰影を写し取ったもの」なので光の加減はとても重要なのだけれど、とりわけ小物を撮る場合、室内での撮影が多い。日中であれば窓際からの光を取り込めるが、夜はどうしても室内の明かりで撮るしかない。ところが、家の明かりは基本的に部屋全体を満遍なく照らすために天井に取り付けられているので、撮影の時にはあまり良い感じにならないのだ。
お気に入りのアイテムを撮影する時など、背景や配置など雰囲気には気を配っていらっしゃる方でも、光の当て方にまでは思い至らないというようなことは珍しくない。

具体的に、光の当て方で何が変わるのかをお見せしよう。
以下の写真は、マクロレンズを付けたカメラを三脚に固定し、斜め上からまったく同じセッティングで撮影したものだ。撮影用の光源を手で持って位置を動かしながら、光の当て方だけを変えている。

まずは真上からの光。

手前側の星天儀の虹箔、奥の青箔の反射も見え、良く写っている……ようにも思える。だが、どこかしら色が浅く、全体的に何かのっぺりとして、やや雰囲気が物足りない。いかにも電灯で照らした感がある。
これが、たとえばこうなる。

随分雰囲気が違う。単に暗くなったというだけではなく、透明な鉱物や奥の宇宙ガラスを通して落ちる光が盤面を照らし、箔も明るく反射する部分と暗く締まった中に光の散る部分とのコントラストが生じ、夜の薄明かりに浮かび上がったかのように思われる。
まあ、このライティングが正解かどうかはさておき、光のコントロールが重要だということはご理解いただけたかと思う。

写真は、逆光を意識すると良い雰囲気になることが多い。逆光は薄いものを透かし、輪郭を光らせ、画面上側を明るく下側を暗くグラデーションを作り出す。
また、視点側から明るく照らす順光では、近付いて撮影すると被写体にカメラや撮影者の影が落ちてしまう。この点も逆光ならば解決できる。
逆光を得るのが難しい条件でも、せめて側光になるように意識すると良いだろう。
ただし逆光は被写体の手前側が暗くなるので、余裕があれば白いものや銀色のものなどを手前に置いて(レフ板があればなお良い)反射光で影の部分を明るめに起こすといいだろう。
参考記事:光や色をコントロールしてみよう | αcafé web マンスリーフォトコン連動 撮りかた講座 | フォト | 知る・楽しむ | My Sony Club | ソニー

ここからは光の当て方を変え、被写体を配置したテーブル面のほぼ真横からの光と斜め上45度ぐらいからの光、それぞれに手前(カメラのある側)→奥、左→右、奥→手前、右→左の4方向で光を当てた時の違いをお見せする。カメラのセッティング、被写体の配置などは一切変えていない。また画像加工もない。
(いつものセッティングのまま撮ってしまったので-2evほど補正がかかっており全体に暗くなってしまったのは失敗)


真横、手前→奥。


真横、左→右。


真横、奥→手前。


右→左。これだけ光源の配線の関係で真横から当てられずやや斜め上からの光になってしまった。そのため光源のある右側よりも光の当たる左側が明るい。光源位置の作例としては失敗なのだが、結果としては真横から光を当てた中で最も雰囲気が出た。このことからも、光はやや上側から当てる方が良いことが伺える。


斜め上、手前→奥。ちょうどカメラレンズの少し上ぐらいから光を当てている。内蔵フラッシュなどを使った場合の光源がだいたいこういう感じ。


斜め上、左→右。


斜め上、奥→手前。


斜め上、右→左。
全体に、斜め上から当てたものの方が真上や真横よりも雰囲気が出ていることがわかると思う。

ここからちょっと番外、光源を直接被写体の方へ向けず、壁や天井に反射させることで柔らかく全体を照らしたもの。

左奥側の白壁に向けたもの。


こちらは真上に向けて天井から。
どちらもうすぼんやりとして輝きが鈍い。箔のような反射を活かしたいものには向かないが、逆に反射を抑えたいもの、柔らかく滑らかに撮りたい場合などには有効。

この後は特に向きを定めず、なるべく印象的な光が出るようにあちこち照明を動かしながら撮影してみた。

青箔が印象的に光るように撮ったもの。


こちらは虹箔の光り方で調節。


どちらの箔も、また下に敷いた夜想紙もやんわり光るように調節。一応、今回の撮影意図は「紙を撮る」方なので、概ね理想的。


こちらは逆に、上に置いた鉱物の光が印象的になるように調節。

まあ最終的には「いい感じの光になるようあちこち照らしてみましょう」という漠然とした話になってしまうのだが、そういうことをするためには照らせる光源が必要になる。
光にムラがなければ懐中電灯やスタンドライトなどでも行けるが、そうでない場合はティッシュペーパーや半透明のビニール袋などを丸めて被せてみたりして「光を散らす」などの工夫が必要かも知れない。
私はこういう感じの撮影用照明機材を使っている。www.amazon.co.jp
かなり明るく照らせるし光ムラがあんまりないので使い易い。アダプタ繋いでコンセントから電源を取るだけでなく、カメラ用バッテリを流用することもできる。ただ適切な位置で固定するためには別途なんらかの支えが必要になる。