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選挙結果から国民の指向性を見る:議席増加政党編

衆議院議員総選挙は自民党の圧勝による政権復帰で幕を閉じた。
選挙というのは自分たちの代理として意見を反映させてくれる人を選び出すためのもので、それには代理人がどのような考えを持っているかを判断せねばならない。実際には、代議士各人が個別に動くわけではなく寄り集まって党を形成し、その中で大体の意見を一致させて政策を打ち出してくるので、選挙は党を選ぶものであるし党の見解を見るものとなる、はずだ。
……が、前回の民主圧勝も、今回の自民圧勝も、どうにも「懲罰」的なものに見えて仕方ない。各党の公約を支持したのではなく、単に現政権を否定することだけが目的で、代わりにどこが当選するかはどうでもよいという風潮。
しかし、これは私にそう見えているだけで、実は違うのかも知れない。
国民が「政策によって政党/候補を選んだ」のだとすれば、議席を増やした政党と減らした政党で公約に何らかの共通点が見出せるのではないか、と今更ながらに各党の公約を比較してみる。

まずは議席を増やした自民党、公明党、日本維新の会、みんなの党から。

消費税

自民、公明は増税法施行について「経済が回復すれば実施」という但し書きを付加。維新は施行についての条件はなく、逆にみんなの党は「凍結」。
使途については、自民は全額を社会保障費に、維新は地方税化。公明・みんなの党は使途言及なし(ただし公明は、食糧などについて税率軽減を主張)。

全体に、増税については否定的な傾向があるように思われる。

財政改革

自民は「公務員人件費を国・地方で合計2兆円削減」。単純に言って、行政の規模を縮小するという意味か。
公明は「所得税は累進制を強化、相続税は最高税率引き上げ、基礎控除の引き下げなどで構造を見直す」。金持ちから取れ、という方針。
維新は財政健全化とはいうが具体的言及なし。
みんなの党は「国家公務員を10万人削減、給与を2割削減し、国の地方出先機関を廃止」「20兆円以上の「埋蔵金」を発掘」。

ぜんぜん共通性がない。国民は財政問題についてはあまり考えていないようだ。敢えて言うなら「公務員を削れ」か。

景気対策

自民は「企業の国際競争力を強化するため、法人税を思い切って減税」。
公明は「エコカー補助金の復活、国内立地補助金拡充」。
維新は「法人税減税、再投資税額控除制度の導入などフロー課税を引き下げ」「政府・地方自治体の予算事業を徹底して民間に開放」「日銀法を改正し、政府と日銀の役割分担や責任の所在を再構築」「破産法制を見直し、経営責任の明確化、債権者側の不良債権処理を促進し、再チャレンジ可能な社会を構築」。
みんなの党は「日銀法を改正し、日銀の目標と責務を定めた協定を政府と締結、国会に総裁、副総裁、審議委員の解任権を与える」「20兆円の政府保証付き中小企業ローンを証券化、地域型投信を促進」「政府金融資産300兆円のうち3分の2を流動化し、金融市場を活性化」。

自民・維新の法人税減税、維新・みんなの党の日銀法改正を見るに、概ね「企業負担を軽くして経済を活性化させつつ消費税増税で国民からは取る」「今までの不景気は日銀が悪い」といったところか。
具体策ではないので書かなかったが自民、公明、維新は2%の物価上昇を宣言。これが経済にもたらす効果について私はよくわからないが、国民としては消費税増税分を相殺する5%以上の増収が見込めるかどうかが問題になってくる。

雇用対策

自民は「ハローワークの機能強化」「産・育休の取得範囲の拡大」「労働環境の整備」。
公明は「環境、医療・介護、農業、観光などを中心に、500万人の雇用を創出」「若者雇用担当大臣を設置」。
維新は「高齢者・女性労働力の活用」「再雇用の義務化よりも高齢者雇用率の設定」。
みんなの党は「原則としてすべての労働者(公務員、非正規を含む)に雇用保険を適用」「公務員における勤続年数の長さのみに基づく優遇待遇を廃止」「ハローワークと民間人材サービス企業の役割分担と連携を強化」。

雇用政策については全然まとまっておらず、全体としては「ハローワークの強化」ぐらいしか共通点がない。公明は若者の雇用促進を訴え、維新は高齢者雇用を。多分この二つは両立しない。

社会保障

社会保障といっても色々あるので、ちょっと細分化する。

高齢者医療

自民は「(消費税率引き上げを前提に)公費負担を拡大」。他は明示的な言及なし。

育児・出産・小児医療

自民は「国公私立の幼稚園、保育所の無料化、子どもの医療費無料化も検討」。
公明は「医療費負担は18歳まで1割への軽減を目指す」「産科・小児科などの医師不足解消のため、診療報酬を充実」「出産育児一時金を42万円から50万円に引き上げ、妊婦健診14回分の公費助成を恒久化」。
維新は子育てに関して言及なし。
みんなの党は「待機児童ゼロ、病児保育、一時保育の拡充などで子育てしながら働ける環境を整備」「子どもが多いほど税負担を緩和」。

何らかの形で出産・育児の負担を軽減しようという姿勢は見られるが、方針は一定しない。

その他医療・保険

自民は「勤務医の処遇改善、診療所の機能強化」。ただし具体的な施策なし。
公明は「医療費の負担上限額を、月額約8万円から約4万円に引き下げ」。
維新は「混合診療解禁、診療報酬点数決定を市場にゆだねる制度を検討」。
みんなの党は「医師数を人口千人当たり3人に」「医学部・メディカルスクールの新設を解禁」「かかりつけ医と専門医の役割分担を明確化」。

概ね勤務医の増加が軸か。

年金

自民は「受給資格要件を加入25年から10年に短縮」。
公明は「低所得者への年金加算の拡充」。
維新は「公的年金を賦課方式から積立方式に移行」「広く薄い年金目的の特別相続税を創設」。
みんなの党は「年金は積立方式への移行を検討」「年金保険料の月収上限を撤廃、安定した年金財源を確保」。

年金の負担額と受給額の逆転を受けて積立への移行が検討されているようだ。これって物価の変動なんかはどう処理されるんだろう。例えば物価が上昇すると実質給付が相対的に減少するような気がするが。

その他

自民は「生活保護法を抜本改正して不公正なバラマキを阻止」
公明党は鬱・自殺・孤立死対策にも言及。

分割した分だけ個々の項目について触れてない党が出るなどして総評し難いのだが、出産・育児、及び年金問題が中心で、他への関心は薄いと見るのが妥当か。全体としては保障の増加を謳う傾向にあるが、生活保護については締め付けのニュアンスが強い。

外交・軍事

対米については、各党とも「日米関係を強化」する方向。TPPに関しては自民・公明が慎重な態度、維新・みんなの党は積極的な賛成と分かれる。
領土問題については従来通りの「領土問題は存在しないと国際社会に周知」「国際司法で対処」(公明・みんなの党・維新)に対し自民のみ「公務員常駐など実行支配強化を検討」などやや強め。
一方、近隣諸国との関係については公明党が「隣接する中国、韓国、ロシアに加え、発展著しい東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドなどアジア各国との定期的な首脳間対話を実施」など交流の促進、みんなの党は「中国とは経済関係を強化し、人的交流・文化交流を拡大」「韓国とは北朝鮮の拉致、核開発問題の解決に向けて関係を改善・強化」。維新、自民は具体的言及なし。
軍事面では、自民・維新が自衛隊の人数・予算拡充や集団的自衛権の行使など強化の方針。

全体的には、対米以外の近隣外交については強硬策寄りのようだ。

教育

概ね「いじめ対策」(公明・みんなの党)と「教育委員会制度の改正」(自民・維新・みんなの党)が主体。もっとも、具体的な施策・効果についてはなんだかよくわからない。

エネルギー

原発の扱いについては自民党が「再稼動について3年以内に結論」とするのに対し公明は「新規着工を認めず、40年制限を厳格適用し原発0を目指す」、維新は「安全規制や損害賠償の制度化などで脱原発体制を構築」みんなの党も「2020年代の原発0を目指す」と全体には原発に否定的。代替電力源に関しては、公明は「2030年に再生可能エネルギーを30%まで普及」維新は「自然エネルギーを活用」みんなの党は「天然ガスコンバインドサイクルなどで代替」。

この項は特に大きな問題で、またこれまで直面したことのなかった状況である。原発の推進にせよ脱却にせよ、単に口先で言ってみてるだけなのか、それとも真剣に論議が行なわれたのかが気になる。各党が既存原発のリスクをどの程度に見積もっているのか、現行の原発停止状況による電力体制をどう捉えているか、エネルギーの代替に伴う問題などをどう対処するのか、といったところに踏み込みたい。

災害復興・対策

「復興させます」以上の踏み込んだ表現があるものは、みんなの党の「放射能汚染が疑われる食品の原則全品検査、結果を詳細に公表」「原発関連作業員の放射線量管理と健康管理を国が行う」、維新の「被災地知事、市町村長に復興の権限・責任を持つポスト(大臣等)に就任してもらう」あたり。

もうちょっと津波対策などに具体策があるのかと思ったが、主に「がれきの処理を進める」ぐらいのことしか書いていない。

支持された党まとめ

共通性の高い政策としては「消費税はあんまり増やして欲しくない」「財政は公務員を絞ってなんとか」「企業減税で経済を活性化」「日銀は経済なんとかしろ」「尖閣竹島は確保」「自衛隊を強化」「原発は減らしたい」といったところか。
他にも「ハローワークを強化」「幼稚園は増やす」「育児はなんか安くする」「医者を増やしたい」「年金は積立方式に」などが、まあ概ね共通して見出される方向性である。


これ以外にも、自民党が強く主張する憲法改正など様々な議題はあるのだが、他党との共通性が見られないのでひとまず見送った。
ここから「支持されなかった政党の政策と一致性の高い部分」を抜いてゆくと、(政策が支持されたのだとすれば)国民が何を望んでいるかが見えてくるのではないだろうか。