Favstar.fmのユーザ分布を推定する

Favstar.fmでは有料ユーザと無料ユーザで機能を分けているが、昨日あたりから無料ユーザの機能が一部制限されたらしく、一部で騒ぎになっていた
……が、どうも騒ぎの理由がよくわからない。

今回、無料ユーザに新たに科せられた制限は「ユーザのステータス(ユーザ毎の画面で右に表示される数字)のうち総Fav数が20万以上は『200,000+』と表示され正確な総数がわからなくなる」というものだ。ご自分の総Fav数を確認された向きはお解りかと思うが、20万というのは通常のTwitterユーザが10年かかっても到達し得ない程度の数字だ。10年先までTwitterが存続しているかどうかすら不明だというのに、10年後でも制限のかからない数字に実質的な意味はない。
しかし世の中には既に20万を突破したような人たちが存在し、なおかつ彼らは総Fav数を竸うことに生き甲斐を見出しているらしい。まあ、そういう人がいるだろうこと自体は理解できる。

当初、この問題は単に無課金で極めてヘヴィに使い倒していた人たちだけが不満を述べているかに思われた。ならば、単に「金を払ってでもその機能を得るか、払いたくないなら機能を諦めるか」だけの単純な問題である。
ところが、どうやらまとめの主は課金済みであるらしい。ならば特に困るものではあるまい。

暫く問答を続けるうちに見えてきたのは、彼ら重度Fav中毒者(彼らは自身を「ふぁぼ圏」と自称しているようなので、以後そのように呼称する)とそうでないユーザの認識のズレだ。

ふぁぼ圏の主張

読み取れた範囲で簡潔にまとめると、次のようになる。

  1. 20万以上という数字はふぁぼ圏を狙い撃ちしたもの
    1. なのにふぁぼ圏ユーザの意見を聞くどころか一言の通達もなかった
  2. Favstarを使うようなユーザは程度の差こそあれFavに強い関心を持つ者ばかりで、ライトユーザなどいない
    1. 自分の観測範囲ではライトなFavstarユーザなんて一人も見掛けない
  3. ふぁぼ圏こそがFavstarの主たるユーザ層なのでFavstarはふぁぼ圏の意見を聞き入れるべき
    1. 事の重大さが理解できないFavstar非利用者は引っ込んでろ

当人に確認を取ってのまとめではないので、こちらの読解とあちらの意識に多少差はあるかも知れないが。

まあ色々と言いたいことはある:観測範囲が狭くて実情を認識できてないとか、ふぁぼ圏のような一部の超特殊なユーザの要望に特化するとカジュアルなユーザの利益を損ねるとか、一方的に特権意識持たれても苦笑いしかできんとか。が、その辺は当該まとめのコメント欄で大体言い尽したのであまり繰り返す気はない。

Favstar.fmのユーザ分布を推定する

それよりも気になったのは、実際のFavstarのユーザ分布だ。これに関しては公式のデータがないので実態を掴むのは簡単ではない。
とりあえず、公開されているデータから推定してみよう。

まず、Twitterのアクティヴユーザ数を確認する。「Insight for WebAnalytics: 2011/7日本のTwitter.com月間利用者数2,500万人で200万人増、facebook.comは1,800万人に400万人増」によると2011年8月現在で月間2500万ユーザ(PCからのアクセスのみ)。
mixi, Twitter, Facebook, Google+, Linkedin 2012年|売れる!ホームページの作り方」では2012年6月時点で1億4000万人(全世界)、また「ブラジルのツイッター利用者数が日本抜き2位に、新興国に普及余地 ブラジル ニュース | EMEye - 新興国情報」では2012年2月段階で全世界3億8300万、国内ユーザ数3000万人。
「7割が米国外」Twitter社が公表したユーザー数データを読み解く【西田宗千佳氏寄稿】」では公式なアクティヴユーザ数として全世界1億4000万人、国内の推定値2000万人超としている。
「アカウント総数」と「アクティヴユーザ数」の違いなどもあるだろうと思われるが、利用者数ということで暫定的に世界1億4000万/国内2000万を採用するとしよう。

次に、このうちFavstarを利用しているユーザ数を推定する。
Alexaのトラフィックデータを見ると全世界のトラフィック中0.03%前後を占めているようだ。なお同じくTwitterを確認すると8%前後、267倍ぐらいの差である。これを単純にTwitterのアクティヴユーザ数に当てはめるとすれば1億4000万÷267で全世界52万5千人、国内7万5千人ということになる。
ただ、これは流石に乱暴すぎる推定だ。TwitterとFavstarでは使い方がまったく異なり、それに伴い1ユーザあたりが消費するトラフィック量も変わる。
Twitterをブラウザから見る場合、概ね30秒ごとにTLが更新される。API経由でクライアントを利用する場合は通常1時間あたり350回のアクセス制限があるが、これは読み込み・書き込み・Favやユーザ情報などの更新を含め10秒に1回にちょっと足りないぐらいの量だ。ひとまず、何もしなければ1時間あたり120回、アクションがあっても150〜200回ぐらいが標準的な使い方でのアクセス回数と見よう。
対してFavstarの方は、普通10分に1回も確認しないのではなかろうか。
Twitterの表示は自分の発言がなくともTLの流れを確認する理由があるので頻繁に見るが、Favstarについてはよほど長時間にわたって注目を集めるような発言があった時でもなければ自分の発言より前に確認する理由はほとんどないし、常に順位を確認したいPヘヴィなroユーザであっても1時間ごとの更新データさえ見れば充分だろう。
かなり多めに見積って仮に平均的なユーザが1時間5回更新しているとしても、回数で見れば単純にTwitterの1/30〜1/40ということになる。
するとトラフィック量から推定されるアクティヴユーザ数は逆に30〜40倍増え、全世界303〜404万、国内22万5千〜30万ぐらいと考えられる。実際はもっと多いかも知れない:平均的な利用が2時間に1回程度だとすれば推定ユーザ数は10倍になる。

さて、この中に(「ふぁぼ圏」を含む)総Fav数20万を越えるユーザはどれぐらい存在するか。
実データを知らないので件のまとめ中での発言を参照するならば、「200万越えが1人、100万越えが9人、20万越えは星の数ほど」である。20万を越えるユーザ数については具体性を欠くが、上位10人の人数から大雑把に推定するならFav総数が半分になると人数が10倍になる、と仮定して50万越えユーザが100人、25万越えユーザが1000人ぐらいとしておこう。12.5万で1万人、6.25万で10万人。3.125万で100万人……1億人程度の「末端の一般ユーザ」でも平均7500Favぐらいを稼いでいる計算になるが、あくまで非常に精度の低い推定値であることをお断りしておく。
とはいえ、上位の方の人数が桁レベルで違うというわけではないだろうと思われるのでとりあえずこの値を適用すると、20万+になって影響を蒙る可能性のあるユーザはFavstarの全ユーザ数からすれば僅か0.03%程度ということになる(前述の通り、推定ユーザ数はかなりアクセス頻度を高めに設定しているので、実際は0.003%程度かも知れない)。

課金ユーザ数ということになると更にわからなくなる。前述の1000人程度は大体課金ユーザであるとしても、他に課金する人がどれぐらいいるのかは調べようがない。ただ、20件以上を遡るだけでも課金が必要になるので、その辺り気になる人はそれなりに課金しているかも知れない。私の1000人ちょっとのフォロー中でFavstarに課金している人は7人だそうなので、これまた大雑把に1%前後が課金と仮定すると3万〜4万人が課金している計算か。月に$5なので$15万〜20万の売上である。

ところでAlexaトラフィック分析を見ると28%がja.favstar.fmへのアクセスとなっている。これが日本からの全アクセスなのか、それとも日本でもfavstar.fm/jaへのアクセスなんかは別扱いなのかよくわからないが、Twitterユーザ数で言えば15%ぐらいである筈の日本ユーザがFavstarは30%近くを占めている、というのは興味深い。つまり、これほどFavに固執しているのは日本人だけかも知れないということだ。
ということは国内ユーザ数は30万前後ではなくその倍ぐらいいる、もしくは他国の倍ぐらい更新頻度が高い可能性が示唆される。

いずれにせよ、「ふぁぼ圏」の人たちがTwitterユーザとしてもFavstarユーザとしても極めて特殊な少数の層に過ぎないことは間違いない。そして、Favstarにしてみれば課金ユーザ一人の重みはヘヴィであれライトであれ差はなく、一握りの特殊ユーザのご機嫌を取るよりも、そこを切り捨ててでもカジュアルな層の課金を広げた方が有意義だし、もっと言えば無課金を含めた全ユーザ層の拡充を図ることがそのまま課金ユーザ数の増加にもなるわけで、少なくとも「自分たちの主張が一部の特殊層だけではなくFavstarユーザ全体の利益となり、ひいてはFavstar運営にとってもメリットをもたらす」ことを明らかにしてみせない限りは主張が通ることはないだろうとも思う。