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屍者の帝国 用語集VII

目次

第二部

I

ショーグネイト
「幕府」という、将軍=軍事指導者を最高権力者とした封建体制は世界的に見て極めて異例のものであり、一言で表し難いこの政治体制を英語では「将軍制」とでもいうべき、Shogunateという造語で表わす。
ハリー・パークス
駐日英国公使(1828-1885)。神戸港開港要求に始まり主に幕府を中心に交渉に当たり、戊辰戦争に於いて江戸城に迫った政府軍に圧力をかけ無血開城へ導いたともされる。
大久保利通
初代内務卿。明治初期の内務省は大蔵・司法・文部の三省を除く全範囲を所轄する総合省であり、実質的に政府機能のほとんどを掌握した人物。
ビーグル号
英海軍艦から調査船へと改装され、都合15年をかけ3度の調査航海を行なう。2回目の時にチャールズ・ダーウィンが同行しガラパゴス諸島などで多数の動植物を記録している。
インド洋の発光現象
1995年にインド洋で乳白色の海面発光現象が見られたという情報があるが、19世紀の事例はちょっと発見できなかった。
下着ではないから恥ずかしくない
兵器擬人化アニメ「ストライクウィッチーズ」のパロディ。同作に於いて、主人公ら少女は脚部に飛行装置を取り付ける必要性から「下半身には極めて面積の小さなズボンを着用している」(実質パンツ丸見えデザイン)設定となっており、公式キャッチコピーは「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」であった。
川路利良
警察制度を組織し、初代大警視(現在でいう警視総監)を務めた。密偵を良く使い、不平士族の動向を探り西南戦争前に於いては西郷派の分裂工作を行なっており、公安組織の創設者とも言える。
リットン調査団
ここではフランケンシュタイン査察団すなわち屍者技術の監視を目的とした調査団とされているが、史実でのリットン調査団満州事変の発生した1931年、同国独立宣言の正当性についての調査団として発足している。団長は本作に登場する副王リットンの子息、ヴィクター・ブルワー=リットン。
鍛冶橋の監獄所
警察の発足当初、まず整備されたのが監獄であったが、間も無く手狭となり市ヶ谷に移転し、跡地は東京駅に当てられた。
浜離宮、延遼館
鹿鳴館完成まで迎賓館として使われた建物。幕末、欧米諸国との接触により俄に海防の必要性が高まったことで浜御殿に海軍伝習屯所を設置。維新後、これを迎賓館とすべく後に鹿鳴館の設計なども手掛ける英国出身のお雇い建築家、ジョサイア・コンドルにより改装し延遼館と命名。外務省が庁舎として使用していた霞が関の大名屋敷、旧黒田長知邸の全焼に伴い一時期ここを仮庁舎とした。
隠密接敵を専門とする姿の見えない警備部隊
言わずと知れたニンジャ。
外務卿 寺島宗則
10歳から蘭語を学び、長じて薩摩藩の製鉄・造船、ガス・電信などの近代化事業に関わる。渡英経験を通して国家統一構想を説く。維新後は外務卿として電気通信・造幣事業に注力し日本の通信事業を拓いた。
山澤静吾
この時点では陸軍少将。1877年露土戦争では観戦武官としてロシア帝国軍に同行、プレブナ要塞攻略戦での苦戦を目の当たりにして思わず単身で参戦してしまったという逸話がある。
大英帝国がプレブナに進出したという事実はない
史実では、この戦争を通じてほとんど惨敗続きのトルコ軍がプレブナ要塞防衛戦に於いてのみロシア軍に手痛い打撃を与えている。本作に於いては、表向きはオスマン帝国が独力で切り抜けたことになっているものの裏で英国から密かに屍兵技術の供与があったことを匂わせる。
大里化学
007シリーズで日本を舞台とした作品『007は二度死ぬ』に於いて陰謀に関与した日本企業。そちらではスペクターの出先機関という扱いだったが、本作に於いてもまた関連が予想される。

II

ウェイクフィールド・ケミストリー
潜入先が大里化学なので化学系の会社に偽装したわけだが、何故ウェイクフィールドなのか不明。プロローグに登場する友人ウェイクフィールド氏と関係あるのかないのか。
ベンサム
ジェレミ・ベンサム(1748-1832)、イギリスの哲学者・経済学者・法学者。功利主義の創始者であり、「最大多数個人の最大幸福」について論じた。遺体は遺言に従い生前の姿で保存されており、「オート・アイコン」と呼ばれる。
ライティング・ボール
最初期のタイプライターは文字盤から打ちたい文字を探す方式だったが、キーを独立したピストン式に改めることで連続的に打鍵可能な機構としたのがデンマークのラスマス・マリング=ハンセンで、最初に商業生産されたこのタイプライターはキーが半球状の土台から放射状に突き出して配置されており、ライティング・ボールと呼ばれた。(参考→Hansen Writing Ball - Wikipedia, the free encyclopedia)

III

コレラ
致死性の高い経口感染性の疫病。糞便及び吐瀉物から感染する。ドイツの細菌学者ロベルト・コッホによってコレラ菌が発見されたのはこの後1884年であり、当時は病原体不明の病であるが、1831年には英国でジョン・スノーが感染者の調査から経口感染可能性を指摘、1848年には感染マップから汚染水源の特定に至り感染拡大の封じ込めに成功しており、既に感染対策は知られていた。なお史実の日本では丁度この頃に九州方面から感染が広がっている。
ハンス・ギールケ
ドイツの解剖学者(1847-1886)。1877年に東京医学校(後の東京帝国大学医学部)解剖学教師。この世界では、解剖学は少なからず屍者利用技術と関連しているものと思われる。
シャム
タイ王国の、アユタヤー王朝自体の国名。
トルーマン・ヘンリー・サフォード
米国の天文学者(1836-1901)。幼少期は圧倒的な計算能力で神童として知られた。米国に現存する最古の天文台、ウィリアムズ大学ホプキンス天文台の所長を務めた。
ダニエル・マッカートニー
盲目の計算者(1817-1887)。多数桁の計算能力と共に、瞬時のカレンダー計算で知られる。
ゼラー・コルバーン
米国出身の計算者(1804-1839)。就学前は精神薄弱と思われたが、九九を憶えると多数桁同士の掛け算を瞬時にこなし、また複雑な計算にも対応した。29歳で結核により死去。
ジョージ・パーカー・ビッダー
英国の建築家(1806-1878)。幼少期より計算者として知られ、建築家となった後も設計図面を一瞥しただけで数字の間違いを指摘するなど、その能力は高く評価された。

IV

フィラリア
吸血昆虫を媒介とする寄生性の線虫。リンパ管あるいは血管中で増殖、抹消血管に移動して吸血昆虫の口吻に侵入、再び口吻を介して体内に侵入する。
特異的な脳炎
日本脳炎かと思われるが、実際には極東に特異的ということはなく東南アジア全域に見られるので、別の何かがあるのか、あるいはヨーロッパから見て東南アジア方面は全体に「極東地方」なのか。
新聞記事だけを頼りに推理を述べる探偵
無論これは後のシャーロック・ホームズがしばしばそのようなスタイルを取ることを暗喩するものだが、スタイルとしての安楽椅子探偵はエドガー・アラン・ポオ発表の「マリー・ロジェの謎」(1843年)にまで遡る。
イスラムスーフィー
イスラム教神秘主義修行者。裾の広がった服を纏い1時間以上も連続で回転し続ける「旋回舞踏」により神へと至る境地を目指し、古くイスラム教を意味した「回教」の呼び名はこれに由来する。
大北電信会社
1869年デンマークで創業、1871年には日本で最初の国際通信回線となる上海〜長崎〜ウラジオストク間の海底ケーブルを敷設。1883年には呼子〜釜山間の海底電信線も敷設し、その後長く日本の国際通信事業を独占した。