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銃声とダイヤモンド

PSPの「交渉ゲーム」である。物語ジャンル的にはミステリ、もっと言えばトリック系ではなくハードボイルド寄りというかクライムミステリということになるだろうか。

銃声とダイヤモンド

銃声とダイヤモンド

主人公はフリーの交渉人として警視庁と契約し、交渉専門の部署……の「準備室」として総監直々に設立した「ゼロ課」の一員となって現場での交渉に赴く。
そうは言っても日常的に犯人との交渉が必要になるような状況などそうそう多発するものでもなく、仕事がないのでひとまず他課の手伝いとして「ストーカー被害者の話を聞く」ところから始まるのだが、いつの間にか話は二転三転……


全体の構成としては概ねノベルゲームで、「読むだけ」部分の比率は高い。ゲーム部分は各章の交渉パートのみとなるが、全体的にシナリオが巧みで緊迫感を以て話に引き込んでくるので退屈を感じることはない。また文章はほぼ会話のみで構成されるため、静止画と文章ながら実質的にはドラマを見るように進む。
直面する事件は明確で迷うところもない……筈が、次々に当初予想を覆すような新事実が判明してゆく。


交渉はこのゲームの肝となるシステムだが、やることは「会話の合間に示される選択肢を選んでボタンを押す」だけ。ただし交渉はリアルタイムに進行し、押すタイミングも見えない選択肢として影響する。例えば「話を遮られるのが嫌い」な人の発言中に選択肢を選ぶと相手を怒らせてしまうし、選ばずにいると選択肢が消え「選ばなかった」という選択に分岐する。シナリオそのものは全6話(各話に5回前後の交渉パートあり)ながら交渉失敗によるエンディングパターンは80近くに及ぶ。
事前の捜査で重要なキーワードを拾っておくと、交渉前のプロファイリングで会話の方向性についてアドヴァイスが得られる。「この犯人はこういう話題に敏感だから避けた方がいい」「こういうスタンスで積極的に話を進めろ」とか。それに従って一部の選択肢に「ポジティヴ」「ネガティヴ」のマークが付き、正解ルートを見付け易くなる。その意味で、実は交渉だけがゲームパートというわけではなく、捜査及び推理に重要な意味がある。


中心となるゼロ課だけで5人、その他警察関係者で8人ほど、他に各話で事件関係者十数人が登場するが、きちんとキャラが立っており「区別が付かない」「行動に一貫性がない」といったことがない。ストーリー全体が各人の思惑によって不自然なく描かれ、話の都合だけで動かされるようなこともなく、文章力の面でも構成力の面でもシナリオライターの高い能力を伺わせる。
写実的な3Dモデリングのセルシェーダで描かれたグラフィックは地味の一言であり一見すると魅力に欠けるように思われるが、キャラの性格が見えてくると途端に愛らしくなってくるから不思議。特に小山田警視正と鯨岡警部のコンビは見るたびに笑いを誘う。


少々気になる点を指摘するならば、終盤は交渉パートがあまりにデッドリーで、「たった一つの正解ルートを探る」ような感じになってしまう。4話までは「一応目的は果たしたが真相を掴めない」アナザーエンディングルート(クリア済となって次の話には進む)が存在するため交渉の結果に「今イチだけど成功」が存在するが、5話以降は失敗が許されない。しかしノベルゲームだけに選択肢から相手の反応を予測するのはほとんど不可能で、結果として総当たり的な解法を取らざるを得ない。幸いにして失敗した交渉は即時交渉パートからやり直せるし、既読文はスキップ可能なのでそれほどのストレスはないが。


総じて非常に満足感の高いゲームだった。