一人で養育可能な人数は

こんな報道があった。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100424k0000m010117000c.html
554人と養子縁組し、ちゃんと面会や送金している事実を裏付ける書類を揃えての申請。現行制度に於いて、そのような方法で養育の事実を認定すると表明しているのであれば、(それらが真であるかの審査は必要であるにせよ)きちんと支給されるべきだろう。


それはともかく、実際のところ一人で「養育」可能な人数ってどれくらいだろう。というか、どの程度の関わりを以て「養育」と認定すべきだろうか。


普通に親元で養育している場合、面会もなにも概ね毎日顔を合わせている筈だ。まあ実際には生活時間帯が合わないとか家主(主に家計を支える人)が単身赴任でほとんど自宅に帰ってないといった事例はあるだろう。今回問題になっているケースでも、子供は国外にいて……というか親だけが日本にいるパターンであり単身赴任の事例にあてはまる。
さて、単身赴任ではそう頻繁に帰ることもできないので、月に1日程度の帰宅といった事例が珍しくないようだ。海外赴任となればもっと頻度が少ないとしても不思議はない。便宜的に、養育認定に必要な面会頻度を一月あたり一人3時間以上の面会(ただし半年程度をまとめて行なうことも可)と定義しよう。これならば海外赴任なども含めて概ね大多数のケースで条件が満たされるのではなかろうか。


さて、そうすると554人というのは明らかに過大だ。一月分の面会だけで185日、まあ1回の面会につき預けている子供数人まとめて会うこともあるとして1/3で計算しても2ヶ月。
逆に何人ぐらいなら条件を満たせるかと考えると、1日あたり(子供の生活も考慮すると)最大で3組の面会が限界だろうから、2日を面会に費し1組あたり3人を預けているのだとしても18人。多少の幅を見て、まあ精々20人ぐらいが養育の限界と言えるのではないかと思う。


20人分の子ども手当で合計52万円/月。支給要件のひとつである「送金の事実」が全額を要件としているかどうかは知らないが、それこそ社会通念に照らして少なくとも7割程度は送金せねば納得は得られまい*1。それで35万を送金したとして手元に17万。面会のための交通費が福岡-釜山間の最安で往復1万円程度かかるので16万、また送金には少なくない手数料もかかるので6組も送金すると更に1万ぐらい消費する。残り15万。「碌に働かずに手取り15万」と考えれば多いのかも知れないが、少なくとも日本で一月を暮らす収入としては少ない。
まったくの詐欺であって養子など存在せず送金も行なわず全額を収入とするのだとしても、書類の偽造に費す手間とコスト、及びリスクを勘案すると決して濡れ手に粟とは言えず、いずれにせよ悪用可能性がゼロとまでは言えないが心配するほど大きくもないように思われる。


とは見積もってみたものの、実際に存在した最多養育事例は何人ぐらいだったんだろう……などと疑問を覚えたので検索してみたら、18世紀ロシアに生涯27回計69人出産という事例が。20人で切るのは適当ではないかも。

*1:ここでは受給金額に対する割合を問題にしているが、考えようによっては送金を受けた側での養育にかかる費用が満たせればそれ以上は不要とも言える。大幅に対円相場の異なる国への送金であれば、例えば一割未満でも充分に過ぎて大半が手取りとなっても不思議はないかも知れない。それはそれで「送金先の相場を勘案せよ」といった主張も聞かれるが、ここでは割愛する