ロールプレイを支援しないシステム

ボードゲーム的なリソース管理システムを考えているうち気付いたことだが、どうやら私はロールプレイを支援するシステムに否定的らしい。
実のところリソース管理型のゲームというのは過去にも複数の事例があり、例えばその顕著な例のひとつが初代「天羅万象」だったりするのだが、私はこのゲームが酷く苦手であるためすっかり意識から抜け落ちていた。


天羅の基本的なシステムというのは大体下記のようなものだ(記憶だけで書いているので誤認あればご指摘頂きたい)。

  1. PCはそれぞれに(主としてトラウマから成る)行動原理「因縁」を持つ
  2. 因縁に即したロールプレイを行なうことで「気合い」を溜めることができる
  3. 気合いを消費することで能力のブーストアップやダイス数の追加などの効果を得る
  4. 消費した気合いは業となり蓄積する。業が上限値(初期は108)以上蓄積すると修羅に堕ちる(キャラクターロスト)
  5. 新たな因縁を「購入」することで業を消費できるが、代わりに「宿業」が蓄積。宿業は業の上限値を下げる

というような形で、ロールプレイによってリソースを集め、また長期的にはそれを別の形へと転嫁して不利益を防ぎ、かつそのこと自体が新たなロールプレイや新たな「冒険の目的」となる設計であった。
実に巧い処理だと思う。当時しばしば指摘のあった「PCが冒険に出る動機が薄い」「プレイ中にサイコロ振る以外にやることがない」などの、まあ不慣れプレイヤーが陥りがちな不活性状態をシステム上の制限によって強制的に引っ張り出してみせる。
が、それが同時に「大きなお世話」にもなってしまうという諸刃の剣を、デザイナーは意識しただろうか。
「このキャラにはこういう行動を取らせるとゲーム的に有利だが、自分としてはこの行動パターンに納得が行かないのでそうしたくない」大々的にロールプレイを支援してしまうということは、逆にロールプレイを伴わない選択を否定することでもある。


リソース管理型RPGは、単にリソースを増やしてみせるだけでは意味がない。その扱いをどうロールプレイと絡めて行くかというアプローチを考えねばならない。が、私としてはできればこれらのルールがロールプレイを強要するものであって欲しくない。そこは純粋にゲーム的であるべきだと考えている。
元々RPGというのは、唯の戦闘ゲームであったものに発生した状況に応じたロールプレイを被せたものであった筈だ。そういう観点から見るなら、ロールプレイは後付けの要素であって本質ではないとも言える。
必要なリソースを入手するためにロールプレイするのではなく、必要なリソースを入手するために選択したアクションという結果を後からロールプレイとして説明する、それくらいで丁度良いのではないだろうか。