ライラの冒険 黄金の羅針盤

一言で評価すれば「これはひどい」。
粗筋だけのストーリー。魅力のない登場人物。唯一の見所は映像美のみ。
半額で借りてきて尚、損したと感じてしまう。
いやもう、いっそこれほど見所のない作品を作れることに感動すら憶える。


これまでハリー・ポッターを駄作と断じてきたのだけれど、ちょっと見直した。あれは多分原作がそもそも「恵まれた子供が恵まれた素質だけで世を渡る」ような代物であっただけで、映画としては最大限の努力が払われていた。独自の設定を自然に理解させ、原作の筋を追いながらもメリハリを忘れず、きちんと盛り上げてみせる。
正しくプロの仕事であった。


ライラの場合、原作は結構面白かったとの評もあるようで、なるほど(例によって恵まれた素質のみで渡っているようではあるものの)なかなかに波乱に富んだ冒険譚であるらしい片鱗は伺える。しかしストーリーの方は本当に上っ面を撫でたのみで、例えば登場人物らがそのような行動に出た理由が語られることはないし、事象に連続性もない。その結果、前節で描写された状況Aと次節で語られる状況Bに様々な矛盾があるように感じられてしまう-----例えば、主人公を捕えた一族が崇拝の対象としているらしい種族に、次節では普通に攻撃を仕掛けていたり。


大々的な前宣伝にも関らず興行的には大コケだったようで、配給会社は倒産してしまったらしいが、まあ無理もない。そもそもこのプロットで企画を通すほうがどうかしている。
唯一その手腕を発揮したCG技術者は、たとえこれによって失業したとしてもすぐ職を見付けられるだろう。それ以外の無能者が露頭に迷うのはもう自業自得というか……