個人の意志と集団の意志

id:jkondo氏は元々「検索に適応できない人のために」人力検索を作るところから事業をスタートさせているわけで、当初から「技術強者以外へ向けたサーヴィス」を指向している。続くアンテナやダイアリーはいずれもWebヘヴィユーザ向けに思えるが、それらは既にフリーウェアとしてリリースされていたものを「自力で設置しなくても使える」ようにしたのだと考えれば、実は技術弱者向けだったと言えるのではないだろうか。ただ、自らが技術指向の面もあったこと、ベータテスト段階で入ってくるユーザがほとんど技術的興味を中心にしていることからヘヴィユーザ向けに先鋭化してしまったのが、むしろ迷走だったのかも知れない。


とは言え、既にはてなの存在はWebヘヴィユーザを中心に成立している。従って会社としてはその強みを最大限に活かす方向へ特化するのが適正であり、裾野を拡げるのは悪くないが路線を乗り換えるわけには行かなくなっている。この辺に、創業者の思惑と実際の状況との乖離がある。
ただ、氏の指向性が間違っているとは思わない。既に外部へ多大な誤解を与えているように、先鋭化の先にあるのはそれこそ「蛸壺」状態であり、外部と遮断された閉鎖的空間である。それは世界(を目指す)企業としては望ましくない。何らかの形で、両者を併存させねばなるまい。


強固なコミュニティは強みでもあり弱みでもある。サーヴィスが発展するにはコアユーザによる濃密なコミュニティが必須だ*1が、そこから拡がるには初心者が入り込める程度に密度を薄める必要が出る。SNSが急速に発展を遂げたのは、ユーザの接触範囲を制限することで両要素を適度に維持できたからだ。ユーザ別にごく密接な交友関係を提示しつつ、コミュとしてゆるやかな関係性も同時に維持する。
はてなが目指すべきもその辺りにあるのではないかと考えている。はてブのように「全ユーザが一度に押し寄せて怖い」状態から、周辺3ステップぐらいの距離だけを可視化して見せる「適度な密度のスモールワールド」へ。
はてなスターのスターフレンド制は、そうした緩やかな連帯を築く光芒にも思える……が、如何せん利用割合が低すぎる。
はてなとしてはユーザへのランク付けを避けているようだが、Googleページランク式にユーザランク方式での評価を導入して、ランク±1ぐらいの範囲にユーザの可視範囲を限定してみてはどうだろうか。
価値観の違いが揉め事に占める割合は低くない。極端に常識の異なる層を一箇所に置かないというのは、この点を解決する可能性があるのではないかと思う-----それが良いことか悪いことかは別にしても。

*1:これを獲得できなかったサーヴィスは寂れてしまう