Shadeといえば純国産3Dモデラであり、また初心者に手の出し易い低価格路線により大きなシェアを獲得したツールであるが、Web上での評価は芳しくない。
悪評の一部はバグに起因するものである。他の3D系ツールをよく知らないので比較して酷いのかどうかは知らないのだが、致命的なほどの表示の乱れやクラッシュなど、確かに「使いものにならない」と言えるほどに発症する場合があるようだ*1。
また多くの不具合や機能改善要求がマイナーアップデートで改善せずメジャーヴァージョンアップに持ち越されるのも不満の一因だろう*2。
しかし、どうももう半分はShadeに原因のある評価でもないように思われる。
Shadeは元々Macで動作する*3スプライン系のモデラであり、ポリゴン系モデラとはそもそも構造が異なる。本来これらは一長一短であって「どちらが優れている」といった類いの代物ではない。
しかし世の趨勢はポリゴン系にあり、ために新機能もポリゴンでの実装を中心に発明が進む傾向にある。結果としてShadeは3D制作環境としてはやや遅れてしまった。
そこで一大決心としてWinへの移植と、アニメーション機能及びポリゴン編集機能の強化に着手したわけだが、その結果として先代に比べ機能が強化されたと評価される代わりに他のツールと比較してまだ弱いという評価になってしまった。つまり、それまでは「特色」と見做されていた部分が、他のツールと同じ土俵に上がったことにより「弱点」に転じてしまったのだ。
例えばポリゴン系ツールの多くはスプラインでのモデリング機能を搭載していない*4。それに対してShadeは強力なスプライン編集と、やや劣るもののポリゴン編集の両機能を有しているわけだが、比較にあたってはスプラインの存在はまったく無視されてポリゴン編集機能のみで比較されてしまう。
また複数の形状を合成して複雑な形状を作成するブール演算機能についても、Shadeは形状を変更せずレンダリング結果だけに合成を適用する疑似ブーリアン機能を備える。これは元々ポリゴンでなければ処理困難な機能に対する代替実装ではあるのだが、疑似ゆえの強み*5も持ち、単なる劣化版機能ではない。が実際に評価を受けることは少ない。
Winへの対応にせよポリゴン強化にせよ、シェア獲得や制作効率の向上に寄与しておりそれ自体は悪い判断ではない。しかし結果としては、それが評価基準を変化させてしまい悪評に繋がってもいる。良かったのか悪かったのか。