TRPGのリソース

ボードゲームの一種としてTRPGを眺めるに、TRPGにはコントロール可能なリソースがほとんどない。


ゲームは終始キャラクターというトークン(通常は1プレイヤーあたり1個の)を通して行なわれる。このトークンには様々なパラメータが付与されており、他のゲームではちょっと考えられぬほど行動の幅が広いのだが、最終的に行動はランダムに成否を処理されるのが常で、それは固定値を基準に判定されるので、プレイヤーが考えるべきことは「相手のどの値に自分のどの値をぶつけるのが最も効率良いか」に集約されてしまう。
行動の結果として一部リソースが変動(ほとんどの場合では減少)することがあるが、これはあくまで結果としてもたらされたものであってプレイヤーのコントロール下にはない。他のゲームのように「手元のリソースを消費してアクションを起こす」「後のために節約しておく」といった概念に欠ける。
システムによっては限定的ながらコントロール可能なリソースを持つものもある。経験値を消費してダイスロールを修正するものや、マジックポイントを消費して魔法をかける場合などである。しかしそれらの多くは初期値からの減少のみで、プレイ中に消費リソースを増加させる手段が用意されているものは非常に少ない。


この辺りの単純さが、TRPGのゲーム性の限界となっているように感じる。未だTRPGの中心的処理である戦闘に於いてさえ、ディレンマを感じさせる要素はほとんどない。例えば攻撃と防御へのバランスを振り分けて成功度を大きく修正するとか、受けと回避で異なる利点・欠点を持たせるとか、そうした少々の工夫でも結構違ってくるように思うのだが。


生身での戦闘じゃなくメカものにすると多重リソース管理ゲームが設計し易いかも知れない。「戦術コンピュータの演算処理能力をどの行動に振り分けるか」とか「エンジンの出力を移動・射撃・格闘に振り分け」とか。

コントロール可能なリソースを持つゲームの例

バトルテック

これ自体はRPGじゃないし、厳密にはリソースじゃないけど。
移動や武器使用で熱が発生、放熱器の許容量まで排熱する。溜めると不利な修正やアクシデントに繋がるので、「どこまでなら無理がきくか」を考えながら行動を管理してゆく。
また、地形や移動、距離に応じた修正値が一目瞭然なシステムなので、いかにして「自分の方がやや有利」な状況を作るよう移動するかに全てが掛かってくるゲームでもある。実にタクティカル。

深淵

システムはやや大雑把な感もあるが、ダメージを手札から適用したり手札の数字を達成値に加えることで状況をある程度コントロールできる。また寿命を削って修正を得るルールあり。

Beyond Roads to Lord

魔法的な力に触れることでマジックイメージを得、これらを組み合わせて魔法を編む。
ただしイメージの組み合わせ方にルールはないので共通認識に拠るところが大きく、ゲーム性は低い。

トーキョーN◎VA

手札で判定するので、要らない手札を回して終盤の活躍に備え手を揃えることができる。
また1スートで発動可能な複数のスキルを組み合わせることが可能で、予めコンボを組んでおくなどシステマティックなプレイスタイル。