思考停止

しこう-ていし【思考停止】考えることを放棄すること。またその状態。


無論、誉め言葉ではない。知的に劣ることを示すもので、ある種の罵倒とも言える。ただし莫迦や阿呆などの言葉がいずれも知能そのものを劣悪と謗る言葉であるのに対し、思考停止は(普段は鋭い思索の主であっても)状態としての一時的/部分的な思考の放棄を非難/嘲笑/或いは嘆く言葉と言える。
面白いことに、この言葉を論争中の両陣が同時に用いることがある。とりわけ、科学とニセ科学の対話に顕著である。


例示しよう。
偽「霊は存在する。しかし現代の科学では証明できない」
科「"現代科学では認知不能だが存在する"という可能性を全面的に否定するものではないが、あらゆる傍証から存在可能性そのものが極めて低いと判断できる」
偽「そうやって、まだ証明できないものを否定するのは思考停止であり、科学の発展を阻害する」
科「検討した上で否認されたことだが。むしろ何でも"まだ証明できないだけ"で逃げるほうが余程思考停止だろ」


もし科学側が最初から「霊?そんなもの偽に来まってるだろ」という態度で検証せず否定しているなら、まだ思考停止の謗りも理解できる(但し、科学としてはあくまで「新しいことを主張する人が自説を証明せねばならない」ので、この場合では霊の存在を主張する側がそれを証明する根拠を示し、かつ第三者によって検証されて初めて但しいと認められるのだが)。しかしこの例では、彼らは自説を単に「現代では証明できない」としたのみであり、また存在可能性を検証の上で否定的な見解を出した科学サイドを「否定するのは思考停止」と謗る。実際のところ、これは単に「俺の思いつきを否定するな」と言っているだけだ。


例が偏っているように思える?でもこれ、実話なんだよね。