少子化対策としてのベーシック・インカム

ベーシック・インカムでは全国民に等しく給付金を支払うので、当然ながら人数の多い家族ほど多くの金を受け取る。例えば一人あたま5万円*1だとして、独身なら5万円、夫婦なら10万円、4人家族なら20万円を受け取ることになる。
一般に生活費というのは人数が増えるほどコストパフォーマンスが上がる傾向がある。一人で生活したって光熱費なんかは発生するが、これが4〜5人になったところで金額はさほど増えない。食費にしても、まとめて作った方が安い。家賃だって、多分人数に比例して直線的に伸びはしない。
対して、給与というのはもっと伸び率が低い。入社したての新入社員でも15万(手取り)ぐらい貰えるとして、結婚して子供が生まれても扶養手当て込みで20万ちょっと。4人家族ならベーシック・インカム適用時には働いても働かなくても手取り金額は同じくらいだ。


現状では家族を養うに充分な収入を得るのが難しいとして子供を作らない夫婦が増加、夫婦一組当たりの子供の数は2を下回る。国民2人から新たな国民1人しか生まれないようでは、そのうちどんどん人数が減ってしまうのは自明だ。
現在の制度を保ったまま可能な少子化対策があるとすれば、出産費用への保険適用や子供に対する助成金の増量ぐらいのものだろう。「どの程度補助が増えたら子供を作る気になるのか」についての調査を知らないが、月あたり5千円〜1万円程度では焼け石に水だとは思う。けれど月5万円増えるとなれば話は違う。


ベーシック・インカム下では、それで一応の生活が可能でなければならない。5万円で家賃、光熱費、食費をすべて賄うのはかなり困難だと思う。結婚して10万円でつつましく暮らすとしても、出産費用までは貯金できない。だから少子化対策としては、医療費は全部国費持ち/出産費用にもこれを適用、ぐらいのことをしなければなるまい。
それが現在の予算枠に比べて無理のない範囲で可能なのかどうか、小飼氏のように試算することはできないが、少なくとも少子化対策という点に関してだけ言えば、これ以上に効果的な施策はまずないんじゃないかと思う。