陰謀論の原因

陰謀論の大半が軍がらみであるのは、軍の持つ特質としての秘密主義に原因がありそうだ。
軍は作戦行動を有利にするため、敵に極力情報を与えないようにする傾向がある。そのため国内に対しても、様々な情報を開示せずにいる。たとえば兵器の仕様や研究中の新技術、あるいは立案された作戦などは基本的にすべて機密情報である。
これは外部から見ると様々な想像の余地を生み出すことになる-----平たく言えば、「知られていないけど、秘密裏に」と言えば何でもアリというわけだ。
軍の研究と雖もこと科学分野に関しては市井のそれと大差ないということが意外に理解されていないようだ。


軍による研究の目的は常に、「将来的に役立つ兵器製造技術」に絞られる。これは科学というよりもむしろ工学的分野であり、科学理論面で先端を行くわけではない*1
基礎研究なしに応用分野の発展はない。軍の技術とて世に知られた科学の先を行くものではないのだ。


また、人材面でも突出しているとは言えない。世界大戦期の独裁国家ならいざ知らず、今の世の中で各大学がこぞって軍事目的の研究を進めるとは思えないし、仮に資金面や設備面で優位性があるとしても、研究成果を公表できない軍の秘密研究というのは研究者にとっては魅力に乏しい存在だ*2。実際に軍事的研究を推し進めているのは軍属の研究者というより軍事メーカーの研究員だろう。


最新兵器の中には、従来の用兵概念を覆すような新技術が含まれていることがあるかも知れない。しかしそれはあくまで「軍事的な常識の範疇を越えた」というだけのことで、科学の常識までも打ち破るものではない。光学迷彩は実用化にはほど遠いし、瞬時に高温を発生させる小型レーザー発振器もまったく期待できない。常温核融合反応も当面実現できそうにないし、純粋水爆なんて以ての外。


それはそれとして、世論操作を目的とした極秘作戦なども別方面から否定できるのだが、それはまたいずれ。

*1:例外はNASAぐらいのものか。ここは軍の管轄だが軍事目的からはかなり外れた所を扱う、数少ない純粋な学術研究組織である

*2:研究者にとって重要なモティヴェーションのひとつは学界に於ける名誉であると言える。成果を発表できないのでは研究の甲斐がない