来世利益の自殺防止機構

宗教には大雑把に分類して現世利益型と来世利益型がある*1
現世利益型は自分自身が利益を確認可能な確実性の故に人気が高いが、同時に利益のないことも確認できてしまうため長期的な加入が見込めない弱点がある。
対して来世利益型はやや敷居が高いものの、生涯信仰が保証される利点がある。但しその特性上、そのままでは安易な自殺による来世への移行を防ぐことができず、信者数は減少する一方である。よって、何らかの自殺防止機構を組込まねばならない。


「信じる者は救われる」型布教モデルの仏教では、主に現世での苦行を担保とした来世利益保証型を取る。これは現世で長く苦しむほどに来世での幸福が上積みされるシステムで、苦痛を期待に変換する役割を担う。この方式では同時に、現世での善行を奨励し上積み保証することでモラルを維持する意味も持っている。
仏教とて抑圧の歴史を持たぬではないが、世界宗教にしては穏やかな方だ。


キリスト教系列も来世利益の変種(天国保証と救世主復活時の再生保証)だが、こちらは自殺を罪と位置付けることで抑止するシステムだ。即ち自死した者は天国保証も再生保証も受けられないとする但し書きによってこれを禁止するもので、恐怖による抑圧を利用している。布教モデルとしても「信じぬ者は地獄逝き」型であり、恐怖利用の点では徹底したものだ。FUDモデルの先駆者と言える。


ところでFUD構造を持つキリスト教が世界一の宗教となり、FUDを積極的に活用したマイクロソフトが世界的シェアを握るというのは面白いもので、FUDという宣伝手法の優位性を物語っているようでもある。話が逸れたが。

*1:利益無保証型も存在し得るが信仰の獲得は困難だろう。そうした宗教の存在を寡聞にして知らない