最古の神々

某所にて最古の神の名を問う質問があったので色々調べてみる。
最古、というのが神話内で他の神に先駆けて発生した存在を示すならば、各神話体系内の創世神がそれに該当しよう。しかし総ての神話をひっくるめて最古となると難しい。
記録に残る限りでは、文字の発明者シュメールの神々が最古(B.C.3500)ということになる(名前としてはこの辺で妥協するしかなさそうだ)。が、それはあくまで記録上の「最古」であって、それ以前に神が存在しなかったわけではないのは明らかだろう。
神の成立がどれぐらいまで遡れるかについてははっきりしない。ヨーロッパではB.C.7千年前頃の神殿遺構と見られるものが発見されているが、これが神を奉じるものである保証はない。少なくともB.C.1万5千〜8千年前のラスコーやアルミタラの洞窟壁画などには神の姿は描かれていないから、この頃には信仰形態として神がイメージされていなかったと考えることができる。するとこの中間あたり、1万年前あたりからだろうか。


初期の信仰形態が太陽などの現象や巨木・巨石など特殊な物体、もしくは祖霊や万物霊の崇拝であっただろうことは想像に難くないが、この時点ではまだ「神」と呼べる形態を取っていなかったであろうと予想される。なにを以て神の出現とするかは難しいところだが、概ね人格化の瞬間を神の発生と定義するのが妥当だろう*1
私見ながら、初めて神を想起した瞬間とは、「世界は/人はいかにして発生したか」を考えたときではなかったか。「ただそこに在る」状態から、「それ以前」を想念したとき、すべてを超越する「神」の存在が必然として浮かび上がる。
とするならば、最初の神は創世神であっただろうと、それは万物霊を崇める原始宗教とは一線を画した「目に見えぬ存在」であるからして必ずやそれと交信するための寄り処として神殿または偶像のようなものが作られたのではないかと思われる。
その最も原始的な形は人の似姿として描かれたものに違いないが、真に残念ながらその痕跡は未だ発見されていない。


尚、書物に記録された限りで最古の神は、この宇宙の創始より存在する外なる宇宙の神「沸騰する混沌の核」Azathothに他ならないので念のため。

*1:この点で動物崇拝などでは最初から人格化されている可能性があるが、神として扱われていたわけではなく飽くまで「強力な一個体」以上のものではなかったと考えたい