惑星の定義

既に大手新聞などでも大々的に報じられているようだが、国際天文学連合総会にて惑星の定義(原案)が公開された
これまで漠然と「デカいから惑星」程度で認定されてきた惑星の基準が揺らいだのは、最後に発見された「惑星」である冥王星の外側に、それより大きな天体が次々と発見されたからである。これらはエッジワース=カイパー帯と呼ばれる天体密集領域に存在し、海王星以内の惑星と違って公転軌道の離心率が高い(=太陽を中心としたほぼ円形の軌道ではなく長楕円軌道を巡る)、軌道傾斜角が大きい(=太陽の自転軸と天体の公転軸の角度に大きな差がある)などの共通した特徴を持ち、またしばしば他の惑星とは逆行した軌道を持つ(海王星以内の惑星と違い、後から太陽の重力圏に引き寄せられた結果と考えられる)。冥王星は明らかにこれらの特徴(軌道傾斜角17度、逆行軌道など)を持ち、その上海王星以内の惑星より遥かに小さい(最小の惑星と比較しても1/10以下、それどころか月より小さい-----もっとも、これは月が例外的に母星に較べ大きな衛星だということでもあるのだが)。
そんなわけで、端的に言えば「冥王星を惑星から除外するか、カイパーベルト天体も惑星に迎えるか」という二択を迫られた天文学会であったが、どうやら冥王星の除名は無理(一度登録したものを今更抹消でみないという面子の問題か、既に惑星扱いされて久しいという慣例の問題か。一説には、冥王星の発見が惑星では唯一アメリカ人によるものであったためとも)ということで、冥王星を惑星認定しつつそれより大きな月を惑星にしない方法として今回の定義が作られたわけである。


具体的には、

  1. 重力平衡によりほぼ球形を形成する程度の質量を持つ
  2. 恒星の重力圏にありその周囲を公転する
    1. 恒星ではない
    2. 衛星でもない
      • 衛星は「惑星との共通重心が惑星内にある天体」と定義される

ものを惑星とし、また

  • 惑星のうち、ほぼ円形の公転軌道を持ち軌道傾斜角が小さい、1900年以前に発見されていたものを「古典惑星Classical Planets」
  • 冥王星に代表される離心率と軌道傾斜角の大きい軌道を持つものを「冥王星族Plutons」
  • 小惑星帯にあって唯一惑星の要件を満たすセレスは「矮小惑星Dwarf Planet

と呼ぶことを提案している。
「ほぼ球形」あたりが微妙に議論の余地を遺しそうな気もする(実際、候補天体の中に扁平な長球体があるのだが、これはどうするのか)が、少なくともこれまでの「慣例」以外に定義のない状態よりは遥かに明瞭とは言える。


ところで冥王星のすぐ近くにはカロンという天体がある。これは従来冥王星の衛星とされていたが、主星の半分程度の直径を持ち、(地球に対する月がそうであるように)互いに同じ面を向けて公転(これはお互いが相手の重力に囚われていることを示す)し、その共通重心が2星の間にある(冥王星内部に重心が位置しない)ため、衛星ではないとされた。従って冥王星-カロン系は二重惑星となる。
ということは、惑星の順序として唱えられてきた「水金地火木土天海冥」は今後「水金地火木土天海(冥王星系)火星と木星の間にある小惑星セレスが惑星扱いになったので水金地火セ木土天海(冥王星族)であった。なんとも収まりが悪い。」となり、この部分に新惑星が次々に入ってくることになる。まるで元素周期表の終端部分のようだ。