軍備と核武装

http://ameblo.jp/syamo0001/entry-10014491258.html……という、中々に香ばしいネタが投下されたので食い付いてみる。
まず、

日本も再軍備しないとそろそろ危ないと思います!。
そのために一番目にやることは「核武装」です!。

再軍備」などせずとも、既に結構な軍備を保有しているのだが。
各国の軍と比較してみよう。

兵員数 主な兵力 軍事費(対GDP比)
日本(自衛隊) 239,430人 (2005年現在) 陸自:戦車約600、海自:艦艇152隻、空自:主要航空機474機 1%
イギリス軍 約190,000人 (2005年現在) 陸軍:主力戦車389/主要装甲車667、海軍:主要艦艇47隻、空軍:主要航空機940機 2.7%
ドイツ軍 徴兵制のため不明 陸軍:主力戦車約450?、海軍:主要艦艇27隻?、空軍:主力戦闘機270機? 1.2%
フランス軍 約300,000人 (2005年現在) 陸軍:主力戦車約400、海軍:主要艦艇37隻、空軍:主要航空機550機 2.6%
韓国軍 約820,000人 陸軍:戦車2300/装甲車2400/野砲5000、海軍:水上艦180隻/潜水艦10隻、空軍:航空機900/ヘリ600 2.5%

この方面にはあまり明るくないので、Wikipediaを中心に数字を拾った*1。不明分は随時補足する。
こうして見ると、常に敵国と隣接する韓国軍には数で劣るものの、他国と比較してそう引けを取る規模ではないと言える。
また、通常戦力による侵攻よりも核攻撃を心配している風だが、彼の国が他国を直接攻撃可能な形で核武装を整えるのは随分先になりそうだし、仮に攻撃するならその対象が日本である可能性はそう大きいものではないと予想される。何故なら、他にも敵が多いからだ。
というわけで、まず前提条件からしておかしいと思うのだが、そこで終えては突っ込み甲斐がない。敢えて無視して核武装へと話を進めよう。


それほど意外なことでもないと思うが、日本はとうに核武装可能なだけの技術と資産を持ち併せている。そもそも核爆弾は、第二次対戦においてすら実現可能だった技術であり、臨界制御技術を商用レヴェルまで落し込んだ日本に技術的課題は少ない。あるとすれば実際に臨界実験を行ったことがないという点だけだろう。

核兵器を製造するには高濃度のウランやプルトニウムという核燃料が必要です。
しかし日本国内でウランなぞあるわけがありません!。

いや、あの。
原子力発電の燃料はウラン235なんですが。
もっとも、核兵器に適しているのはむしろウラン238なので、この点はスルーしよう。

プルトニウムを製造するには原子炉が必要です。
しかーし。


日本の原子力発電所の80%は「軽水炉」による原子炉を使用しています。
軽水炉とは単純に水を冷却材に使っている原子炉です。


この軽水炉プルトニウムの発生量が少ないのです。
アメリカが日本に自主的に核爆弾を開発できないように「軽水炉」の技術しか教えなかったんですね。
軽水炉で軍事転用は非常に難しいのです。


プルトニウムを大目に生産する原子炉がどうしても必要です。
細かいことははぶきますがマグノックス炉か高速増殖炉が必要になります。

プルトニウム保有量については日本のプルトニウム保有量 | 一般社団法人 原子燃料政策研究会の資料によると国内全体で5,000kgを越える。マグノックス炉がプルトニウム発生量の多いタイプかどうかは良く知らないが、既に充分量を保有しているのは明らかだ。ついでに言うと、マグノックス炉は国内でも東海発電所などで稼動している。新たに建設する必要はない。

プルトニウムの単価は1kg辺り684万円から798万円です。(勝手な推定)
核爆弾を製造するのに必要な核燃料は10kgなら8000万円はかかりますね。
製造コストに関して資料が少ないためにプラス5000万円で原子爆弾が完成したとしましょうか。
(ほんまわかりません 一発一億と思ってもらってかまいません)

他国の核兵器配備コストについては私も知らないが、1発1億なら安いものだろう。

これはほんとうに爆発するんでしょうね?。

実際のところ、米国ですら弾頭製造時にそれぞれ臨界実験しているとは考え難い。
そもそも核物質は一定密度を越えて存在すると勝手に臨界に達する。東海村では特段の装置を用意せずともバケツの中で臨界状態が発生したのは記憶に新しい。
初期の原爆ではスポンジ状の核物質を爆発により圧縮して臨界状態を作るという簡素な構造をしていた。爆発させるのは難しくない。むしろ爆発しないよう管理することこそ核兵器のノウハウと言えよう。

中距離弾道ミサイルの価格は3500億円なんだそうです。
大陸間弾道ミサイルはその数倍の費用がかかります。
弾道ミサイルの配備は相当の年月が必要です。
3年はかかるでしょうね。

日本は既に成熟したロケット技術を保有しており、技術の半分はクリアしている。足りないのは大気圏再突入技術のみだが、これに関しても現在独自に実験中であり、数年のうちに実用化の域に達するだろう。
金額については、大型のH-IIAロケットが1回の打ち上げで80億〜90億円。これは使い捨てなので、製造及び発射のコストを含むと見て良い。再突入のための構造に別途コストがかかるとしても、3500億までは達しないものと考えられる。
また、日本の仮想敵国は近隣にあるので、現在のところ大陸間弾道ミサイルを必要とするとは思えない。極端な話、大気圏離脱→再突入する弾道弾である必要すらないかも知れない。
巡航ミサイルとて技術がないことに変わりはないが、配備コストは幾分安そうだ。

ひとこと

核武装の妥当性云々はこの際どうでも良いが、このように反証がちょっと調べた程度でぼろぼろ出てくるというのは、ちょっと検証が甘すぎる。
これでは単なる思い付きの域を出ない。この手の話題を書くなら、多少なりと裏付けとなる情報源に当たるべきではないだろうか。

*1:自衛隊の戦車保有数にはいささか旧式化した74式を相当数含む。また韓国陸軍についても旧式装備を含むが比率不明のため全数記載した