暇を持て余した邪神たちの遊び

ゲーム界はなかなかのクトゥルフブームである。ボードゲームに於いても、商業・同人問わず多数のタイトルが発売されている。
そうしたクトゥルフもののボードゲームを集めてみた。これ以外にも多数あると思うが、とりあえず知る限りの、日本語版が入手可能なものをリストアップしたつもりだ。

商業出版

アーカム・ホラー

アーカムホラー 完全日本語版

アーカムホラー 完全日本語版

プレイ人数:1〜8人
クトゥルフもののボードゲームといえば、まず真っ先に名の上がる作品。実はこれはリメイク版で、原型は30年以上前、日本では1988年にホビージャパンから発売されていた。ただし中身はほとんど別物といって良い。
タイトル通り、アーカムの町を舞台として怪異に立ち向かい、世界の破滅を食い止めようとするゲームである。
多量のカード、フィギュアにトークンと密度の高いコンポーネント。説明書も雰囲気良く作り込まれている。ただ、その分だけ全体に処理が煩雑でルールが把握しにくく、プレイ時間は長い(およそ人数×1時間)。
毎ターンどこかに開くゲートから神話怪物が這い出し、これに対処しつつゲートの封印を目指すわけだが、ひたすらイヴェントカードを引いては指示に従って判定をこなしてゆく感じのゲームになる。
基本的にイヴェント・ドリヴンなシステムなのでゲーム的な要素は薄い。半ばTRPG的に楽しむのがいいかも知れない。

エルドリッチ・ホラー

エルドリッチホラー 完全日本語版

エルドリッチホラー 完全日本語版

プレイ人数:1〜8人
アーカム・ホラーの舞台を世界に広げ、よりヒロイックなノリに改変したゲーム。鬱々とした町の中で必死に怪異を食い止めるゲームから、世界を股にかけ邪神復活を狙う秘密教団と渡り合うゲームへと雰囲気は変わったが、イヴェント・ドリヴンで長時間ゲーなのは相変わらずである。

エルダーサイン

エルダーサイン改訂2版 完全日本語版

エルダーサイン改訂2版 完全日本語版

プレイ人数:1〜8人
アーカム・ホラーシリーズを簡素化した新シリーズ。ボードがなくなりカードを並べるだけになったので必要面積も少なくなり、成長要素がないので展開が早まり1〜2時間程度で遊べるようになった。
イヴェントはカードドローではなく事前公開されたものからのチョイスになり、キャラの能力特性に応じた分担ができるなど以前のものよりもゲーム的になっている。
コンポーネントの雰囲気作り込みは相変わらずだがTRPGめいた要素は少なくなっており、前作までのファンには好みが分かれるところかも知れない。

マンション・オブ・マッドネス

マンション・オブ・マッドネス 完全日本語版

マンション・オブ・マッドネス 完全日本語版

プレイ人数:ゲームマスター1人+プレイヤー1〜4人
呪わしき館を探索するゲーム。シナリオに従い館パネルを並べ替え、様々な展開を楽しむことができる。限りなくTRPGめいたボードゲームである。
多数のフィギュアも付属する重厚なコンポーネントは所有満足感もかなり高いが重量・体積ともなかなかヘヴィである。
1シナリオあたり3時間前後、5シナリオが付属しているが追加シナリオも別売されている。

パンデミッククトゥルフの呼び声

プレイ人数:2〜4人
最新の注目作。世界中に感染拡大してゆく伝染病との戦いを再現した協力型ゲーム「パンデミック」のシステムを生かしてクトゥルフものにリメイク。
これまでに挙げたクトゥルフボードゲームの中ではいちばんゲーム的なゲームで、物語的なイヴェントは限定的にしか発生しないのでちょっと物足りなさを感じる面もあるかも知れないが、徐々に悪化してゆく状況と戦いながら事態の収束を目指すカタルシスは大変面白い。
ややあっさりした作りの分だけ短時間で遊ぶことができ、人数に関わらず1時間程度で終了する。

キングスポート・フェスティバル

プレイ人数:3~5人
王国の発展を競う「キングスブルグ」のリメイク作。アーカムの東にある漁港キングスポートを舞台に、プレイヤーは旧支配者を崇める邪教の教祖として神に祈りを捧げることで(正気度を削りつつ)神の力を得、探索者たちの妨害を排除しながら勢力を拡大してゆく。プレイ時間90分程度。

翠色の習作

翠色の習作 完全日本語版

翠色の習作 完全日本語版

プレイ人数:2〜5人
Neil Gaimanの同名の短編小説を元にしたゲームで、クトゥルフとホームズを合わせた世界になっている。とはいえそれらしき要素は名称のみで特段の能力などはなく、ゲームとしては正体隠匿系の派閥戦。各都市にエージェントを送り込み、その都市の支配権を得たプレイヤーはカードを獲得できるというエリアマジョリティ+デッキ構築でもあり、欲張りな仕様が仇となってイマイチわかりにくい感じがある。
日本語版は二版を元にしており緑色のボードに各都市が整然と並び中央に勢力ゲージがあるのだが、盤の雰囲気は初版の方が好み。

ラブクラフト・レター

ラブクラフト・レター

ラブクラフト・レター

プレイ人数:2〜6人
「たった16枚のカードで遊ぶカードゲーム」として作られた同人ゲーム「ラブレター」をクトゥルフものにリメイクしたもの。元は4人までだったがカード枚数を増やし6人までに対応した。タイトルはもちろんラブレターと手紙魔だったラブクラフトをかけたものだ。
手札は常に1枚、新しく引いたらどちらかを使いどちらかを残す。カードの効果で他プレイヤーを脱落させ生き残るのが目的だが、本作には「狂気」カードが混入している。狂気カードは通常の正気なカードよりも効果が強いが、ひとたび使用してしまえば以降毎ターン「SANチェック」が要求され、失敗すれば即ドロップアウトとなる。
プレイは1回5分程度と極めて手軽。

クトゥルフ・レルムズ

クトゥルフ・レルムズ 完全日本語版

クトゥルフ・レルムズ 完全日本語版

プレイ人数:2〜4人
直接攻撃アリのデッキ構築ゲーム。5枚の手札で呪文ポイントを使ってカードを入手しデッキを強化しつつ、ダメージカードで相手の正気度を削ってゆく。
コミカルタッチのイラストであまりダークな雰囲気はない。

クトゥルフ フラックス

クトゥルフの呼び声 フラックス

クトゥルフの呼び声 フラックス

プレイ人数:2~6人
「出したカードによってゲームのルールが上書きされてゆく」フラックスをクトゥルフモチーフにアレンジしたもの。作品名が勝利条件を決める「ゴールカード」になり、作品に関係するアイテムが勝利の鍵になったりするが、カードデザインは白地にデフォルメされたイラストが描かれたものでホラーめいた雰囲気は皆無。元々パーティゲーム的なものなので、あまりおどろおどろしく遊ぶものではない。

カード・オブ・クトゥルフ

カードゲーム カード・オブ・クトゥルフ

カードゲーム カード・オブ・クトゥルフ

プレイ人数:1(〜4)人
協力型としても遊べるが基本的には一人用。毎ターンめくられるカードが自分の手元や教団に配置されてゆくので、いずれかの教団が6枚にならぬよう戦力を削りながら山札をすべて引ききるまで耐える。
簡素なコンポーネントだが、金属製のコインはちょっといい感じ。

クトゥルフ・ダイス

ダイスゲーム クトゥルフ・ダイス 日本語版

ダイスゲーム クトゥルフ・ダイス 日本語版

ブリスターパックに専用ダイスとトークンが入っただけのシンプルなコンポーネント。開封後の保管に困る。
ゲーム内容も極めてシンプルで、攻撃対象を一人指定しダイスを振って、出目に応じて正気度トークンを奪う、それだけ。

クトゥルフ・ライジング

クトゥルフ・ライジング

クトゥルフ・ライジング

プレイ人数:2人
いちおうクトゥルフ神話モチーフということにはなっているがゲーム内容とはまったく無関係で、単に「邪神の教団」vs「探索者」という設定以上のものは何もない。5x5の2つのボードに数字タイルを交互に配置してゆき、1列5枚での役によって得点を競うだけのゲーム。

ミ=ゴの脳みそハント!

ミ=ゴの脳みそハント!

ミ=ゴの脳みそハント!

プレイ人数:2~5人
3つの山札からカードを引いて、「同じ知力の脳を集める」というゲーム。何枚引いてもいいが「探索者」が出たらすべてを失うバースト系。コミカルタッチのバカゲー

同人ゲーム

ロスト・テイルズ・オブ・クトゥルフダンウィッチ

ロスト・テイルズ・オブ・クトゥルフ:ダンウィッチ | GAME JAMBOREE |『ゲームマーケット』公式サイト
プレイ人数:3~4人
ラブクラフト・レターと同じくラブレター派生作品。こちらはラブレターから派生した「ロストレガシー」のライセンスに準拠している。
手札が1枚、1枚引いてどちらか使うという流れは全く同様で、カードの効果とそれに伴う推量や駆け引きのパターンが異なる。わりと派手な印象のラブクラフト・レターに対し陰鬱な「ダンウィッチの怪」らしい雰囲気が出ている。

邪神がこの中にいる!

邪神がこの中にいる! | AHC/居眠りの街 |『ゲームマーケット』公式サイト
プレイ人数:4~8人
ある種の正体隠匿系。他人の正気度を調査しつつアイテムをやり取りしてゆくが、装備によって正気度が上下し、「最も狂気の度合いが高かった者」が邪神となり他プレイヤーと対決することになる。

フラムルルイエ

フラムルルイエ
プレイ人数:3~5人
変則的なバッティング入札カードゲーム。得点カードを親だけが確認し、それを獲得するための数字カードを手札から出す。子は親のカードから得点を類推して獲得するか降りるかを決め、単独で一番大きな数字のプレイヤーがそれを得る……が、獲得に使用した数字カードは失点となるので、総合得点をプラスにするのはかなり難しい。
しかも「全員が得点マイナスだった」場合は邪神復活により得失点が逆転し、最もマイナスの大きなプレイヤーの勝利となる。
元は「魔法少女まどか☆マギカ」をモチーフにしたカードゲーム「見滝原は狭すぎて」だったもののリメイク。

テケリ・リ

テケリ・リ - さとーふぁみりあ
得点カードを取得しつつ失点カードを押し付ける、変則的なトリックテイキング。