マヤ遺跡天文対応説とはなんだったのか

初手から胡散臭い話ではあった。
societas.blog.jp
普通に考えれば、素人の少年が専門家に勝る発見をする可能性はたいへん低い。
普通に考えれば、星座と都市が結び付くはずがない。
だいたい、「遺跡のある場所を線で結ぶと意味のある形に」なんて話、オカルト誌でしか見たことない。

中身を読んで胡散臭さは確信になった。

「マヤ暦で2012年に世界の終りが予言されている」という逸話を知ったことをきっかけに中米の古代文明に興味を持ち

そもそも発端からしてオカルトであるが、まあそこは単にきっかけであるから目を瞑るとして、

ある仮説を立てて独自に「研究」を行っていた。その仮説とは、マヤ文明の古代都市が星座の並びを模して配置されているというもの

それは仮説ではなく思い付きというのではないか。
まあ根拠のない思い付きが発端であったとしても、きちんと検証を踏んで仮説と言えるまでに至ることはあるだろう。

「なぜマヤ文明の都市は川から離れた山奥の不便な場所に造られたのか?」と疑問を持ち、上述の仮説を思いついた

なぜその疑問からこんな「仮説」に至るのかがよくわからない。間に入るべき段階をいくつもすっ飛ばしてないか。

マヤのGISをダウンロードして地図上にプロットし、その地図に現地から見ることのできる範囲の星図を重ね合わせてみた

とあるが、実際に彼が描いたらしきものを見ると実際に重ねたのは星図=「空のどの位置に星があるかを示すマップ」ではなく星座=「小数の目立つ星を繋ぐ線」のようだ。
たとえばUne cité maya découverte par un ado grâce aux étoiles ? - Libérationにいくつかの画像があるが、
http://md1.libe.com/photo/874916-william-gadoury-constellations-mayas-expose-orion.jpg?modified_at=1462805251&width=750
オリオン座のうち3つの星を遺跡の位置に(だいたい)合わせているだけで、目立つ三つ星などはスルーだ。
他の画像から見ても、実際の天体位置とは無関係に複数の星座を地図の上に重ねている。もしマヤ文明が、「わざわざ不便な場所に都市を作る」ほど天文に強いこだわりを持っていたとしたら、そんな適当なやり方をしただろうか?
http://md1.libe.com/photo/874913-william-gadoury-constellations-mayas-expose.jpg?modified_at=1462803980&width=750

そもそも、これはマヤの星座ではなく、我々の知るギリシア時代からの西欧式な星座に過ぎない。
マヤ考古学者に拠れば、


というわけで、目立って輝く星を無視するようなことはなかっただろうけども、少なくとも星のまとまりを我々の感覚とは全く違った目で見ていただろうことは確実だ。

つまるところ、

マヤ文明の117の都市が実際の星の並びと一致していた

というのは


というネタと大差ない。もちろんこれはそれっぽい図形を描ける位置のコメダだけを拾い上げて線で繋いだだけで位置が合わないものは華麗にスルーされているわけで、マヤ遺跡と星の並びについても

しかしこの話は、更に続く。

Gadoury君は、当時のマヤ文明の星座では重要とされていた星に対応する都市がまだ見つかっていないことに気づいた。それは現在のオリオン座に相当する部分の星だった。Gadoury君はこの発見をカナダ宇宙庁に報告し、NASAJAXAの撮影した画像を提供してもらった。もし仮説の通りなら、メキシコのユカタン半島に未発見の古代都市が存在するはずだ

そもそも「星の位置に合わせた」という仮説自体が極めて疑わしいのだが、それはそれとして「偶然その位置に遺跡があった」可能性はなくもない、のかもしれない。

衛星画像を拡大して調査した結果、86メートルのピラミッドと数十の家屋からなる新たな都市が発見された

偶然の発見というにはずいぶん大きな話だ。
報道誌面から映像を拾ってみよう。たとえばDaylyMail紙では、
http://i.dailymail.co.uk/i/pix/2016/05/10/10/340122DD00000578-0-image-a-14_1462872045042.jpg
http://i.dailymail.co.uk/i/pix/2016/05/10/10/340122E400000578-0-image-a-15_1462872452470.jpg
それぞれ「大きなピラミッド」と「都市」なのだというが、これを見る限りでは単に「盛り上がった何か」でしかなく、86メートルのピラミッドだの数十の家屋だのはまったく見えない。
「何かがある」と「遺跡がある」ではまったく話が違ってくるし、前述の具体的な遺跡構成の描写を見る限りでは「現地調査で実際に遺跡を発見した」ぐらいの印象を受けるが、それにしては各記事ともイメージ映像として有名なマヤ遺跡の写真を掲載してはいても「実際に見付かった遺跡の写真」は1枚も出てこない。
じゃあこの「発見された何か」は一体なんなんだ、というと

というわけで、あらゆる方面から見てこの話は極めて疑わしい、というかまあ「ない」だろうという結論になるわけだが、それはそれとして「じゃあ一体この"86メートルのピラミッドと数十の家屋からなる都市"てのはなんだったの」という点が気になっている。
各報道は孫引きされる過程で色々な誤解を含んでいるものとして、一次情報に近いニュースソースとなっているのは恐らくカナダの大衆紙ジャーナル・デ・モントリオールではないかと思われる。この中で既に、

Pyramide de 86 mètres(86メートルのピラミッド)
Superficie totale de 80 à 120 km carrés(80〜120km四方の方形)
Localisation: 17 ° Nord 90 ° Ouest(北緯17度、東経90度の位置)
Réseau important d’allées et de rues(路地や通りの大規模なネットワーク)
30 structures visibles de l’espace(30の建物に見える空間)
4e plus importante cité maya(マヤ遺跡の中で4番目に大きな規模)
(※文意は機械翻訳をベースとした私の理解なので、誤読可能性がある)

と書かれており、より具体的な都市の描写が見られる。この大衆紙が脚色したのでなければ、少年を含む「研究グループ」の発表時点で既に話が盛られていたのだろうか。
我々に確認可能なのはGoogleMapからの衛星画像程度で、もしかしたらNASAJAXAが提供したらしき画像の中にはもうちょっと鮮明に「何かが見える」ものがあったのかも知れないが、それこそ元画像が公開されるべきところであろう。

それにしても、出立点から明らかに間違った「仮説」に3年を捧げてしまった少年が哀れという他ない。誰かそれを止めてやれる見識の持ち主が周囲にいなかったのだろうか……

カルドセプト リボルトをスタートダッシュする

カルドセプト ダイレクトが配信され色々な情報が明らかになった。と同時に7/7の発売を前に「あらかじめダウンロード」予約購入がスタート、予約者はスタートダッシュVer.(という名の先行体験版)がダウンロードできる。
早速予約してスタートダッシュしたので、その感想などを交じえてリボルトの変化についてまとめてみたい。

速度

リボルトで一番重視されたポイントと思われるのが「1戦あたりにかかる時間」だろう。以前から「時間がかかるので尻込みする」といった話はよく聞かれたので、リボルトは発表当初から「スピーディ」を謳っていた。
実際にやってみると、たしかに時間がかなり短縮されているように感じられる。これは恐らく表示のチューニングとゲームシステムの変更の2本立てによる改善だろう。
表示のチューニングは、たとえば戦闘のアニメーションにかかる時間を見ると実感できる。
www.youtube.com
こちらは前作の戦闘シーン。手慣れたプレイヤー同士のためカード選択も一瞬で、一方しかアイテムを使用しなかったため能力発揮エフェクトが合計4回、これで4分40秒→5分10秒の約30秒。
www.youtube.com
対する新作の戦闘、カード選びに少々手間取り、双方がアイテムを使用しエフェクトが計6回、8分23秒→8分45秒で22秒。およそ2/3の時間で完了している。
戦闘だけでなく、全体にアニメーションが高速化している。これによって1手番にかかる時間そのものが減っているだけでなく、体感的にもスピーディな印象がある。

また、ゲーム展開も早くなった。これは主に「ダイスが2Dになった」「魔力制限が緩和された」「領地コマンドが使いやすくなった」ことによるところが大きいだろう。
0-5の2Dなので期待値は5歩(ただし00は12扱いなので5.33歩)となり、1-6の3.5歩よりも移動が早くなった。初期マップの距離は前作のデュナン村が1辺4マス+城=砦の18マスだったのに対し1辺5マス+2ゲートの22に増えているが、1周にかかるターン数は平均5.14から4.13に短縮されており、明らかに周回が早い。
その上、毎ターン開始時に少額ながら収入がある(初期は20だが経過ターン数が加算される)ので、各ターンに使える予算も多い。前作では初期200+砦ボーナス100の合計300を5ターンで分配するとして1ターンあたり60程度だったが、今作では初期150+砦ボーナス100の250を4ターンで、その上毎ターン20以上の追加があるので、1ターンあたり84ほどになる。
一番重要なのは、総魔力を押し上げる要である「土地のレベルアップ」を含めた領地コマンドが、常に全領地に対して使えるということ。召喚したばかりの時や一度使った後は「ダウン」状態となり周回まで使えなくなるが、計画的なレベルアップが容易になった。
しかも(これはもしかしたら初期マップだけという可能性もあるが)土地の基本価値が100→80になっているため、レベルアップに要するコストも低い。まあその代わりにLv1単領地の占領ではほとんど魔力資産が増加しなくなるので、積極的に連領を形成しレベルアップする必要があるということでもあるが。
誤認があったので追記。土地の価値自体は変わらず100で、レベルアップに要するコストがその80%になったのだった。ということは、今までは単領だと投資魔力=増加魔力で増えなかったものが、単領でも(投資魔力の25%ではあるが)魔力増加するようになったわけだ。安くレベルップできる上に総魔力が増えやすい仕様変更である。

戦術の変化

任意の領地にコマンドを使用できるというのは劇的な変化で、たとえば現在地から離れた場所へマジックボルトを撃ち込んで空き地を作り、隣のクリーチャを移動させて占領、というムーブが1手で可能になるし、あるいはホーリーワードかけて踏む場所を指定した上でそこのレベルを上げる、などといったことも確実にできる。これまでとは違った意味で、激しい攻防が展開されるわけだ。
これにより従来ではほとんど活用されることのなかった、他プレイヤーの妨害用としてのホーリーワードが、にわかに危険なカードと化した。
ついでに、ドローを付けてなお利用率の低かった回復スペルが「ダウンの回復」付きになったことで重要度を増した。召喚したばかりのクリーチャーを即時レベル上げしたり、移動侵略後すぐに置き換えたりといったことが可能になる。

ダイスが2Dになったということは従来のように出目が一様に分布しておらず「5」を中心に出やすさが偏るということ。つまり「次に相手が踏みそうな」エリアを狙って上げておく、というような戦術も地味ながらそれなりに有効だろうと思われる。
面白いのはホーリーワードとフライの問題。呪い効果であるホーリーワードに対し瞬間効果であるフライは併用可能だが、その場合の出目がどうなるのか調べたところ、「ホーリーワードが2Dの合計値を固定し、フライが3D化=ホーリーワードの指定値+1D」進めるようだ。

また、カルドセプト独特の「手札の扱い」も変化した。枚数オーバー時もすぐに破棄させられるのではなくターン終了時までは保持できるし、なにより「相手の手札を憶えておく」必要がほとんどなくなった:いつでも下画面をタッチすれば確認できるので、これからは「自分が攻め込む前に相手のカードを確認する」「手番プレイヤーのカードを確認しておいて備える」になるだろう。副次的に、「戦闘に入ってからカード選びに悩む」ことも少なくなると思われるので、その分だけ戦闘の時間も短縮できる。

自分好みに育てる特殊なクリーチャーカードが登場したが、公開されている範囲の情報のみから察する限りではHPやSTを育てることはできても特殊な能力を持ったりはしないように思われる。まあ単に非公開なだけで実際には能力を追加するパーツも用意されているのかも知れないが、それでも先制や再生など定型的な能力だけではないだろうか。あまり戦術に大きく作用する要素ではなさそうな気がする。

ストーリーなど

ほんの序盤しかプレイできないためなんとも言えないが、物語としてはほとんど進まない段階で3マップが公開されたので、全体を通してそこそこのボリュームになりそうな気がする。シナリオが充実していたサーガぐらいのボリュームになるんだろうか。
珍しくCERO Bなのはシナリオが暗めの展開っぽいことによるのか、それともキャラのデザイン故か。ヒュプノおねえさんエッチです。
今までは「あくまでプレイヤーの分身」であり無口を貫いてきた主人公が、はっきりとした性格と背景設定を持つ別人になったのには違和感がないでもないが、まあ対戦時のアヴァターは変更可能なのだから気にすることはない。
それよりも今回一番の衝撃は「セプターて死ぬとあんな風になるんですか……」じゃないかな。このあたり設定を知りたい。