屍者の帝国

伊藤計劃の遺した屍者の帝国

劇場版アニメの評価が、賛否両論著しい。「原作たる円城塔版から改変された部分」もさることながら、「伊藤計劃自身の書いた冒頭を削ぎ落とした」として批判が少なくないようだ。 元より伊藤の遺した冒頭部分とプロットとも言えぬメモ程度から書き起こされた…

日出処の屍者

屍者労働社会に於ける目下の問題は、社会の高齢化である。 労働力として重宝されるのは若く壮健な肉体だが、自然死は当然ながら老齢のものが多く、それらは肉体機能が低下した状態で提供される。かといって、若い肉体であっても事故死では肉体の損壊著しくま…

劇場版を見る前におさらいする屍者の帝国

「原作未読で今から読める気がしないけど映画を見に行こうと思ってるので勘所だけ押さえた解説が欲しい」人のための、あるいは「原作未読で映画観たんだけどよくわからないところが色々あるので簡単な説明が欲しい」人のための、ちょっとした記事を書いてみ…

屍者の帝国 劇場版を原作と比較して

劇場版「屍者の帝国」を観てきた。 多数の史実虚構を織り交ぜ、数ヶ国を横断して繰り広げられる複雑で壮大な物語を2時間に落とし込むという難題によく応えた作品だが、そのために削り落とされてしまった部分が多いのは、致し方ないこととはいえ理解を難しく…

ハイチ革命に於ける独自屍者技術の介在可能性について

1791年から1804年にかけて、フランス及びスペイン領であったイスパニョーラ島に於いて発生した、所謂ハイチ革命は、最終的には黒人奴隷による独立を以て終焉した。 総数こそ島民に分があったとはいえ、当時ヨーロッパ随一の精強を誇ったフランス軍が碌な武装…

ゾンビと倫理

伊藤計劃×円城塔「屍者の帝国」を読み終えた。 屍者の帝国作者: 伊藤計劃,円城塔出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/08/24メディア: 単行本購入: 43人 クリック: 1,717回この商品を含むブログ (158件) を見る 夭折した伊藤計劃の遺作、わずか30ペー…

屍者の帝国 用語集 目次

屍者の帝国作者: 伊藤計劃,円城塔出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/08/24メディア: 単行本購入: 39人 クリック: 1,325回この商品を含むブログ (80件) を見る 「屍者の帝国」には実に沢山の情報が詰め込まれている。史実だけでなく、他のフィクショ…

屍者の帝国 用語集X

→目次 第三部 VI ロンドン塔 テムズ川岸に建つ古城。最初に建てられた城閣部分がタワーと呼ばれていたため、増築後も全体を指して「タワー」と称するが、語の意味に反して塔ではなく城である。→全体図 ホワイト・タワー 最初に建築された3階建ての城閣。13世…

屍者の帝国 用語集IX

→目次 第三部 I ポール・バニヤン 米国の入植者間のほら話に登場する樵夫の巨人。靴の中に溜まった砂をぶちまければ山脈ができ、水をひっくり返せば大河ができる。青い巨牛ベイブを引き連れている。 ウィリアム・シュワード・バロウズ 米国の発明家、起業家(…

屍者の帝国 用語集VIII

→目次 第二部 V ファルケンシュタイン城 バイエルン国王ルートヴィヒII世が構想した山頂の宮殿。史実では資金難から道を整備したのみに留まり、その後国王自身の死により未完のままとなったが、本作世界では王は死んでおらず宮殿は完成しているようだ。これ…

屍者の帝国 用語集VII

→目次 第二部 I ショーグネイト 「幕府」という、将軍=軍事指導者を最高権力者とした封建体制は世界的に見て極めて異例のものであり、一言で表し難いこの政治体制を英語では「将軍制」とでもいうべき、Shogunateという造語で表わす。 ハリー・パークス 駐日…

屍者の帝国 用語集VI

→目次 第一部 VIII ロバート・ウォルトン 英国で1818年に組織された2つの北極探検隊のうち、極点到達を目指した隊の船長。衰弱したヴィクター・フランケンシュタイン博士を発見、姉に宛てた手紙に会話の内容を書き残している。 バヴァリア インゴルシュタッ…

屍者の帝国 用語集V

→目次 第一部 VI 界 博物学上の最上位分類。18世紀にリンネが体系化した時点では動物、植物、鉱物の3界であった。もっとも、ここではルビが振られているように、多分に「王国」の意味を被せており、相の入れ替わりを中央アジアの政治情勢の入れ替わりなどに…

屍者の帝国 用語集IV

→目次 第一部 IV フローレンス:ナイチンゲール 看護教育の推進者、医療衛生の改革者、英国に於ける統計学の先駆者。国内の病院を調査し看護婦に対する専門教育の必要性を訴え、またクリミア戦争に従軍し兵舎病院の不衛生に伴う死亡率の高さを改善。統計手法…

屍者の帝国 用語集III

→目次 第一部 II カタコンベ 地下墓地。元は初期キリスト教に於いてローマからの迫害を逃れる目的で地下に空洞を作り、礼拝や埋葬を行なっていたのが始まりという。 辺獄 死後の世界のうち、「地獄の周辺」をいう。キリスト教の正式な教義には含まれないが、…

屍者の帝国 用語集II

→目次 第一部 I Rebooting… フライデーの汎用ケンブリッジ・エンジンと拡張エディンバラ言語エンジンの起動。 ラジャバイ時計塔 1874年に開校したばかりのボンベイ大学(現ムンバイ大学)図書館入口に付随する時計塔。英国の建築家ジョージ・ギルバート・スコ…

屍者の帝国 用語集I

ネタバレになるので、ひとまず既に発表済の伊藤計劃遺稿分のみ。 →目次 プロローグ I ウェストコート 三つ揃えのスーツに於いて上着の下に着る袖なしのベスト。→Google:画像:ウェストコート ウェイクフィールド 英人名だが、1878年当時に20歳前後となる著…