大宮 中山道まつり:氷川神社例大祭

埼玉県は「見るところのない県」だと言われる。なにしろ関東平野のど真ん中、東京の北側全体にわたり境を接する位置にあり、西部を除き起伏のほとんどない平坦な土地柄である。それゆえベッドタウンとしての価値、が突出し、およそ独自の面白みというものを持たない。とりわけ大宮は、北日本へ向かう新幹線の分岐点であり13もの路線を抱える巨大駅を持ちながら、駅周辺の僅かな範囲以外にはほとんど人が向かわない、単なる通過地点なのだ。

しかしそんな埼玉県が、かつて重要な地であった時代もあった──1500年かそこら昔の話だが、当時最新の軍事技術である鉄剣に最新の文化知識である漢字を刻み、金で象嵌した国宝・金錯銘鉄剣が出土したこともある。
その時代に作られた神社が、大宮の地にある。関東にのみ広がる氷川信仰の総本山であり、この神社の存在こそが大宮という地名の由来である。縁起によれば存在の疑われる先史八代天皇の時代に作られたものといわれるが、その真偽の程はさておき我が国の文字文化よりも古い時代のものであることは間違いない。
そういう由緒正しい大社の例大祭が行なわれたので、撮りに行ってみた。
といっても神事が執り行われるのは平日の日中なので、撮ったのは夕方の山車と神輿の行列だ。

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山車は全部で5台。宮町、大門町仲町、下町、吉敷町である。
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宮町の山車は三輪スタイル。この時は獅子舞が乗っていた。
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大門町も三輪で、外周に寄付内容が貼られている。この写真ではわからないが小槌を持っていたようなので、大黒天か何かなのだろうか。
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仲町の山車は四輪で、ひょっとこが舞っていた。「神武天皇」と書かれた立て板との関連性はよくわからない。
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下町の四輪山車にはおかめ。仲町のと対なんだろうか。
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吉敷町にもおかめが。ただし演者は男性だった。
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山車の列に続いて、各町の高張提灯を持ったスカウトや手古舞、木遣りの行列が続く。
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最後に神輿行列。
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街中も祭の装い。アーケードには普段ない提灯が。
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家の軒先にも下がっている。
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到着したのは17時半、駅前の大通りを封鎖して会場とし、盆踊りの行列が舞っていた。
暗くなるまでには間があるので、ちょっと2kmほど離れた氷川神社まで足を伸ばした。
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参道はおよそ2車線の車道ぐらいの幅があり、その両脇に樹木が並木をつくっている。
今回は大宮駅で降りたので二の鳥居から入ったが、起点となる一の鳥居はさいたま新都心駅の近くにあり、境内までおよそ2kmも続く。

三の鳥居をくぐると境内である。
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例大祭に於ける神事のためだろうか、斎竹が立てられていた。
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これは何の場なのだろうか。白黒の幕は忌事を想起させるが、神事では意味が異なるかもしれない。
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本殿へと通じる橋の前にも斎竹が。
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そろそろ日も暮れてきたので駅前に戻ると、青みはじめた空に提灯が灯っていた。
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街中を練り歩いた山車が大通りに集い、舞いを競う。
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ブルーアワーに提灯。
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関東有数の大社の例大祭であり、関東有数の都市の祭であるというのに、人出はそう多くない。いや勿論大勢が参加して賑やかではあるのだが、人混みで動けなくなるようなこともなく、撮りやすい祭だった。

そろそろ祭の場を離れ、日常へ戻ろう。
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目黒雅叙園 百段階段×和のあかり

目黒雅叙園といえば戦前から存在する高級料亭であり日本で最初の総合結婚式場でありホテルでもある、ええとつまり「高いところ」ぐらいの認識しかなかったわけだが、そんな場所で「和のあかり」というイルミネーションイベントを開催していると聞いて、カメラを持って遊びに行ってきた。
www.hotelgajoen-tokyo.com
JR目黒駅東口から急坂である行人坂を下り切ると、その左手にあるロータリーがもう目黒雅叙園の入口だ。

ギャラリーホール

ロビーを入ってすぐ左に百段階段見学の受付がある。ここでチケットを購入しても良いが、予め前売券を購入しておくと300円ばかり安くなる。
ホテル雅叙園東京【百段階段イベント】公式オンラインチケット|ご購入はこちら
なお、日・火・木曜日限定で17-18時に20人限定の撮影し放題プランがあり、他の客に邪魔されず存分に撮影できる……が、これに申し込むならば事前に一度通常コースで訪れて「ロケテ」を済ませておくことをおすすめしたい。

日本庭園

ロビー正面はガラスウォールで、その向こうに庭園が見える。

そちらも気になるのだが、さしあたっては来園目的であるところの百段階段を優先するため、ひとまずガラス越しに1枚だけに留める。

階段へのエレベーター

「百段階段」というのは、創業当時に建てられた木造の座敷棟群を結ぶ長階段のことだ。折り返すことなく直線的に続く階段に、七つの座敷が連なっている。
流石に90年ばかり昔の木造高層建築ともなると老朽化は避けられず、近隣の治水工事に伴い解体・移築され、現在はビル3階に入口がある。そのためロビーからは直通エレベーターで移動する……のだが、これがまた多数の客を一度に運べる広さの上に内部は漆塗りの如き黒艶塗装に螺鈿の壁画で装飾されているものだから、一瞬それがエレベーターであると理解できず、そういう部屋なのかと思ってしまった。

エレベーターを降りると、まずは「青森ねぶた」が出迎える。
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その後、靴を脱いで中へ。

百段階段

人ふたりがすれ違える程度の幅の木造階段が、ずっと奥へと続いている。

天井には扇絵が。
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左側には明かり取りの窓が、右には座敷への入口が並ぶ。
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まずは左手側唯一の入口を覗くと、現在は使用されていない当時のトイレが見える。無闇に広い……
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十畝の間

トイレの反対側には最初の入口、「十畝(じっぽ)の間」が。ここは青を背景に暖色の光が漏れる、竹あかりの間になっている。
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明かりだけでなく、天井画や欄間などの装飾も楽しみたい。
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漁樵の間

階段を上り、次は「漁樵(ぎょしょう)の間」。ここは長崎ランタンフェスティバルが催されている。
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ここは壁の装飾もよく見える。
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草丘の間

次の座敷は「草丘(そうきゅう)の間」。ここは唐傘と生け花がメイン。傘の方には、光を反射する板が敷かれている。
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静水の間・星光の間

「静水(せいすい)の間」は下の座敷よりも小振りで、大仕掛けの舞台演出ではなく多数の工芸品を展示している。
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静水の間と同じ階、風鈴が吊るされた廊下の奥側は「星光(せいこう)の間」。
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ここの目玉作品はなんといっても「錆和紙」の月ではないだろうか。
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金属粉を混ぜ込んで紙を漉き、それを錆びさせることで風合いを出しているのだそうだ。

清方の間

「清方(きよかた)の間」は格子天井に丸い天井画ではなく、竹を編んだ天井に扇絵だった。
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ここは主に動植物を象った明かりを展示している。
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頂上の間

「頂上(ちょうじょう)の間」、その名が示すように最上階に位置する座敷。本来なら窓からの眺めが楽しめる場所のようだが、今回は室内を暗くするために暗幕で覆われていた。
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雅叙園本館

百段階段を一通り楽しんだら、本館にも足を伸ばそう。
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ここのトイレはなかなか面白い。
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秘密の花園

横浜駅近くにある、バラを中心とした英国風庭園に行ってきた。
www.y-eg.jp
6月中はアジサイフェアと称して中央アーチトンネルに色とりどりのビニール傘やサンキャッチャーを吊り下げていると聞いたので、終わる前にと休暇を取って。
結論から言えば、凄い場所だった。傘はオマケで、花咲く庭園こそが本番である。軽い気持ちで訪れて写真撮りまくること3時間、花のある時期ならどの季節でも満足感が得られるのではないかと思う。

横浜駅から相鉄で一駅、平沼駅から歩いて10分。なんなら横浜駅地下南10番出口、りそな銀行前から1時間に1本の割合で無料送迎バスも出ている。
平日だというのにバスは行列ができており、立ち乗りの出る状況だったので、休日に訪れるならば歩いた方が早いかも知れない。

イングリッシュガーデンは大型住宅展示場の一角にある。造園請負の案内も出ており、つまりはセールスを兼ねてもいるのだろう。

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ゲートハウス前のパラソル&チェア
カフェ・レストラン・売店を兼ねたゲートハウスが入口になっている。ここではバラのソフトクリームやアジサイソーダ(オレンジ味に色とりどりのゼリー入り)などが味わえる。
庭園はバラを中心に構成されており、故に入場料はバラの開花状況により変動する。今の時期は盛りを過ぎているので700円だった。

ローズトンネル

入口からまっすぐ伸びるローズトンネルは、最盛期ならばバラの花で彩られるのだろう。今の時期はビニール傘やサンキャッチャーによって飾られ、それを撮る人たちで賑わっていた。
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花の迷宮

庭園内部は迷路のようになっている。多彩な園芸品種が混植された小径は、わざと見通しにくいように曲がりくねり、背の高い植物によって覆い隠されており、次々に味わいの異なる花々が現れて飽きさせない。
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秘密の花園

草花の陰にはいくつものベンチや東屋が隠されていて、ゆっくりと花を楽しむことができる。
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生き物たち

花の多い場所だけに虫も多い。チョウやハチの姿が多く見られた。
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鳥も飛んでくる。
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アジサイ

この時期に合わせてのことなのか、それとも元々そういう風に植えているのか、園内にはアジサイの花が溢れていた。
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これは「モナ・リザ」という品種。滲んだような差し色が面白い。
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注意点

  • 園内はわりと迷いやすい。曲がりくねって迷路のようであるだけでなく、狭い小径は一方通行指定されている箇所が多く、入口から出ることができないために出口に辿り着くまでに苦労するかもしれない。
  • 周囲が囲まれているためか、園内は風が弱く蒸し暑い。できれば扇ぐものがあると良いかも知れない。狭い小径が多いため、日傘などはやめた方が良い。
  • 撮影は自由だが自撮り棒や三脚は使用できないので注意。またペットについては、バッグなどに入れたままの状態でのみ入園可だそうだ。
  • 街灯はなく、日没を以て閉園だそうだ。今の時期は良いが日の短かい季節は注意。

余談

前日の準備中に突然、SDカードが1枚読み取れなくなってしまった。仕方ないので行きがけに横浜のヨドバシカメラへ寄ったのだが、バスの時刻が迫っており吟味する時間もなかったので、とりあえず8GBを1枚だけ買ったところ、私の倍を撮る妻の使い方ではたちまち容量オーバーになってしまった。
私が今まで容量オーバーしたことがなかったためにイマイチ感覚が掴めていなかったのだが、あとで調べたらRAW+JPGだと1枚あたり30MB前後になるので8GBでは300枚も撮れないのだった。よしわかった次からは最低32GBだ。

円形都市の謎

小説家になろう」発の異世界転生系小説「この素晴らしい世界に祝福を!」「盾の勇者の成り上がり」「賢者の孫」のアニメ作品で、登場する都市の形がそっくりだと話題になった。

「このすば」と「賢者の孫」についてはこれ以前にも「屋敷の外観がそっくり」と話題になっており、要するに同じ資料の使い回しなのだろうと考えられる。両者は美術監督が同一人物であるため、同じ画を元資料にしていても不思議ではない。
animanch.com

しかし「盾の勇者」の場合は少し事情が異なる。この作品は他の2本とはスタッフが共通していないため、同じ資料の融通ということは有り得まい。
もちろん、偶然にも同じ資料を元にしてしまうことは充分考えられる。作画資料として都合の良い、つまり「イメージにぴったりで、著作権的な問題のない」画像がそう多くないのであれば、同じ資料に行き当たってもなんの不思議もない。

ならば、どこかに「元になった街」があるはずだ。それを探してみよう。

円形の都市として名高いのはドイツのネルトリンゲンである。

ほぼ真円形をした防壁を有する中世の古都で、イメージにはぴったりだろう。
しかし一見してわかるように、ネルトリンゲンと上記作品の都市には大きな違いがある:川だ。
ネルトリンゲンは街の中を川が流れていない。

そもそもネルトリンゲンは、隕石クレーターによる天然の防壁を利用して作られた城塞都市である。そのため川を中心にしない形で都市が形成されており、この点でアニメのそれとは地形がまったく異なる。

では、「市街の中心を川が流れている古都」はあるだろうか。
すぐに思い付くのはテムズ川を擁するロンドン、セーヌ川の流れるパリ、モスクワ川流域のモスクワ、ドナウ川が貫くウィーン、ライン川に囲まれたケルンなどだ。水利は農業的にも運輸的にも重要な要素であったから古い都市が川沿いに築かれることは珍しいことではなく、候補はいくらもある。
が、その中で「円形の城壁を持つ都市」となると、ぐっと絞られてくる。

都市の形成には、「住みやすい場所に家が増えてゆき都市になってから防壁を構築する」場合と「都市を作りやすい場所を選んで計画的に構築する」場合とがある。
自然形成された都市の場合、地形に沿って野放図に拡がるため、市街域の形状は様々だ。川を含む都市の場合、そこが主要な輸送経路になることが多く、川に沿って居住区が伸びてゆく。
逆に計画的な都市形成の場合は、可能な限り整然と区画が構築され、街路も防壁も幾何学的に整理されがちだ。そういった都市では計画の妨げとなる河川を避けて平野に構築することが多い。あるいは川を天然の防御として用いる場合もあるが、その場合は岸に沿って防壁を形成するのが通例である。

もちろん、川を挟んで円形に拡がる都市が存在しないわけではない。たとえばモスクワやパリなどは、かつては比較的円に近い形状だったことが伺われる。
http://historic-cities.huji.ac.il/russia/moscow/maps/gottfried_1695_b.jpg
http://www.vidiani.com/maps/maps_of_europe/maps_of_france/paris/large_detailed_old_map_of_paris_city_1932.jpg

しかしそれらの都市は川の流れが明らかに一致しない。とりわけ「中心部が川の蛇行部に包み込まれるように形成されている」こと、また防壁の外では河川が大きな蛇行を見せていないことは特徴的で、主要都市ではそういった地形がアニメのそれと一致しない。

結局、様々に手を尽くしてモデルとなった都市の特定に努めたが、絞り込めないどころか可能性のある場所を見出すことさえ叶わなかった。
こうなってくると、可能性としては

  1. 専門のライブラリにでも当たればすぐに出てくるが、ネット検索では引っ掛からない情報
  2. 上述の都市をモデルにしているが改変を加えているためそのまま重なるわけではない
  3. アニメオリジナルの都市であってモデルとなった画像はなく、他作品がそれを剽窃している

のいずれか、ということになってきそうだ。
しかし2は「異なる作品で形状が完全に重なる」ことから否定される。独自の改変を加えて仕上げた結果であるならば、モデルとなった都市が同一であっても改変の違いにより全く異なった様相を生じるはずで、これほどに一致することは有り得ない。
3については、流石に他社作品をそれと知りつつ下敷きにすることは有り得まい。制作側がそこまで意識低いとは考えにくいし、たとえそうだとすれば放映時点ですぐにでも発覚して何らかの声明があるはずだ。
ということでまあ順当に1なのだろうが、だとすれば元画像は一体どれなのか。謎は何一つ解けぬままだ。

海獣の子供

色々な意味で「大変な映画」である。
https://www.kaijunokodomo.comwww.kaijunokodomo.com

原作者の五十嵐大介は、圧倒的な描写力の画風とスピリチュアルな世界観で知られる。その画風をそのままに動画に起こす試みについては、Studio 4℃の技術力が見事にそれを成し遂げた。まずはそのヴィジュアルに翻弄されよう。
俳優の演技も自然で、「誰が声を当てているか」という余計なことを思い起こさずにすっと耳を通る。
エンディングテーマを歌う米津玄師は原作のファンで、自ら売り込んだというだけあって見事に原作を踏まえた歌詞を乗せた。

あらゆる点で一流の仕事によって作られたこの映画の中でたった一つの、そして致命的な欠点が「脚本」である。

元々がコミックスにして5冊分の分量がある物語だから削ぎ落とさざるを得ない部分は出てくるし、一筋縄では行かない物語を噛み砕いて再構築する必要があるのは致し方ない。しかし作品の核を見誤ったままにそれをやると、落としてはいけない箇所を落とし、砕いてはいけないものを砕き、結果として元の形がなくなってしまう。
海獣の子供」は、正にそれをやってしまったのだ。

表面的には、素晴らしい技術に支えられて原作の形を見事に写し取ったように見える。実際、その迫力は素晴らしく、それだけに「なにか凄いものを見た」感動を覚え、傑作を見たような錯覚に陥る。しかしその内実は単なるハリボテであり、なまじ表面加工の技法に凝っているが故に名品に見えはするが、その中心には何もない。
賛否いずれの感想も口を揃えて「わからなかった」と言う。それは決して「難解な物語だから理解に時間がかかる」のではなく、単に「理解すべき内容がない」だけだ。逆に、これだけ中身のないものを、演出のみで何らかの感動を励起するまでに高めてみせた(脚本以外の)技術には敬意を表したい。

(以下、多少のネタバレを含む)

続きを読む

位置情報ゾンビゲー「The Walking Dead:Our World」

タイトルからもわかる通り、ゾンビ・アポカリプスものドラマ「ウォーキング・デッド」世界のサヴァイヴァーとして、地図上に表れる敵を狩るゲームである。
https://t.co/9SIwFv6Ql7t.co
言ってしまえばポケモンGOのゾンビ版みたいなものではあるが、なかなかに工夫されていて面白い。今ほかに位置情報ゲームをやっていなければ、おひとつ如何だろうか。

基本プレイ

基本的には「スタミナを消費して周辺に出現する敵を掃討する」だけのゲームである。
敵とはいうものの、こちらから攻撃しに行かない限りは何をするでもないので、放置しても害になるようなことはない。
マップ上に表示されるウォーカー(および光の柱)が各ミッションの位置を、立っているウォーカーの種類がそこに出現する敵の種類を、一定範囲内に近付くと表示されるアイコンがミッションの種類と強さ、それに「射程距離内である」ことを示している。アイコンの色が薄いものは現在の装備でも危険性が低いことを、濃いものは危険性が高いことを示し、右下の数字が強さのランクを示す。

戦闘は「画面上のタップした箇所に銃弾を撃ち込む」というシンプルな形式。武器によって連続発射可能な弾数が決まっていて、撃ち切ると数秒のリロードが発生する。武器の種類によって特定のウォーカーに対する効果が高く設定されているので、敵の種類に応じて使い分けることになる。
ミッションを解決すると何らかのリソースが得られる。遭遇戦「エンカウントバトル」ではカードが、連続3〜5回の戦闘をこなす「大発生」ではコイン(+大発生全体の解決時にカードほか多数のリソース)、襲われる生存者を助ける「救出」ではサバイバーを確保し各地のセーフハウスに連れてゆくことで施設に応じたリソースが入手可能である。
戦闘してカードを集め、コインを支払ってカードをレベルアップさせることで戦力を拡充する……この辺りはまあソーシャルゲームによくある形式だ。

ミッション

出現する敵の種類はランダムだが出現位置は固定されているため、漫然とプレイしているとどうしても単調になりがちだ。毎日同じ行動を繰り返して物資を集めるというのもある意味「ゾンビアポカリプスのリアルな日常」ぽくはあるのだが、ゲームとしてはやはりそれなりの張り合いが欲しいところである。
そのため、定期的にデイリーミッション──「大発生を何回掃討しろ」「何人のサバイバーをセーフハウスに連れてゆけ」など──が出され、行動にちょっとした変化を与える。べつだんクリアしなくてもペナルティなどはないが、報酬が得られるので積極的にこなしてゆきたい。

また、個々人にランダム提示されるデイリーミッションとは別に、所属グループで共有される「エピックシーズンチャレンジ」が存在する。
これは6週間の周期で毎週のチャレンジをクリアしてゆくもので、5x5のビンゴ形式で数々の課題が出される。縦横列を消化すると交点にあるカードパックが得られるほか、全課題のクリア時にも報酬が得られ、次の5x5が表示されてゆく。
1週間以内に3段階のチャレンジを全クリアするとティア(階層)が上がり、より難易度の高い/より報酬の良いチャレンジが始まるが、3チャレンジすべてをクリアできなかった場合は次週でまた同じティアをやり直さねばならない。
こういった課題には少なからず「この武器で倒せ」「このヒーローで倒せ」などカード指定が含まれるので、レアリティの低いカードにも使いどころが出てくることになる。

カード

ゲーム中で入手できるカードには武器のほかに、一緒に戦ってくれる「ヒーロー」、持ち物を増やしたり追加効果を得られる「パーク」がある。各カードには★1〜4(コモン、レア、エピック、レジェンダリー)の4段階のレアリティがあり、同じカードレベルでは高位レアリティのものほど性能が高い(が、そのぶん入手可能性が低く、またアップグレードコストも高いため育成は困難になる)。

武器

大きく分けて、スリムウォーカー相手に効果的な「ピストル」、スパイクウォーカーに効果的な「サブマシンガン(SMG)」、腐敗ウォーカーに効果的な「ショットガン」、ヘビーウォーカーに効果的な「アサルトライフル(AR)」、アーマーウォーカーに効果的な「スナイパーライフル」の5系統がある。それぞれに「ダメージ(=1発あたりの火力)」「上限(=連続発射できる回数)」「リロード(=上限まで撃ち切った後に再使用可能になるまでの時間)」が設定されている。
この中

後発位置情報ゲームとしての洗練

位置情報ゲームは「現実世界の位置とリンクする」ことに面白さがあるのだが、同時にそれが問題点ともなり得る。
たとえば得点源がランダムな位置に出現する場合、現実世界では到達できない場所に出現してしまうような場合がある。逆に現実世界の位置に沿ってポイントが設定される場合、設定しやすい場所とそうでない場所の差が出てくる(都会では申請者が多いため登録済みポイントも多いが地方では少ない、など)。
また、現実世界でのプレイヤー密度差も問題となり得る。たとえばIngressでは、「都会ではプレイヤーが過密すぎるので自分がプレイした結果がすぐかき消されてしまう」「地方ではプレイヤーが過疎すぎて環境に変化が生じない」といった問題が発生した。すれ違いで地図を交換するドラクエでも、入手機会の差が問題となった。
かといって現実世界とリンクさせないのならば、位置情報ゲームである必要がない。現実世界を取り込みながら、それに振り回されすぎない調整をどうするかは悩ましいところだ。

The Walking Dead:Our Worldの場合、まずゾンビやアイテムの出現位置を「立ち入り可能な場所」に限定。具体的に言えば公道および公共空間からアクセス可能な範囲のみに、自動的に出現する形を取った。これによって都会でも地方でもアクセスすべき地点の密度には差があまり生じない。
出現地点は共通だが、その消化は他プレイヤーと共有されないため、少ないリソースを取り合うようなことにもならない。逆に言えば、その分だけ他プレイヤーとのインタラクションが低くソロゲーム的になりがちではあるが、その点は救出した生存者を連れてゆく(ことでカードやコインなどのリソースを得られる)「セーフハウス」を全員で共有すること、およびグループ内で協力して達成を目指す「チャレンジ」によって補完されている。

現実感

位置情報戦闘ゲームにはありがちだが、AR機能によって現実の光景にゾンビの姿を重ねて戦闘ができるようになっている。夜に人気のない路地裏などでゾンビと戦闘するのはかなりのサバイバル感が得られる。
またセーフハウスは、建設から10日が経過するとレイダーの襲撃を受けて破壊される。このタイムリミットはサバイバーを集めてアップグレードすることで延長可能だが、セーフハウスが大きくなるほどアップグレード困難になり、いつかは破壊されてしまう。「大きくなりすぎた拠点は襲撃者にとって美味しい獲物」ということで、ゲーム的な都合としての環境変動の仕組みと世界設定とが巧く噛み合っている。
一通りの操作説明や基本行動指針こそチュートリアルが示されるものの、「武器/ヒーローごとのゾンビとの相性」などの情報はまったく説明がなく、「自分で試行錯誤しろ」感はむしろゾンビサバイバルの雰囲気を高めている気もする。
詳しく知りたい向きは攻略情報サイトを。
ourworld.gameinfo.io

カメラ遍歴


いつの間にか所有したことのあるカメラも増えてきたので、メモ代わりに。

ポケットインスタマチック

最初の自分用カメラは小学生の頃、たぶん父がくれた110カメラだったと思う。厚みより前後方向が長い箱型ボディで、色は黒だったか銀だったか、もちろんメーカーなんて憶えていない。
他にも、父のOM-1を借りて撮ったりもしたが、どうも私はファインダを覗いた状態では自身の認識する視野と実際の撮影範囲をうまく切り分けられないようで巧く撮れず、次第にカメラからは遠去かっていった。

その後、写真趣味に復帰するのはずいぶん後のことだ。

SONY Cyber-Shot DSC-F505V

rikkie-camera.sweet.coocan.jp
2000年か2001年ぐらいだったろうか。どういうきっかけで買ったのかはよく憶えていないが、単にガジェット趣味のひとつだったような気がする。当時としてはハイスペックな260万画素、光学5倍ズーム機で、本体と同じぐらいの大型レンズを備え、ヒンジで上下に回転できてローアングルやハイアングル撮影が容易というフラグシップモデルだった。たぶん7万円ぐらいしたと思う。
ここで初めて「撮影イメージを確認しながら撮れる」デジカメの楽しさに目覚め、インターネットで知り合った人たちとカメラを持ち寄って撮影会をやったりした。新婚旅行の時もこのカメラを使っている(妻用にはCyber-Shot DSC-P1を買い足した)。
当時のデジカメは接眼ファインダがなく背面液晶のみで撮影するのだが、それが却って私には合っていたようだ。特にF505のようなスウィーベル機構を持つ機種では画面を上向きにしてウエストレベルで撮影するスタイルを取りやすく、その後の撮影スタイルに大いに影響を与えている。
この頃は空模様などを多く撮っており、広角側38mmでは画角が足りなかったため外付け魚眼レンズなども導入。

SONY Cyber-Shot DSC-F828

www.itmedia.co.jp
後継のF707はスルーしたが、2003年に発売されたF828は即日購入。画素数が800万となり、レンズも換算28-200mm F2.0-2.8という大口径に。しかもRGBに加え青緑画素を持つ4色CCDで色再現性を向上させた、現在でいえば「ネオ一眼」に当たる立ち位置の高級機である。実売で13万ぐらいだったか。
残念ながらこの後ソニーは(というか他社も含めて)デジカメの構造をフィルムカメラスタイルに近付けてゆき、レンズ回転機構を捨ててしまったため、乗り換えるべき後継機も出ることはなかった。今ではバリアングル液晶などで需要が満たされてはいるが、「左手を鏡胴に、右手をシャッターボタンに固定したままモニター角度を変更できる上、各種ファンクションボタンにもアクセスできる」使い勝手に優れたデザインだったと今でも思う。
既に使うことはないが処分するにも忍びなく、コレクションとして保管してある。

ローライMiniDigi

Rolleiflex MiniDigi (ミニデジ) AF5.0 ブラック 24611

Rolleiflex MiniDigi (ミニデジ) AF5.0 ブラック 24611

ローライフレックスを模倣したミニサイズのトイカメラ。デジカメとしては安物だが外装は凝っており、トイデジの範囲に収まらぬ価格だった(たしか5万ぐらいしたのでは)。
デジカメなのにフィルム巻き上げレバーを回さないとシャッターが切れないという無駄に凝った構造などに遊び心が見られる。ファインダもちゃんと上部に小さな正方形液晶があり、ウエストレベルファインダで撮影可能である。
CCDが安物のため色再現性は悪く、しかも読み出しの遅さにより風景撮影ですら手ぶれによるローリングシャッター現象を生じたが、それが却って面白く昼休みに首から下げて付近をうろついたものである。
後にCCDの性能を向上し300万画素パンフォーカスから500万画素オートフォーカスになったモデルも登場し、こちらも買い足した。またローライではなくライカM3を模したモデルもあったが、こちらは所有していない。

iPhone 3GS

カメラ遍歴としては外せない。それまでもカメラ付き携帯は所有していたが積極的に撮るようなものではなかったところ、iPhoneはカメラとしての機能それ自体よりも「画面が大きい」「撮ったものをすぐ加工/共有できる」強みで完全にメイン機の立ち位置を奪っていった。この後長いことiPhoneでの撮影を中心にして、デジカメはお蔵入してゆく。
それが覆るのは、スマートフォンでは撮りにくい接写などの需要が増えてからだ。

SONY Cyber-Shot DSC-T900

これはまあ私のというか、主に妻が使うためのものとして買ったのだが。
名刺サイズの薄型ボディに光学手ぶれ補正付きの4倍ズーム屈曲光学系を仕込み3.5インチタッチパネル液晶という、なかなかに盛り込んだ仕様で重量わずか150g、鞄に入れて邪魔にならない日常携行用カメラとして優れた代物だった。しかしこの後「スマホカメラの方が取り込む手間もないし即座に加工・共有できるし」という時代になり、この手の小型コンデジは居場所を失ってゆく。

リコー GXR

RICOH デジタルカメラ GXR+P10KIT 28-300mm 170550

RICOH デジタルカメラ GXR+P10KIT 28-300mm 170550

2013年購入。
仕事用にマクロ撮影などを主体として新たなカメラを物色していた時期で、しかしレンズ交換式は沼だと聞いていたので手を出しかねていたところ、既に事実上のディスコンだった本機が処分価格で流通しているのを発見。キットの10倍ズームユニット付きで2万弱だったと思う。これにAPS-Cセンサーの50mmマクロを追加購入してしばらく使った。
「センサーとレンズが一体化したユニットごと差し替える」機構にはギミック趣味を刺激されたし、マクロレンズユニットの描写は充分に満足行くものではあったが、AFが不安定であるなど使い勝手としてはイマイチだった。
結局これが沼の始まりで、なんのかんのとレンズ交換への警戒心が薄れたことでこの後マイクロフォーサーズに傾倒してゆく。

リコー WG-3

これも2013年。なんで買ったのだったか既によく覚えていないが、レンズ前1cmまで寄っての強力マクロとレンズ周囲LEDライトはGXRのマクロとは別方向に強力だった。また落下高度2mの耐衝撃性と水深14mの防水はラフな扱いに耐え、屋外の水辺などで結構重宝した。
とりわけ小学校低学年の次女が自由に写真を撮るカメラとして活躍したが、のちに彼女に自前のiPadが割り当てられたことで役目を譲った。

Panasonic LUMIX GM1

GXRに見切りを着け、次の機種への乗り換えを再度検討していた2013年末に発売された新機種。なんといってもオールドスタイルに寄せたシンプルなデザインと、マウント径ギリギリまで削ぎ落としたスリムなボディは魅力的であり、なんとコンデジサイズの小型センサー機であるPENTAX Qよりも本機の方が小型軽量であったという。付属の12-32mmレンズも沈胴式でコンパクトなパンケーキサイズに仕上がっており、望遠の不足はあるものの広角〜標準域を押さえている。
逆に本体がコンパクトすぎるためレンズとのアンバランスが問題になる傾向があり、マウント径以上に拡がらない細身なレンズを中心としてM.Zuiko 12-50mm F3.5-6.3やLUMIX G X 45-175mm F3.5-5.6、LUMIX G 30mm F2,8 MACROなどを追加していった。
鞄に入れても邪魔にならず首に下げても負担ない小型軽量さは散歩カメラとしてたいへん重宝したが、とはいえコンパクトさ故に機能性を犠牲にした感は否めない。とりわけ方向キーの周囲をダイヤルとしたデザインは、F値シャッタースピードなどを回転で切り替えたい時に方向キーを押して機能選択が切り替わってしまうことが多く、またレバー部が飛び出した電源リングは鞄の中で引っ掛かって外れがちで2回も紛失。そうした操作性や耐久性の改善を求めて機種変更に至る。
今でも強い愛好者がいるのだろうか、発売から半年後の時点では新品で5万ぐらいだったかと思うが、ディスコンになって久しい現在でも8万ぐらいで販売している店があるようだ。

OLYMPUS PEN E-PL8

LUMIX GM1を3年ほど使った後、2017年に6万ぐらいで購入。
既にGM1用にレンズを増やしていたのでマウント替えは考慮外であり、マイクロフォーサーズ機から選ぶことは決定事項である。またGM1の欠点である方向キーとコマンドダイアルの複合構造を避けることは重要だったため、後継機であるGF9は候補から外した(GM1譲りの小型軽量デザインにチルト液晶を追加した、魅力的な機種ではあったのだが)。
コマンドダイヤルさえ使いやすくなれば、他の機能はそれほど重要ではなかった:今やどの機種でも背面液晶は可動式だし、GF9を除けばすべての機種で手ぶれ補正を備えているので、GM1より機能性が向上することは間違いないからだ。あとはサイズと価格次第ということになるが、ハイエンド機を除けば大きさも重さもさほど大きな差はない。
金額面ではLUMIX GX7が最安だがボディサイズはやや大きめ、また外観があまりに素気ない。カメラはある意味でファッションの一部であり、外観は意外に重要なファクタだ。
デザイン上の好みからすればモダンなLUMIXよりもクラシックスタイルのOM-DやPENが好ましいが、撮影スタイルから接眼ファインダ不要派であるためPENが最適と判断。オーソドクスなブラック+シルバーと悩んだが、妻との共有も視野にオレンジブラウンを選択。
本体重量がGM1の倍もあるので最初は重すぎると感じていたが、代わりに得た手ぶれ補正(3軸とはいえ)とチルト液晶は撮影幅の向上に大いに役立ってくれた。

OLYMPUS PEN F

OLYMPUS ミラーレス一眼 PEN-F Body SLV

OLYMPUS ミラーレス一眼 PEN-F Body SLV

PENへの買い替え時には価格面と不要なEVF装備の点で候補から外していたが、ニコンZ登場前の「新型ミラーレス予想」の素材として使われたPEN Fが思いのほか格好良く見え、またPENよりも直接制御できる範囲が広く、手ぶれ補正も強くなることを考えると急激に魅力が増した。
当時オリンパス創業100周年で記念モデルの登場が噂されており、既にヨーロッパで限定販売されていたPENのブルーモデルがPEN Fにも来るのでは、という噂と共に花文字のFを彫り込んだボディの画像が出回っており、期待を込めてこれを待っていたのだが結局フェイクで、それどころかPEN Fがディスコンとなり買い時を逃がしてしまった。
買えないとなると却って欲しくなるもので、マップカメラの入荷情報に網を張って良品を確保。
往年のハーフカメラPEN Fとほぼ同サイズ同重量で、露出補正ダイヤルやトーンコントロールダイヤルなどマニュアル機の手触りを残した独特の操作感が好ましい。