雨を撮る


雨の日は気分も晴れない。
陰鬱な空。体に纏わり付く湿気の不快感。外に出るにも傘が要るし、なにかと億劫だ。
だけどそんな雨の日も、カメラがあれば楽しい日に変わる。

雨の日はいつもと違う写真が撮れる日だ。すべてのものが濡れて色を深め、水たまりは風景を反射し、草花には水玉が転がる。マクロで水滴の向こうに写し込まれた景色にピントを合わせてもいいし、激しい雨なら暗めの背景に雨粒の流れを写すのもいい。陰鬱な空の色も弱々しく散乱する光も、撮りようによってはしっとりと落ち着いた雰囲気を出してくれる。雨上がりには日光を受けて輝く水滴が見られるし、夜には地面がネオンを反射して幻想的に彩られるのも素敵だ。
そう考えると雨も悪くない。

さあ雨を撮りに行こう……と言いたいところだけれど、それには準備が要る。機材を濡らしてしまうのは好ましくないし、傘を差していると片手が塞がって撮りにくい。
そういうわけで今回は、撮影用の雨具の話。

体を雨から守る

正直、レインウェアってあんまり良いイメージを持っていない人、結構いるんじゃないだろうか。
子供の頃に着せられたようなレインコートのすごく安いやつなんかだと単なるビニール生地の服で、たしかに水は通さないんだけど内側に熱が籠るし、汗も通さないので湿ってベタつく。耐久性を高めるためなのか厚手のビニールだったりすると硬くゴワゴワした感触で、重量も結構ある。特に半袖で肌に直接レインウェアが触れることになる夏などは不快感が強い。

でも最近のレインウェアはちょっと違う。水を通さず汗の蒸発は逃がす「防水透湿」素材で作られたものも多く、薄く軽くて熱が籠りにくく、肌触りも良い。いつの間にか雨具も進化しているのだ。

特にスポーツ用のやつは、雨の中で長時間着たまま激しく動くことを想定しているので、脇の下など濡れにくい場所に空気を取り入れるベンチレーションがあって風通しが良かったり、また登山などではしばしば多数の荷を背負うことになるので、携行するレインウェアもなるべく薄くて軽くなるよう工夫されている。
もちろん街中での撮影用途ならそこまで高性能なものじゃなくてもいいんだけど、でもせっかく雨の日を楽しもうというんだから、快適さにはお金をかけた方がいい。薄くて軽いやつなら傘の代わりにいつも鞄に突っ込んでおくことだってできるし、荷が軽くなるのは(交換レンズなどで重くなりがちな)カメラと一緒に持ち歩く時にだって嬉しい。

各メーカーから色々なものが出ていて、品選びは悩ましい。私も色々知っているわけではないので、ひとまず自分が購入時したものを貼っておく。

(ホグロフス)HAGLOFS L.I.M PROOF JACKET MEN 602501 2C5 TRUE BLACK S

(ホグロフス)HAGLOFS L.I.M PROOF JACKET MEN 602501 2C5 TRUE BLACK S

実測で243g(男性用Lサイズ)の撥水・透湿レインジャケット、フード・胸ポケット付き。袋はないので畳んで丸めてフード部分に突っ込む形でまとめている。折り畳み傘より少し嵩張るけど少し軽い。
ただ守れるのは上だけ(パンツは買わなかった)なので、そこは割り切る。
これで雨の時の動きがかなり軽やかになったけど、フードがそれほど深くないので顔が濡れるのはちょっと気になる。なるほど、鍔付きの帽子が必要になるわけだ……

カメラを雨から守る

カメラは精密機器なので、決して水に強くはない。とはいっても少々の雨で壊れることはそう多くないけど、なるべくなら濡らさない方がいい。
カメラにかけるレインカバーというものもある。だいたいはレンズ先端を出す穴(ゴムか何かで軽く締め付けてレンズに固定できるようになっている)の空いたビニールシートみたいな感じで、裏側が空いているのでそこから手を突っ込んでカメラを操作し、ファインダを覗く。確かに雨からは守れるけど操作はちょっとやりにくいし、レンズの長さによっては守り切れないかも知れない。
カメラ自体を防水のものにする、という手もある。コンデジなら各社から防水機が発売されている。これらは水の中でも撮影できるような機材なので、雨ぐらいならなんともない。ただレンズも交換できないしセンサーも小さいので、割り切って使うのでなければちょっと不満が出るかも。
価格.com:防水カメラ

レンズ交換式にだって、水に強い機種はある。
ニコンNikon 1にはAW-1という「レンズ交換式防水カメラ」があって、これは15mまでの水中で撮影が可能だ。すごく良い試みだと思ったんだけど結局専用の防水レンズがキットのズームレンズ1本しか出ずに終わってしまった。
その他のカメラメーカーでも防滴防塵のカメラは色々出ている。
価格.com:防滴機能を持つ一眼ボディ
ボディだけ防滴でも、レンズが壊れてしまってはどうしようもない。各社、レンズについても防滴製品がある。

主要なものだけ抜き出したが、これだけあればボディとレンズについて結構満足の行く組み合わせを見付けられるんじゃないだろうか。

鞄を雨から守る

これはまあ、鞄にかける防水カバーなども売られているけど、普段使っている(防水じゃない)鞄をそのまま使いたいということでなければ、別途防水性の鞄を用意した方が話が早い。
防水カメラバッグなんかも色々出ている。

私は普段からターポリンのメッセンジャーバッグを使っているので、少々の雨程度なら気にしない。

雨の撮り方

雨が降っている様子を撮りたければ、背景が暗い場所を探そう。水滴は白っぽく見えるので、白けた空など明るい背景では溶け込んで見えなくなってしまう。
シャッタースピードが早いと雨粒が止まって見える。流れるような雨をイメージする時はシャッタースピードを遅めにする。だいたい1/160より下ぐらい、1/80〜1/50ぐらいだと雨粒が流れて線に見える。1/10ぐらいになると白糸のような繊細な雨に写る。
まあこの辺は好みで、色々と試してみよう。ただシャッタースピードが遅くなると手ブレしやすいので、三脚で固定するなど対策が必要になってくるかも。

レンズはなるべく望遠がいい。これは何故かというと、圧縮効果で雨の密度が上がるからだ。広角だと広い範囲に雨が散らばるので密度が低くなるが、望遠だとたくさんの雨が重なって強い雨に見える。

水滴を撮る場合はもちろんマクロが要るけど、マクロはなにしろすごく狭い範囲を大きく写すから、ピントや手ブレがすごくシビアになる。意識できないぐらいの微細な体の揺れでピントがずれたり手ブレでぼやけたりする。
ピントについては、ミラーレスならば強い味方がある:それが「タッチシャッター」だ。これは背面液晶モニタをタッチすると、その場所にピントを合わせ、合った瞬間に自動でシャッターを切る機能で、手ブレでピント合わせが難しい場面でも確実に合焦してくれる。
ブレの方はシャッタースピードでなんとかしよう。雨の日は暗いのでシャッタースピードが遅くなりがちで、手ブレも被写体ブレも起こしやすい。ノイズがあっても不鮮明に写るよりはマシなので、思いきってISO感度を引き上げてシャッタースピードを稼ぐといい。だいたい1/250秒ぐらいあれば手ぶれはかなり抑えられるはずだ。

あと、雨の夜景とか水溜まりに映った景色とかを撮りたい場合。基本的にはカメラを地面/水面ギリギリの高さに置くと反射する範囲を大きく撮ることができていいのだけれど、カメラを水に直置きすると(防滴製品でなければ)ちょっとまずい。そういう時は「低い三脚」を使おう。

Manfrotto 卓上三脚 POCKET三脚Lブラック MP3-D01

Manfrotto 卓上三脚 POCKET三脚Lブラック MP3-D01

普通の三脚は立って使うことを前提としているからカメラ位置がかなり高い。脚を伸ばさずに使うことで低くできるやつもあるけど、それでも30cmぐらいの高さにはなる。
スマートフォン用のミニ三脚などでも10cmぐらいの高さはあるし、耐荷重や安定性的な意味ではちょっと不安がある。
そこへ行くとこの板状の三脚は脚の長さが数cmぐらいしかないので、すごく低いところで角度を調節して置きたい時とかには便利だ。耐荷重も1.5kgあるので、フルサイズじゃないミラーレス機であれば耐えられるんじゃないかな……

耳に挿れないイアフォンを

私の耳はどうも標準的な形状から外れているらしく、現在の主流となっているカナル型イアフォンが耳道に収まらず、押し出されて脱落してしまう。
昔ながらの耳介軟骨に引っ掛けるインナーイアフォンならば使えないこともないが、耳の硬い面に当たるのでしばらく着けていると痛くなってくるし、やはり脱落しやすい。
耳かけフックで支えるタイプは脱落の心配こそないが、眼鏡の蔓と干渉するため好ましくない。
ヘッドフォンもまた蔓を押し付けてしまうため、着用していると耳の上あたりが痛くなる。一応、イアパッドの柔らかい機種にすることで圧迫感を減らし、ヘッドバンドを長くすることでイアパッドの上側を開き気味にして圧を減少させ、また着用時は眼鏡の蔓をイアパッドの上にかけるようにしてみる……など工夫すれば使えないわけではないのだが、色々と気を使う必要があるのは若干面倒だ。
ついでに、雨具を傘からレインジャケットに替えたこともあり、フードを被るのにヘッドフォンだと邪魔になるという問題もある。

そういうわけで、「しっかり固定できて脱落しない」「眼鏡と干渉しない」「フードの邪魔にならない」を条件として新たにウェアラブルな音響装置を選定することにした。
基本的な候補としては、「肩に乗せるスピーカー」「骨伝導タイプ」そして「耳朶を挟んで止めるタイプ」の3種である。

ウェアラブルネックスピーカー

Amazon:ウェアラブルネックスピーカー
首から肩にかけて小型のスピーカーユニットを乗せ、耳に近い位置から音を鳴らす個人用スピーカー。
主に映画やゲームなどで、大型のサウンドシステムを導入できない場合に迫力をカヴァーすることを目的にしているらしく、重低音を「体感」するための振動板が入っていたりする。
音楽プレーヤーとの接続をメインにしていないため、専用のワイアレス送信機を据え付ける必要がある機種もあり注意を要する。また比較的高価格(2〜5万ぐらいが中心のようだ)。
これはこれで興味はあるものの、周囲に音が伝わるスピーカーでは通勤中の音楽再生用途に向かないので、今回は見送る。

サウンドイアカフ「Ambie」

これは耳を挟んで止めるタイプの、変わったイアフォンである。
ambie.co.jp
耳介を後ろ側から挟み、耳道の側まで伸びた管で音を届ける。耳を塞がないために外の雑音もイアフォンからの音も遮音されないという特徴があり、装着方法も含め良くも悪くも独特。
有線型とBluetooth型があり、今回はBTモデルを買ってみた。

以下、レビューする。

装着感

イアカフユニットとネックバンドはシリコーンで被覆されており肌触りが良い。緩く丸まった細身のネックバンドは柔軟で軽く、首に沿って抜け落ちないが締め付けもせず、装着感はほとんどない。
イアカフも耳朶をしっかり挟み込むが圧迫感はなく、4時間ほど着けっ放しにしてみても痛みなどは生じなかった。
動いてもずれない程度の強さで固定されているが、頬擦りしたら取れるぐらいの弱さでもある。あまりないとは思うが、ネックバンドと繋がるケーブルを引っ掛けられてもイアカフが外れて断線せずに済むのではないかと思う。

耳の窪みに嵌まるのではなく耳道の方向を向くように調節せねばならないので、装着には若干の慣れを要する。サウンドを再生しながら一番良く聞こえるポジションを探るといいだろう。

音量

ユニットが小さくパワーが少ないのと遮音性がないため周辺音に紛れること、また音の発生位置が普通のイアフォンより遠いことが原因かと思われるが、音量は小さい。これまで使っていたヘッドフォンと同程度の音量を得ようと思うと、Musicの再生音量制限(これまで最大ヴォリュームを50%程度に抑えていた)を75%程度まで引き上げる必要があった。
環境音も素通しなので音楽に没頭する感じではないが、そういうものと割り切って使い分けるのが良さそうだ。なお音管の上から指を添えて遮音性を高めてみると伝わる音量も上がるので、もう少し遮音性性を高める交換用イアピースとか出てもいいのではという気もした(有線モデルは取り外し可能だがBTモデルは接着されているので、外付けがいいのかも知れないが)。
音量を上げない限りは周囲の音を阻害することもなく、音楽を流しっ放しで普通に会話できる。自分にしか聞こえていないことを忘れそうだ。
なお、(恐らく通話時に声が遠い時の対策なのだろうが)ネックバンド左のボリューム+を押すとプレイヤー側の設定ヴォリュームを越えて音量を上げることが可能だ。ただし一時的なもので、プレイヤー側で音量を操作すると設定音量に戻る。

音漏れ

オープンエアなのでどうしても漏れるだろうと思っていたが、実際に試してみると意外なほど漏れは少ない。耳朶から抜き取った時点でもう聞こえなくなる、ぐらいに音の伝達範囲は限定的だ。
勿論これは音量にもよってくる。雑踏でもはっきり聞き取れるようにかなり音量を上げた場合は、耳から50cmほど離して机の上に置いても「何か鳴っている」ぐらいには感じられた。
まあ周囲がうるさい場合は漏れた音もまた雑音に紛れてしまうが、いずれにせよ音量は下げ気味に、感覚としては「店内でBGMが鳴っている」ぐらいのところに留めておくのが良さそうだ。あくまで集中して音を聴くためのものではなく、漠然と音楽を流しておくためのものと割り切った方がいいだろう。

音質

わかっていたことだが、低音はぜんぜん鳴らない。拍手の音さえ違ったものに聞こえる。
が、中高音域は結構クリアで、ヴォーカル曲などは違和感なく聴くことができる。反面、ドラムを多用するロックなどはどうしてもショボい。意外だったのは音域・音量ともにレンジの広いクラシックで、もっと貧相かと思ったら結構ちゃんと聴ける。
面白いのは音場感だ。イアフォンのように「耳の中で鳴っている」とかヘッドフォンのように「耳の側で鳴っている」感があまりなく、なんというか「前の方から音が来る」感じに聞こえてくる。最初はiPadのスピーカから音が出ているのかイアカフが鳴っているのか判別できなかったほどだ。
一人用のBGM装置としての効果が極めて高いので、たとえばゲームのサントラなどBGM用の曲がすごくマッチする。

使い勝手など

BluetoothのペアリングはNFCに対応しておりタッチで完了するらしいが、iPadにはそれがないので手動でペアリング。電源OFFの状態から電源ボタン長押しで起動→LEDが青く光ったらiPadの設定画面でBT機器をタップしてペアリング完了と、まあこの辺りは他のBT機器と特に違いはない。

通信の感度はかなり弱い。私はiPadなので普段は本体をショルダーバッグに入れて腰のあたりに下げておくのだけれど、イアフォンのBTレシーバ 部分と距離にして1mも離れていないだろうに、少しの姿勢差程度でそれはもうブツブツ切れる。「はっきり聞く機材ではない」特性が却って救いになるほどに切れる。
体の水分が通信を乱しているのか、手に持って使っている時などにはほとんど切れないので、リンク先がスマートフォンで胸ポケットに入れておくような使い方なら大丈夫なのかも知れない。しかし私のように鞄に入れて腰より下ぐらいに下げる使い方だと、少し首の角度を変えたとか手を下ろしたとか、その程度でも途切れる。正直なところ、Bluetoothモデルじゃなく有線モデルにするべきだったかと後悔するぐらいに切れる。ここは最優先で改善して欲しい。

充電はマイクロUSB、フル充電に2.5時間、連続再生時間は公称6時間。長くはないが、充電ポートがネックバンド側であり充電中も電源が切れることはないため、必要ならばモバイルバッテリーで給電しつつ再生することも可能ではある。
(なお実際の持続時間を調べてみようと朝から再生しっ放しで放置しつつiPad側でバッテリ残量表示を確認してみたが、4時間経過時点で70%、8時間で50%となっていた。フル充電後、ペアリングしっ放しでずっと使ってみたところ12時間ほどで電池切れとなった)
全体がシリコンで被覆されてはいるが、防水仕様ではない(充電用のUSBポートなどが開口しているためだろうか)。挟んで止める形式からずれ落ちにくくスポーツ向きであるように思われるので、この点はちょっと残念。将来的に防水モデルが出ることを期待したい。

骨伝導ヘッドフォン

Amazon:骨伝導ヘッドフォン
鼓膜を震わせるのではなく、骨を介して内耳まで直接振動を送り込むことで音を伝えるヘッドフォンである。
耳道を介したイアフォンとは異なり耳の中に固定する必要がない。ただ、左右の耳にそれぞれ振動を伝えるためにはだいたい耳の付近に押し付けるのが好ましく、耳道の前や耳介の後ろあたりに振動ユニットを押し付けるために耳かけフック式か頭を左右から挟むバンド形式のものが多く、眼鏡との相性はあまり良くない。
また、鼓膜を通す音とは聞こえ方が異なるため、音声の聞き分けはともかく音楽用となると厳しいのではという印象もある。

その中で、振動ユニットの固定に耳朶を挟むクリップ方式を採用した「earsopen」という製品がある。これなら眼鏡との干渉については問題ない。
www.boco.co.jp
耳に挟むイアピースとコントローラのみの有線型とネックバンドにイアピースが繋がるBluetooth型、それに一種の補聴器としての機能を有する会話用Bluetooth型の3モデルがラインナップされている。

ambieのBT接続が使いものにならぬほど酷かったので、こちらを買い直してみることにした。
以下、レビューする。

装着感

クリック感があり段階的に開き角を変更できるアームによって耳介軟骨を挟むようにしてユニットを固定する。アームの先端にはシリコーンのカバーが着けられておりクッション性を有するが、ambieに比べ装着感は固く、圧迫感による若干の痛みがある。earsopenの方がユニットが大型な分だけ重みがあり、しっかり固定せざるを得ないのも影響しているのだろう。付属のシリコーンカバーピースに異なる形状のものがあるので、場合によってはそれらを試してみるといいかも知れない。
また全体が丸みを帯びたambieと異なりearsopenのユニットは角張っているので当たり方によっては擦れて痛くなりそうだ。この辺りはデザインに再考を要する。
ネックバンドも太く、シリコーンで滑らかに覆われているため肌触りは良いが、ambieよりはかなり重い。それで疲れを感じるほどではないが、耳に装着するユニットの方はあまり長時間の利用はちょっと辛いかも知れない。

音量

ユニットはかなりパワフルである。どれぐらいパワーがあるかというと、ドラムなどの瞬発的な低音によってユニットが発する振動が耳朶で感じられるほどだ。むしろこの振動を目安として、音量を絞った方がいいだろう。

音漏れ

かなり漏れる。静かな部屋の中だと、耳から外して胸元に下げたユニットから漏れる音が、iPadの音量4でも小さく聞こえてくるぐらいに漏れる。ギリギリで音が聞こえる程度の音量調整が求められそうだ。

音質

ハイレゾ」を謳ってはいるものの、お世事にも「いい音」とは言い難い。もっとも、これはユニットの問題というよりも多分に骨伝導という方式の特性なのだろうとも思われるが、他の骨伝導ヘッドフォンと聴き比べたわけではないのでなんとも言えない。
中音域はクリアに聞こえるが、低音はかなり寂しい。また、どうやら聴こえにくくなる部分の音域について倍音強調で補うらしいのだが、その故か普段と音色が違って聴こえる感じがある。
まあこの辺りはどうしてもスピーカー>ヘッドフォン>イアフォン>骨伝導な感じが否めないので、相応に音質は厳しいという前提の上で「その割には結構聴ける」。

使い勝手など

イアユニットは片手で開いて片手で止められるので、ambieよりも装着は容易。
固定はしっかりしており、激しく頭を振ったりしても落ちる気配はない。
ただ、ambieよりもユニットが重いために取り付け位置によっては歩行の振動などで耳が揺れるのが若干気になる。

通信品質については、ambieの時ほど厳しい感じはなく、普段はiPadを鞄に放り込んだ状態でも問題なく聞ける。ただ、状況によっては頻繁な音飛びを生じる場合があって、原因がよくわかっていない。人混みの中と雨の日にそうなったので、もしかするとBTは宿命的に水分と相性が悪いんだろうか。

ネックバンドはambieのものよりも太く重い。その分だけ通信性能も高くバッテリ容量も多いのだが、細くしなやかで軽いバンドが首にフィットしたambieと異なり硬いものが首にかかっているだけなので、動きによっては鎖骨のあたりに軽い衝撃を生じることになる。せっかくイアユニットが激しい動きでも落ちないのに、これではジョギングなどの際には少々鬱陶しいのではという気もする。
またバッテリがambieよりも長く保つのに、イアユニットの長時間連続装着には不安がある(痛み的に)のがどう出るかは気になるところ。こちらも長期運用の結果によって追記したい。

サブウェイ改造案

サブウェイが苦戦している。
サブウェイが4年で170店舗も閉めた理由 | プレジデントオンライン
ここでは「コンビニの発達した日本ではおにぎりや弁当に敵わない」と分析しているが、米国でも店舗閉鎖が相次いでいるようで、問題はもっと別のところにあるのかも知れない。

一度でも利用したことがあればご存知かと思うが、サブウェイの注文システムはちょっと独特だ。注文者はカウンターの端でどのメニューを注文するのか店員に告げる。すると「パンの種類と長さ、トーストするかどうか」「追加するトッピング(有料)」「具材と一緒に挟む野菜の種類や量の指定」「ドレッシング・ソースの種類」を順に訊きながらカウンターを進んでゆき、組み合わせて出来上がったサンドウィッチと共にレジに到達する。そこでサイドメニューなどの要求があれば一緒に注文し、支払いを済ませる。
このような「客と担当者が一緒に移動する流れ作業方式」によって細かいカスタムオーダーに対応しているのだ。もちろん、面倒なら「おまかせ」で済ませてもいい。

このカスタムオーダー方式は苦手な食べものがある人や逆にたっぷりの野菜を食べたい人などには好適な仕組みだが、その反面「色々と選ばされる」という問題がある。慣れてしまえば特段難しいことではないのだが、初めてで勝手がわからない時には軽くパニクるかも知れない……特に、後ろに他の客が並んでいる場合は。
実際、サブウェイに対するネガティヴな意見のほとんどは「値段が高い」と「注文が難しい」に集中しているようだ。

値段はまあいいとしよう。それは利益率の問題でもあり、あるいはターゲット層の問題でもある。「高いと感じる客に向けた店ではない」という割り切り方は可能だ。
問題は「注文が難しい」の方で、これは値段とは別のところで客足を遠退かせる原因になってしまう。

べつにオプションが多い注文が受け入れられないということはない。ラーメン屋でトッピング注文するのだってピザの出前で4種類盛り合わせを注文するのだってオプションの種類には大差なく、しかしそれが障害になっているという声は聞かない。オプションを連ねると呪文のようになり注文が難しいと揶揄されるスターバックスだって、それで敬遠されるという声はあまり上がらない。
じゃあ何が難しいのか、というと……恐らく「制限時間」ではないかと思われる。

前述の通り、サブウェイの注文は流れ作業方式だ。つまり自分が選択に時間をかけていると後ろの客がそこで待たされることになり、そのプレッシャーが注文への焦りとなる。
逆に言えば、この注文方式を改善すれば、プレッシャーから開放されゆっくりと好きな組み合わせを選べるようになり、オプションの多さはポジティヴな要素に変わるのではないか。

たとえば注文をアプリ化する。まずは店頭でバーコードをスキャンして注文店舗を確定、次にメインの具材→パンの種類→トッピング→野菜→ソース……とオプションを選んで(デフォルトの組み合わせが自動入力されているので好きに入れ替える)、複数注文したければ「ご注文を続ける」で冒頭に戻る。すべての注文をカートに入れたなら「お支払い」に進み、そのままオンライン決済で済ませるか、あるいはレジで画面を見せて現金で支払う。これで注文番号が確定、出来上がったら通知されるので商品を受け取る。
予めアプリをインストールしないと注文できないというのはちょっとアレなので、なんなら店内に専用のタブレット注文端末を用意してもいい。操作がよくわからないという人も出てくることが予想されるので、そういう時は店員が注文を聞きながら代わりに入力して、確認ののちレジへ案内する。

これなら注文を急かされることもなく、ゆっくり選ぶことができると思うんだけど、どうだろうか。
追記:この「注文アプリ」案にこんな反応を頂いた。


「お気に入りの組み合わせを登録しておいて1タップで注文できる」「おすすめの組み合わせをオンラインで共有できる」のはいいアイディアだなぁ。

なおサブウェイは
公式サイトで注文方法を説明している。わかりにくさは自覚しており多少なりとも改善しようという努力は感じられるが、実際の問題が「流れ作業でのオプション指定」にあるのだとすれば、本当に改善すべきはそこではない、ということになる。
個人的には好きなチェーンなのだが近隣に店舗がないため食べるに食べられずにいるので、経営改善して店舗増加してくれることを期待している。

一眼レフとミラーレス、よくある誤解

今、ミラーレスの立ち位置は微妙なところにある。元々センサーサイズが一眼レフよりも小さい規格から広まったこともありハイエンド指向の一眼レフユーザからは下に見られがちな反面、135フルサイズのソニーαなどがハイエンド向けにも高く評価された結果として逆に「もう一眼レフは古い、これからはミラーレス」みたいな妙な期待感が高まっていたりもする。どちらも些かバランスを欠く見方に思われる。
また、その結果として性能や特性について誤った風説が流布されているように感じられたので、ちょっと修正しておく必要があろうと考え、これを記す。

一眼レフ/ミラーレス/コンデジという区分について

カメラの種別はそれぞれに由来が異なるため、排他的……つまり「AかBかにはっきり分かれる」ように分類できない面があり、その曖昧さが話をややこしくしがちである。ので、まずこれをちょっと整理する。

一眼レフは、レンズの後ろに斜めのミラーを置き、その後ろにあるフィルムや撮像素子を避けてレンズからの像を視認するファインダーを持つカメラを言う。フィルムカメラではこれ以外にレンズからの光景を直接見る方法は(基本的に)なく、あとは撮影用レンズの上に視認用に同じレンズをもうひとつ持つ二眼レフや、撮影範囲確認用の覗き窓を持つビューファインダー、ビューファインダーに左右の小窓からの視差映像を重ね合わせてピント位置を確認するレンジファインダーなど、撮影レンズとは少しずれた視点から見るやり方しかなかった。
ところがデジタルカメラは出現当初から、センサーに写る映像を直接ディスプレイに映し出して確認できた。ミラーによる反射(レフレックス)がないから一眼レフではないが、一眼レフが複雑な機構で実現していることをもっと直接的に行なったのだ。その意味ではたしかに、「一眼レフ以外のデジカメはミラーレス」ということができる。
しかし実際には、「ミラーレス」という言葉が一眼レフ以外のすべてを指すことはない。その前にまず、「コンデジ」という区分があるからだ。

コンデジ=コンパクトデジカメは、そもそもがフィルムカメラ時代の、一眼レフやレンジファインダーなどレンズ交換式の大型カメラに対してレンズ一体型でビューファインダーの小さなカメラを指した「コンパクトカメラ」から生じている。したがって図体の大きさに関わらずレンズ一体型デジカメすべてがコンデジと呼ばれており、これはこれで用語として歪なのだが、現実問題として他に適当な呼び名が発明されていない。センサーを大型化して画質の向上を図った高価格路線を「高級コンデジ」と呼んだりはするが、それ以前に一眼レフ的なサイズを指向しているカメラとポケットに収まる大きさを指向するカメラとを呼びわける何かが欲しい。

ともあれ、まず「コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)」という区分が先にあって、後から「デジタル一眼レフ」が成立し、更にそこからミラーをなくした「ミラーレス一眼」という区分が登場したので、それが更に省略されて成立した語であるミラーレスは最初から「レンズ交換式だがミラーがない」デジカメのみを言い、一体型は除外されていることになる。

電子ファインダー(EVF)は光学ファインダーに劣る

何を以て優れている/劣っているとするか、というのはあるが基本的にはむしろ「EVFの方が様々な点で優れている」と言える。よく問題視されるのは「遅さ」と「見え方」だ。

常に光の速さで情報が到達する光学式に対し、電子式ではセンサーが光を捉える→ファインダーに写すまでに若干のタイムラグが発生することは事実だが、認識できるレベルの遅延時間ではなく、それよりも目が情景を捉えてから脳が把握するまでのタイムラグの方が遥かに長いため、実質的な差はないに等しい。

古いEVFでは解像度が粗く映像がはっきり見えにくい時代もあったが、現代のEVFは超高解像度液晶によってその問題はほぼ払拭されている。光学式ではファインダーで見える範囲と実際に写る範囲が完全一致しないが、EVFならば100%の視野率で表示できる。また露出補正やホワイトバランスの適用結果を見ながら撮ることができ、暗所での撮影も明るい映像で確認が可能である。さらにピーク強調によりピント位置を掴みやすい点でもEVFの方が機能的と言えよう。長時間露光による光の軌跡をリアルタイムに確認できるモードなどもあり、「仕上がりを予想しやすい」ミラーレスは撮影の敷居をぐっと下げてくれる。

ミラーレスは電子シャッター

知る限りでは、ボディに機械式のシャッターを搭載しないミラーレスはコンデジサイズのセンサーを採用したペンタックスQぐらいのもので(代わりにレンズ側に機械式シャッターがある)、ほとんどのミラーレスでは機械式シャッターを持っている(ただ、機種によっては先幕は電子式のみだったりすることはあるようだ)。
ただしミラーの跳ね上げによる手応え(ミラーショック)はないので、手に伝わる感覚の違いに戸惑うことはあるかも知れない。
また無音モードにするとシャッターが全電子式に切り替わり一切の手応えがなくなったりはする。

ミラーレスは撮影時にブラックアウトする

ブラックアウトというのは、撮影した像を取り込み処理するまでの間ファインダーやモニターに映像が表示されなくなる状態だ。これはセンサーからの転送速度限界と画像処理や書き込みのためにCPUの処理能力が消費されてモニタの表示を書き換える余裕がなくなることによって発生する現象であり、そのあたりのスペックに余裕を持たせたハイエンド機などでは発生しにくく、なかには完全にブラックアウトを解消した機種もある。
逆に一眼レフは、撮影の瞬間にはミラーを跳ね上げるため必ずファインダーが「ブラックアウト」する。シャッタースピードが早ければミラーは一瞬で戻るため無視界の状態が長く続くわけではないが、スローシャッターならばその分長く視界を奪われることになるし、原理的に避けようのない無視界が発生するという意味では逆にミラーレスに対して弱点を抱えていることになる。
とはいえミラーレスのエントリー機などでは未だブラックアウトを生じるのも事実で、用途によっては機種選定の際に注意が必要だろう。

ミラーレスは動きに弱い

これは複合的な要因によるので、個別に解説する。よく言われるのは、「シャッターが遅い」「AFが遅い」「像が歪みやすい」などだ。

ミラーレスはシャッターが遅い

これは何を比較しているのかイマイチ明確でないが、「シャッターの速さ」は機械式シャッターの動作速度限界による短時間露光の上限速度を示す場合と、シャッターボタンを押してから実際にシャッターが動作するまでのレリーズタイムラグを指す場合がある。

一般にシャッターの動作速度上限は機械的な構造に拠るため、速度を追求すれば部品の精度や材質などを高めざるを得ず、必然的に高価な部品となるためエントリー機では妥協する傾向がある。つまりミラーレスか否かによる差ではなく、ハイエンド機かエントリー機かの差だということだ。
対してレリーズタイムラグの方はシャッター部材の問題よりも、どちらかというと電気的なシャッターボタン入力からの反応速度の差であるため、ミラーレスかどうかにはまったく関係がない。というかむしろミラーを跳ね上げるまでの時間が挟まる一眼レフの方が速度的にはやや不利となる。

レリーズタイムラグはメーカーによって公表されていたりされなかったりするが、一例として


を挙げておく。ここでもわかるように一眼レフでは0.05秒を切ることはないがミラーレスでは0.02秒とあっさりそれを上回っている。

シャッターの速度についてはもうひとつ、前述の「EVFの遅さ」に絡んで、「そもそも目に入ってくる情報が遅れているためにシャッターを押すタイミングがずれる」と言われることも多い。が、EVFの遅延が体感不能なレベルであり認識の遅れの方がよほど問題になることは既に述べた通りであるので、実際にはミラーレスが遅いということはないものと思われる。
むしろ、この「人間の反応速度の限界」問題への対応に関してはミラーレス機の方が先を行っている。センサーで常時光を捉えておけることを利用し、シャッター半押し中は事前に映像を連写しておいてシャッターが押された瞬間+その前1秒間ぐらいの数十枚をすべて記録する「プリキャプチャー」機能や、同様に動画撮影しておいて最適な一瞬を取り出してみせる4K連写機能などで、人間が認識した時には過ぎ去っているシャッターチャンスをしっかり捉えることができる。
一眼レフで同じことをしようと思えば、「シャッターチャンスになりそうな瞬間を事前に察知して予め連写開始しておく」ぐらいしか方法がなく、徐々に近付く車両を捉えるなど予測可能な動きならばともかく、鳥が飛び立つ瞬間など不意の動きはどうしてもヒット率が低い。

ミラーレスはAFが遅い

一眼レフは専用の合焦センサーによる位相差AFを実装している。これは二つに分けた映像の僅かな視差からズレ量を判定する方式で、一瞬でピントのズレ方向とズレ量を計測できるため極めて高速な合焦が可能である。反面、専用センサーに光を導ける箇所が限られるため中央でしか焦点を合わせられず、またピントの精確さを欠く欠点もある。
コンパクトデジカメやミラーレス機のエントリーモデルではコントラストAFが一般的だ。これはレンズの焦点位置を動かしてみて画像のボケ具合の変化からピントを合わせる位置を確定するもので、精確な合焦が可能である反面、ピントのずれた方向を判定するために動かしてみる必要がある分だけ合焦が若干遅い。
ただ、ミラーレスでもハイエンド機ではコントラストAFに加えて撮像センサーの一部に位相差AFセンサーを組み込んだ像面位相差AFを併用するハイブリッド方式を確立しており、これは一眼レフの合焦の速さとコンデジのピントの精確さを両立させるものと言える。

つまり、「ミラーレスはAFが遅い」は情報が古いというか一般化しすぎというか、ハイエンドモデルではその限りではなく、むしろ精度を併せ持つことを鑑みれば総合的には一眼レフより上と言えるのではないだろうか。
ついでに言えば「カメラがピントを認識する速度」とは別に「レンズがピントを合わせる速度」も影響し、これはボディではなくレンズ性能によって変わるため、一概にどの機種が速い/遅いとも言えない。

ミラーレスだと像が歪む

これは「ローリング・シャッター」問題の話だろう。
カメラの撮像センサーは一般に、全体のデータを一度に読み取ることができない。そのため端から順に読み込んでゆくにあたり、読み出しタイミングに若干のズレが生じる。その僅かな間に被写体が動くと、本来の形が崩れて写ることになる。
だいたいのセンサーは横列ごとの読み込みなので、たとえば電車などが通過するところを撮った場合に最初の列で電車のいた位置よりも最後の列でいた位置の方が前にずれ、全体として下側が突出した平行四辺形に歪むことになる。また回転体を撮ると、このような理屈で妙な形状が発生する。

なぜこれがミラーレス特有の現象と勘違いされたのかは謎だが、あくまで撮像センサーの特性による現象なのでミラーレスだろうがデジタル一眼レフだろうが等しく発生する問題である。
最近では全画素を一度に読み込むことでこの問題を解消するセンサーの開発なども進んでいるそうだが、現在のところ実用化には至っていない。

結論として

  • ファインダのタイムラグはないに等しい
  • レリーズタイムラグはミラーレスの方が短かい
  • シャッターを押すより前に撮ることは一眼レフでは無理
  • AFの合焦速度は方式によって差があるが、ハイエンド機ならミラーレスも遅くない
  • 像の歪みは一眼レフでも生じる問題

なので、「ミラーレスの方が動きに弱いとは言えない」。

ミラーレスはバッテリが保たない

2つの理由から、たしかにミラーレスの方がバッテリの保ちは悪い。
ひとつは、撮影の瞬間にだけセンサーや背面液晶モニタを作動させればいい一眼レフに対してミラーレスは常時モニタやEVFを点灯させ、センサーで映像を捉え続けるために電力を多く消費すること。
もうひとつは、全般にミラーレス機の方が小型であることが多いためにバッテリ自体のサイズも小さめであること。

実際にどれぐらいの差なのか、調べてみた。

メーカー 機種 バッテリ容量 撮影枚数 1枚あたり
Nikon D850 1900mAh 1840枚 1.03mAh/枚
Canon EOS-1D X Mark II 2700mAh 通常撮影1210枚 2.23mAh/枚
Canon EOS-1D X Mark II 2700mAh ライブビュー260枚 10.38mAh/枚
SONY α9 2,280mAh ファインダー使用時480枚 4.75mAh/枚
SONY α9 2,280mAh 液晶モニター使用時650枚 3.51mAh/枚
OLYMPUS OM-D E-M1 mk2 1720mAh CIPA基準試験440枚 3.91mAh/枚
OLYMPUS OM-D E-M1 mk2 1720mAh 低電力モード950枚 1.81mAh/枚
Panasonic LUMIX GF10 680mAh 210枚 3.24mAh/枚

とりあえずフルサイズ一眼レフを代表してニコンキヤノンフラグシップ機、対比としてフルサイズミラーレスであるソニーフラグシップ機。
またミラーレスの中ではセンサーの小さいマイクロフォーサーズからもフラグシップ機とコンパクトなエントリー機をサンプリングした。
バッテリ容量はボディサイズの影響が大きい。最小のGF10ではわずか680mAh、最大のEOS-1Dでは2700mAhと4倍近い差がある。
電力の消費については、たしかに背面液晶モニターEVFへの表示が大きく関わっているらしいことがフルサイズの一眼レフとミラーレスの比較、あるいは同一機種での通常撮影とライブビュー撮影の差から伺える。

この中ではニコンD850の電力消費量の低さは突出している。決してバッテリ容量が多いわけではないのに撮影可能枚数では群を抜き、これぐらいの保ちが必要なのだとすればミラーレスはなかなか厳しそうだ。
ただ、ヘヴィデューティなプロユースを想定するとまだ一眼レフに一日の長ありとはいえ、アマチュアの日常的な使用範囲であればGF10の頼りないバッテリサイズですら不足に陥る局面はそれほどなく、予備バッテリを1〜2個携行する方がスタミナに優れた一眼レフを持つより遥かに手軽な選択だと思われる。

ミラーレスはボケない/ミラーレスは画質・感度が悪い

今更な話だが、ボケの強さはミラーレスかどうかの問題ではなくセンサーサイズの問題で、「135フルサイズよりも、よりセンサーの小さいAPS-Cマイクロフォーサーズの方がボケない」は正しいが「ミラーレスはボケない」ではなく、中判ミラーレスならフルサイズ一眼レフよりもボケる。
もちろん感度云々もセンサーサイズなどの影響が強く出るところであるので、問題はミラーレスかどうかではない。

画質について言えば、感度の問題でノイズの出やすさが違うという点ではたしかにセンサーサイズの影響があるのだが、それとは別に手ぶれ補正の恩恵というものも出てくる。
一眼レフの場合は基本的に、ファインダーにも手ぶれ補正を作用させようと思えばレンズ内で補正するしかない(例外的に、ペンタックスK-1は一眼レフながらボディ内手ぶれ補正を実装している)が、ミラーレスならばセンサーを動かしてのボディ内補正がそのままファインダーにも適用されるため、レンズ内+ボディ内の両方で補正できる。その分だけシャッタースピードを遅くしても撮影可能で、ISO感度を低く抑えることができるので、結果としてノイズの発生を抑えられるという面もあり、(他の条件が同一なら)一眼レフより画質は良くなるのでは、という話もある。

ミラーレスはセンサーが汚れやすい

これはまあ、「一眼レフと違ってミラーに遮られていない」という意味ではそうかも知れない。ただ、その分だけダストリダクション機能に力を入れているメーカーは多く、ホコリ程度であれば問題になることはない。もちろん手で直接触れたりするのは厳禁だが。
同様に「センサーが焼けやすい」というのもある。ミラーがないため直接カメラを太陽の方へ向けると焦点が文字通り焦げることがあるというもので、この点ではたしかにミラーレスの方が防御力が高い(が、もちろん太陽を撮るのは一眼レフでも避けた方がいい)。

ミラーレスより一眼レフの方が多機能

むしろ逆だ。
「一眼レフの方が高性能」な部分はたしかにある(AFの速度であったり、大半のデジカメよりも大きなセンサーによる画質や感度であったり)が、ミラーの存在による制約ゆえに「昔のカメラ」からの脱却が困難な一眼レフに対し電子的な機構のために自由度の高いミラーレスは機能面で言えば一眼レフよりも充実している。たとえばシャッター押下前に遡っての撮影記録機能などは一眼レフでは構造的に不可能だし、動画撮影なども一部機種にしかない。その他、コンデジやミラーレスにはよく見られる機能の一部、たとえば画像を加工するエフェクトフィルター機能や自撮りのための180度チルト液晶モニタなどは普通実装していない。

ミラーレスは小さくて軽い

これは「センサーサイズ次第」。
単純にボディの重量だけを比較すると、確かにすこし軽くはなる(フルサイズの一眼レフだと軽くて750gぐらい、ミラーレスだとフルサイズでも550gぐらい)。またフランジバックが短縮された分だけ厚みが減るので多少コンパクトではある。
しかし、むしろカメラの重量に大きく影響するレンズのサイズや重量は、センサーサイズが同じならばフランジバックが変わってもまったく変化がなく、たとえばニコンキヤノンソニーの3社で24-70mm F2.8のレンズを比較すると、大きさも重量もほとんど違いが見られない。

ならばセンサーが小さければその分だけ小さく軽くなるかというと、これもまた微妙なところで……たとえば現行のミラーレス中でもっともセンサーの小さなマイクロフォーサーズでも、最上位機種であるE-M1 mk-2やG9などはハイエンド系の一眼レフと(厚み以外は)ほぼ遜色ないボディサイズを持ち、重量も相応である。ただ、もっとコンパクトで軽い機種も選べるし、とりわけレンズがかなり小さくなるのは強みと言える(同じ画角を得るための焦点距離が半分になるためレンズの長さも半分で済み、またイメージサークルが小さい分だけ径も細いので重量も価格も1/3程度に抑えられている)。

ミラーレスはレンズが少ない

たしかに、各マウントの対応レンズ数を見るとキヤノンEFマウントやニコンFマウントは300を越える製品があるのに対し、ミラーレス機の対応レンズは多いものでも200を越えない。ただ、逆に言えば主要な機種では100〜200本ぐらいのレンズはあるのだ。比較すれば少ないとは言えるが、不足を感じるほどとは思えない。
じゃあなんでレンズが少ないと言われるかというと、恐らくは「135フルサイズ機を主力とするメーカーのAPS-Cなど小さいセンサー向けは」少ないから、だろう。上述のキヤノン製品で言えばAPS-Cミラーレス機用レンズはわずか40本しかない。ニコンは1インチセンサーのミラーレス機をラインナップしていたが、こちらはレンズ24本で打ち切られた。フルサイズもAPS-Cもミラーレスで展開するソニーα Eマウントでさえ、APS-C用は25本と少ない。
しかしAPS-Cが主力の富士フイルムXマウントは94本、オリンパスパナソニックの2社が中心となって展開するマイクロフォーサーズでは184本と、少なくとも本数を見れば充分なだけの厚みがある。

つまり要点は「ミラーレスvs一眼レフ」ではなく、「このメーカの主力はどっちなのか」でしかない、ということだ。もうちょっと自分の使っているメーカー以外も見てから言っていただきたいところ。

ミラーレスは部品が少ないから安い

たしかにミラーレスでは一眼レフで必須だったペンタプリズム(あるいはダハミラー)、跳ね上げ式のミラー、AFセンサーユニットやAEセンサーなどが不要になる分。しかしその代わりにEVFのある機種では液晶パネルが増えているし、また追従性を求めない一眼レフでのライブビュー撮影などと異なりミラーレスのEVFでは追従性確保のために表示更新速度の速さが求められ、また画像解析による機能性のためにも電子的な処理系の重要性が高い。したがって単純にミラーレスの方がコストが下がるとは言えないし、むしろ枯れた技術である一眼レフのボディ内光学系よりも発展を続けるミラーレスの電子系の方が常に新技術による更新が行なわれ価格が下がりにくいと考えられる。
具体的なコストの算出は容易でないが、少なくとも「部品が少ないからミラーレスの方が安い」とは言えないだろう。

ミラーレスと一眼レフのどちらが優れているか

両者は上下関係にあるものではなく、別の特性を持った製品である。あくまで各々の需要に応じて最適な性能を追求した結果としてそれぞれの機種に行き着くのであって、「ミラーレスは入門機、卒業して一眼レフへ」でも「一眼レフは時代遅れ、捨てて新時代のミラーレスに乗り換え」でもない。
ただ、どうもカメラ業界では「センサーサイズ大型志向」が強くあるようなので、それについては一言物申しておきたい。

センサーサイズはたしかに感度やノイズ耐性となって画質に表れる。その意味で大型志向が間違っているとは言わない。しかし、そのために犠牲にしている性能についても目を配るべきだろう。
コンパクトなカメラは画質や感度の面では確かに劣る部分があるだろうが、その代わりに「常に持ち歩ける」という重要な性能を手に入れている。撮りたいときに撮れる、それに勝る性能はない。たとえ優れた性能の道具であろうとも、手元にないものの価値はその時点では常に0だ。
これらは体感的なものであるから比較に表れにくいスペックだが、カメラを選ぶ時には意識しておいた方がいいだろう。とりわけ、これから始めようという人は日常的に撮影機会を増やすために小型なものから始めることをおすすめしたい。

また、一眼レフはファインダーに目を近付けて覗き込みながらの撮影となるが、普段スマホコンデジで画面を見ながら撮ることに慣れている人は、ファインダーを覗くよりも背面液晶モニタを見ながら撮る方がやり易い場合もある。ミラーレスにも、一眼レフ風スタイルを志向するものと背面液晶を重視するものがあるので、撮影スタイルに合った機種を探すといいだろう。

Lumix G 42.5mm/F1.7で撮ってみる

というわけで先日の「汎用に使えるレンズ」まとめで番外に入れた単焦点レンズを買ってみた。実はこれが初めての単焦点レンズ……じゃないな、よく考えてみたらMFTだけど7.5mm Fisheyeとか買ってたわ。でも中望遠の単焦点レンズは初めて……じゃなかった、オールドレンズだけど50mmを2本も買ってたわ。ということはオートフォーカス単焦点は初めて……じゃないな、そういえば30mm MACRO持ってたわ。

……いやまあその、とにかく単焦点である。これまで最も明るいレンズが50mm/F2のJupiter-8、オートフォーカスに限れば30mm Macro F2.8だったので、それより明るいF1.7は初めて、ということになる。

利点は明るさと軽さ。単焦点で、マクロのような特殊機能のない設計のため、所持している中ではGM1のキットレンズだった12-32mm(わずか70g)に次ぐ130g、E-PL8の本体重量と合わせても500gだ。これで手ブレ補正の強いPOWER O.I.S.、最短31cmまで寄れる倍率0.4倍という設計は、パナソニックのレンズラインナップ中では高級路線のLEICAブランドどころか新鋭のG-Xラインですらない唯のLumix Gとは思えないほど高機能である。まあオリンパスもキットレンズだった12-50mmがプラ鏡筒の安物ながら広角〜中望遠ズームかつマクロという謎の高機能レンズだったし、むしろ普及価格帯だからこそ、なのかも知れない。要するに撒き餌か。

その機能性に惹かれてつい買ってしまったのだが、実のところ別段なにか必要性があったわけではない。換算85mmに近い画角は既に持っている12-50mmでも45-175mmでもカヴァーでき、寄れるレンズとしても12-50mmと30mm Macroがある。軽いレンズだってGM1のキットレンズである12-32mmがあって、いずれもその方面のスペックでは42.5mmより優れている。唯一これまでにない性能はF1.7という明るさで、無論それこそが単焦点ゆえの利点なのだが、それがどの程度の違いを生むのかは正直よくわからない。

とりあえず機能的な比較から始めてみた。まずは30mm Macro F2.8と45-175mm F3.5-5.6を併用して、同じ被写体を同じぐらいに撮ってみる。

こうしてみると42.5mmはたしかに狭い範囲にピントが合って前後が強くボケるのだが、30mm Macroも同じぐらいにいい仕事をしており、F1.7でもF2.8でも大きな差を感じない。流石に望遠端175mmのF5.6はだいぶ硬いが、被写体が浮き立つ程度のボケは得られており、マクロ撮影がしたいのでなければ充分なぐらいだ。

ボケ以外に、明るさを活かせる使い方といったら暗所撮影だろうか。夜のスカイツリーを、橋の欄干に肘を付いて支えた状態で手持ちで撮ってみる。

3枚撮って一番マシなのを選んだが、シャッタースピード1秒で手ぶれ補正があれば撮れる範囲の42.5mm F1.7に対し、広角端45mm F3.5の6秒はおろか30mm Macro F2.8でも4秒と、とても実用にならない。
とはいえ夜景専用レンズというのも使い方としてはイマイチだ。三脚が必要にはなるが、夜景はむしろシャッタースピードを遅くして光を流すのがひとつの楽しさでもあり、そうするとF1.7の明るさは不要になる。

最短31cmを活かしてカップケーキも撮ってみたが、近いところで撮るときにはF1.7だとボケすぎる。
撮影距離にもよるが、だいたいF2.8〜4ぐらいまで絞ってちょうど良い感じか。

ここでもF1.7があまり活きていない。まあそれはそれとして、画角と撮影距離はなかなかいい感じだ。

逆光を入れてもハレーションは穏やか。こういう使い方には向くのか。

そんなわけで、ファーストインプレッションとしてはどうにも使い方の見出しにくいレンズという感じを受けた。もっとも、これは私が中望遠にも単焦点にも不慣れであることが大きく、決してレンズの魅力が弱いということではないだろう。
とにかく、買った以上はしばらく使ってみよう、とレンズをこれ1本に絞って色々撮ってみた。

望遠の利便性よりも不便を感じる「やや狭い」画角は、しばらく使っていると思ったより馴染んでくる。もちろん「もっと寄れれば」「もっと引ければ」と思うことは多いのだが、割り切って「これで切り取れる範囲を探す」ようになると、まあそれなりに雰囲気が出てきた。





意外だったのは接写だ。元々、水滴が好きでマクロレンズを使って撮影していたのだが、大きく写すことに夢中になるとどうしても他への注意が疎かになりがちでイマイチ良い感じに撮れない。
ところが42.5mmはそこまで寄れないので、その分だけ被写体を広く見ることになり、結果として主役が水滴自体から水滴を纏った花などに移り、雰囲気のある写真になる。

もちろん普通に花を撮っても、ボケ具合がいい感じに働いてくれる。

まだ手に馴染ませている最中だが、使い回しの利く単焦点としての活躍を期待している。

マイクロフォーサーズの汎用レンズを選ぶ

レンズ交換式カメラの利点は「必要に応じて最適なレンズを選ぶことにより撮影の幅が広がる」ことだが、欠点はその裏返し:「多数のレンズを使い分けねばならない」ことだ。すべてのレンズコレクションをいつでも利用できる状況ならば良いが、外出先などレンズの限られる時には「どれを持ってゆくか」が悩ましい。
それは購入時にも言えることで、予算に限りがある以上は少ないレンズで広い範囲をカヴァーしたい。それには、なるべく使い回しの効く汎用性の高いレンズがあると何かと便利だ。
マイクロフォーサーズのレンズラインナップから、様々な用途を想定した汎用性の高いレンズを探してみよう。

人を撮る

日常的によくある使い方かと思われるものの、個人的にはにまったく興味がないため曖昧な知識になるのだが、いわゆるポートレート撮影では一般的に「単焦点の中望遠レンズ」が良いとされる。
広角で撮ると強いパースがついてしまうため体のサイズ感が狂い、たとえば「頭が大きく体が小さい」感じに映るのは(特殊な効果としてわざとやるのでなければ)好ましくない。望遠の強いレンズはパースが付きにくいためこの用途に向くが、逆に被写体との距離が離れすぎてはポーズなどの指示が届かなくなるので、適度な望遠と適度な距離感を両立させるのがちょうど焦点距離にして85〜90mmあたり、ということのようだ。
また、単焦点が推奨されるのはズームレンズより明るく背景をボカしやすいためで、人物だけを浮き立たせるのに適するからだ。

従って人物撮影のみを目的とするならば42.5mm(換算85mm)あるいは45mm(換算90mm)の単焦点を選ぶところだが、今回は「汎用の一本」を選ぶことが前提なので「この範囲を含む(なるべく明るい)ズーム」で妥協しよう。

焦点距離80〜100mmを範囲に含むズームレンズは20本以上あるが、明るいレンズとなると限られる。

  • 全域F2.8
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
    • Panasonic : LUMIX G X VARIO 35-100mm F2.8 Ⅱ POWER O.I.S.
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
  • F2.8-4.0
    • Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.
    • Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.
  • 全域F4
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

あたりになる。これ以外はF3.5-6ぐらいになってくるので、あまりボケの強いレンズではない(もちろん、それらでは撮れないということはないのだが)。

料理を撮る

料理を撮るために最も重要なスペックは「最短撮影距離」だ。
椅子に座った状態で、目の前に置かれた料理と手の距離は10cmぐらいしかない。やや体を引くぐらいの自由度はあるとしても、カメラと被写体の距離はせいぜい30cm前後の範囲で撮影することになるだろう。それ以上となると席を立って離れた位置から撮影せざるを得ず、仕事でならばともかく客としてやることではない。

というわけで最短撮影距離が40cm未満のレンズを探そう。
ただしズームレンズなので全域でこの撮影距離が有効とは限らず、広角側では短かくとも望遠側ではもっと長くなる場合もある。全域で40cm未満のレンズのみに絞ると、

  • 全域0.2m
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
    • Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.
  • 0.2-0.25m
    • Panasonic : LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ
  • 0.2-0.3m
  • 0.2-0.35m
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ
  • 全域0.25m
  • 0.25-0.3m
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R
  • 全域0.3m

に限られる。
もっとも、全域でなくとも最短撮影距離30cm以内であれば撮りようはあるわけで、

  • 0.15-0.45m
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
  • 0.22-0.7m
    • OLYMPUS:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3
  • 0.3-0.5m

も加えていいかも知れない。

花を撮る

花や虫など、屋外で小さなものを撮る時に必要なのは「近くまで寄れる」ことではなく「大きく写せる」ことだ。もちろん寄った方が大きく写るのだが、望遠で「あまり寄らずに大きく写す」のでも(それが可能ならば)問題はない。
主なマクロレンズについてはマイクロフォーサーズ マクロ撮り比べ - 妄想科學倶樂部でまとめたが、取り上げたのは12-50mmを除けばいずれも単焦点マクロレンズのみであるので今回は除外して、ズームレンズで撮影倍率0.5倍以上のものを探す。

  • 倍率x0.72
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ
  • 倍率x0.6
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
    • Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.
    • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
  • 倍率x0.54
  • 倍率x0.52
    • Tamron: 14-150mm F/3.5-5.8 Di III Model C001
  • 倍率x0.5

風景を撮る

風景はちょっと難しい。というのも、「近い位置から全景を広く撮りたい」場合と「遠い位置から近付けない場所を撮りたい」場合が混在するからだ。前者は広角レンズの、後者は望遠レンズの守備範囲で、両方をカヴァーするのは結構難しい。
焦点距離何mm以下を広角とし何mm以上を望遠とするか明確な定義はないが、便宜的に換算28mm以下の「ちょっと広い」範囲から100mm以上の「ちょっと遠い」範囲までを手広くカヴァーしてくれるレンズを探す。
このタイプのレンズ群は大雑把に「わりと広くてちょっと長い」「ちょっと広くてかなり長い」に分かれる。広角端が12mmからあるけど望遠端が60mm程度のものと、広角端は14mmとやや物足りないものの望遠端が140mmぐらいあるものだ。その中間に12-100mmというちょっとスゴいレンズが挟まる。
2019年、12-200mmという、さらに超高倍率のレンズが加わった。

  • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ
  • Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.
  • Panasonic : LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.
  • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
    • OLYMPUS:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3
  • Panasonic : LUMIX G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.
  • Tamron: 14-150mm F/3.5-5.8 Di III Model C001
  • OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6Ⅱ

なお「車を撮る」場合もだいたい広角〜望遠域を押さえておけばいいと思う。広角側で撮るとパースが強調され「迫力ある」写りになり、望遠側で撮ればパースを抑えて歪みの少ない、ただし長さ方向が圧縮された写りになる。どちらが好ましいかを場合によって使い分けることができる。

総じて優れたレンズを探す

以上から、多くの場面で使い回しの利きそうな便利レンズを絞り込む。つまり、スペック的には

  1. F値が4以下
  2. 最短撮影距離が0.4m未満
  3. 撮影倍率が換算0.5倍以上
  4. 焦点距離が換算28mm以下〜100mm以上

のうち、少なくとも3点以上を満たすレンズである。

なお、これらはあくまでカタログスペックからの抽出なので、実際の使用感などが汎用と言えるかどうかはまた別の話ということで。

OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO

【明るさ】F2.8【最短撮影】0.2m【撮影倍率】x0.6倍【焦点距離】換算24-80mm
望遠側が僅かに物足りない以外ではほぼ満点のレンズ。特に明るさはズームレンズ中随一、最短撮影距離も撮影倍率もトップクラスである。敢えて欠点を挙げるとすれば価格が高めであることと重いことぐらいか。とはいえ実売7万円台、400g未満と性能を考えれば充分に手軽な範囲ではあるのだが。
レビューと作例

OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ

【明るさ】F3.5-6.3【最短撮影】0.2m【撮影倍率】x0.72倍【焦点距離】換算24-100mm
こちらは逆に最安価クラスにも関わらず明るさ以外ではトップクラスという謎レンズ。マクロモードの切り替えが煩わしいという意見もあるが、その代わりに2万円以下、200g程度のレンズで0.72倍のセミマクロと換算24mm-100mmという汎用性の高い焦点距離が手に入る。
何故か生産終了になってしまったらしいのだが、キットレンズで出回ったこともあり未だ入手は容易。
レビューと作例

Panasonic : LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.

【明るさ】F2.8-4.0【最短撮影】0.2m【撮影倍率】x0.6倍【焦点距離】換算24-120mm
イカの名を冠したハイスペックレンズ。価格は高めだが、その分だけ全領域について対応できる汎用レンズである。今回挙げた全項目を満たせるレンズは、これの他にもう1本しかない。
レビューと作例

Panasonic : LUMIX G VARIO 12-60mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.

【明るさ】F3.5-5.6【最短撮影】0.2-0.25m【撮影倍率】x0.54倍【焦点距離】換算24-120mm
こちらは明るさを捨てライカの名を捨て、その代わりに重さが2/3、価格が半分になった廉価版。安物とはいえ上位種と遜色ない性能を持つお手軽レンズ。
レビューと作例

OLYMPUS : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

【明るさ】F4.0【最短撮影】0.15-0.45m【撮影倍率】x0.6倍【焦点距離】換算24-200mm
もう1本の満点レンズである。明るさではF4と一歩劣るが、その代わりに全域で明るさが変化せず、広角24mmから望遠200mmというカヴァー域の広さは魅力的。ただしお値段12万円台、重量561g、長さ116.5mmと色々ヘヴィー級。でもまあ、いわゆる「小三元」2本分がひとつになったレンズだと思えば納得ではある。
レビューと作例

Panasonic : LUMIX G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.

【明るさ】F3.5-5.6【最短撮影】0.3-0.5m【撮影倍率】x0.5倍【焦点距離】換算28-280mm
やや広角-超望遠域をカヴァーする高倍率ズームレンズはオリンパス/パナソニック/タムロンと3本も出ているが、その中でパナソニックの14-140mmは他の2本に比べ若干望遠が控え目な代わりに、最短撮影と撮影倍率がギリギリ条件を満たしランクイン。
レビューと作例

番外1:Panasonic : LUMIX G 42.5mm F1.7 ASPH. POWER O.I.S.

【明るさ】F1.7【最短撮影】0.31m【撮影倍率】x0.4倍【焦点距離】換算85mm
単焦点のため今回の趣旨からは若干外れるのだが、焦点距離を広く使えないこと以外ではほぼ要求水準を満たしていたため番外で紹介する。
ポートレート向けの中望遠レンズなのだが、この焦点域にしては珍しく最短撮影距離が短かいため撮影倍率も高めで、風景写真向けの画角以外の点ではかなり使い勝手の広いレンズと言える。もちろん単焦点なので明るさでは群を抜いており、暗所での撮影や綺麗なボケの欲しい局面で重宝するだろう。単焦点で一本持ち歩くならオススメしたい。
レビューと作例

番外2:OLYMPUS:M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3

【明るさ】F3.5-6.3【最短撮影】0.22m(広角端)/0.7m(望遠端)【撮影倍率】x0.46倍【焦点距離】換算24-400mm
12-100mm PROから4通しのF値を捨てた代わりに換算400mmまでの充分すぎる望遠性能に振った、超便利ズーム。明るさこそ基準外ながら、撮影倍率は(今回の合格ラインには若干不足するものの)x0.46倍と充分に寄れ、その上で24-400mmという超広範囲をカヴァーする万能ぶり。しかもプラ鏡胴なので軽量コンパクトかつ安価……とはいえ単純に1本のレンズ価格としてはお高めなのだが、でもまあ3本分以上の働きをしてくれると思えば安いものか。
レビューと作例


あるいは、(マクロ記事の方で詳しく触れたので名前の紹介のみに留めるが)LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S.を使ってもいいかも知れない。こちらは換算90mmでF2.8なのでポートレートにも悪くないし、もちろん最短撮影距離や撮影倍率も申し分ない。

酒蔵と女人禁制

「酒蔵が女人禁制であったのは差別ではないか」とする問いに、「女性は糠床を触るため酒蔵の菌に影響が出るから」と杜氏が答えた、という話がまことしやかに広まっている。
togetter.com
伝聞につき元発言者である杜氏の意図するところが差別性の否定であったかどうかは不明だが、少なくともTwitterの発言者は「女人禁制は差別にはあたらない」という意図でこれを書いたものと思われ、またTogetterまとめ主は明確にそれを意図している。
しかし、「差別にあたらない」とする理由としては些か納得しかねたので、ひとつ書いてみたい。

酒と発酵食品の関係性

発酵食品、たとえば酒やチーズ、漬物、ヨーグルトなどはいずれも微生物が重要な役割を担っており、製造所ごとの微妙な味わいの差もそうした常在の細菌叢の違いによって生じている。ここに「強い」細菌が持ち込まれると、それによって本来あるべき細菌が駆逐され発酵が失敗、場合によっては倉ごと終わりを迎えかねない事情があり、注意を払わねばならぬのは確かであろう。とりわけ納豆菌などは重大な禁忌のひとつだ。
しかしそれが「女人禁制」を正当化するか、という話になると少々込み入ってくる。

仮に「女性は糠床を触るため酒蔵の常在細菌叢に影響が出る」のだとして、じゃあ何故「女性だけが」糠床を触るのか、といえば「家事の一切は女の仕事」という認識のせいであろう。「男は家の外で働き金を稼ぎ、女は家の中で働き男の稼ぎによって『食わせてもらっている』」という認識の差別性は今更説くまでもあるまい。
「ゆえに女は酒蔵への立ち入りを禁ずる」のは、それ自体は直接的には差別的意図でなかったとしても、差別構造によってその必要性が維持されてきたのだとすれば、やはり差別のひとつではあろう。
まあ、(これが理由だとすれば)あくまで「日本社会全体の男女差別性」であって「酒造業の差別性」ではないので、もちろん「杜氏に女性を差別する意図があった」ということにはならない。

微生物による発酵という現象が解明されたのはごく近代の話であり、それまでの発酵は「こうやると何故かそうなる」という純然たる経験則の賜物である。チーズの青カビ/白カビや日本の醤油・味噌・酒などに共通するコウジカビあたりは目に見えるので認識があったにしても、糠漬の乳酸菌や納豆の枯草菌などを認識していたわけではない。したがって糠床の乳酸菌云々は、経験の蓄積があったとしてもせいぜい「なぜか女が蔵に入ると失敗する」ぐらいのところであり、明確に「女は糠床を触るから」と認識されていたわけではない。
そもそも現代のように多くのデータを集め因果関係を明らかにするような「科学的思考」など成立していない時代の話であるから、実際に「女性が立ち入ると失敗するから」であったかどうかさえ怪しく、糠漬と酒造(の失敗)にある程度の関係性があったとしても、「女人禁制であった理由」がそれであるとも限らない。
「女だけが糠床を触る」のが現代の視点では女性差別であろうとも当時の認識では当然のことであったのと同じように、現代から見た後付けの「合理性」が、実際に合理的理由から成立していたかどうかは怪しい。

だいたい、日本酒の醸造でも糠漬と同じく乳酸菌が主要な役割を果たすのだ。ならば酒蔵と糠床を行き来する女性の「持ち込む」乳酸菌は基本的に酒蔵のそれと同じ種であろうと考えられ、それが原因での失敗というのは可能性が低いのではないだろうか。もちろん、醸造の段階に応じて支配的な細菌種が変化するので「今このタイミングで乳酸菌はまずい」ということも考えられないわけではなく、それが理由だとする説を完全に否定するものではないが。

ところで日本の発酵食品といえば酒以外には味噌・醤油、納豆、漬物などが想起される。このうち「他の細菌よりも強い」納豆、「家庭で女性が扱う」漬物はさておき、味噌および醤油蔵に於いても女人禁制の決まりがあるのだろうか。
たとえばGoogleで酒蔵あるいは酒造かつ女人禁制で検索すると6万件強のヒットがあるのに対し、味噌醤油あわせても400件強と、酒と違って圧倒的に少ない。つまり「酒蔵には女人禁制のイメージが強くあるが味噌や醤油ではそのイメージは小さい」ようだ。無論これらは女人禁制があることもないことも意味しないが、どちらもコウジカビを用いた醸造には違いないのに、この差は興味深い。
何故そのような差が生じたのかを考えるに、恐らくは「神事」との関係性ではないかと思い当たる。

酒は古くから神事に用いられており、今でも神棚には神酒を供え、また酒造をそれ自体が神事となっている場合もある。
血を穢れと見做すことの多い神道では女人禁制が多く見られることは知られる通りだが、酒もまた神事としての酒造から女人禁制のイメージが強く存在したのかも知れない。
対して味噌は、奉納神事がないわけではないがごく限定的であり、醤油に至っては(元々は味噌の副産物であったためもあろうか)そもそも神事がない。
……ただ、本当に「神道からの影響」かどうかは断言できない。神道に女性が関わらないということはないし、神事に於ける酒造についても女性が関わる事例があるわけで、あくまで「そういう可能性もあるかも知れない」程度の話だ。

酒造と女性の関係性

上では神事との関わりから女人禁制に至った可能性を指摘したが、しかし実際のところ酒造が昔から女人禁制であったわけではない。
杜氏という男性職人集団による酒造りの体勢が成立したのは江戸時代に入ってからだ。米本位制経済制度の安定を目的に江戸幕府は酒造規制を乱発したが、その中に「寒造り以外の禁止」がある。
元々、酒は年に5回の仕込みが行なわれる年中醸造だった。しかし江戸初期にこれを冬の間のみに制限する寒造り令が出され、これを機に冬季の出稼ぎ職としての杜氏が成立するに至った。つまり、それまで酒は杜氏が造るものではなかったわけだ。
そもそも杜氏(とじ、とうじ)という言葉自体、元々は刀自(とじ)から来ている。これは現在では老女の尊称として使われる言葉であるが、元は戸主(とぬし)であったといい、家事一般をとりしきる主婦、あるいは宮中で台所をとりしきる下女を意味する。
ここからも解るように、酒の醸造は元々は女の仕事であったのだ。神事に於いても口噛み酒は巫女の役割とされるし、9世紀に出された律令である「養老令」を解説した令集解(りょうのしゅうげ)に於いても、造酒司(みきのつかさ)で酒を造る際には後宮から官女が出向くことになるとあり、古くは神事の酒も女性が司っていたことが伺える。
それが男の仕事へと変じていったのは江戸時代に入ってからのことであり、だとすれば酒蔵に於ける女人禁制の成立もまた江戸時代以降の新しい「伝統」に過ぎないということになる。それまで永きにわたり女性が関わってきたものが、近代になって男性の仕事になったことで女性が遠避けられたのであれば、その理由が「漬物の乳酸菌で醸造が失敗するから」といった「合理的な」理由であるとは考えにくく、むしろ「差別的な」理由であったと考えるのが妥当であろう。

まとめ

・「微生物のせいで醸造が失敗するから」女人禁制だという説は怪しい
・酒造りが男性の仕事になったのは近代のことで、伝統的なものではない
・酒蔵の女人禁制は神道方面からの影響かも知れない(が不明)

宗教的なことに合理的な理由を求めても仕方のない部分はあるが、食品製造業としての酒造が女人禁制を貫くようであれば差別的との謗りは免れ得まい。無論現代ではそんなことは行なわれていないはずで、過去にどうだったのであれそのころで現在に於いて非難されるべきではない。
ただ、「過去の女人禁制が合理的であり女性差別ではない」との見解に対してはきっちりと反論しておきたい。