本好きの、本好きによる、本好きのための「本好きの下剋上」

「本好きの下剋上」を、公開分まで読み切った。あまりに面白かったので書籍版もKindleで揃えて、また最初から読み直している。一作品をじっくり読むより次々に濫読する方を好む私としては小説をこのように読了後すぐに読み返すことはほとんどないので、気に入りようがお解り頂けるだろうか。

活字中毒者の幼女

最初のうち、主人公はちっとも魅力的でない。本がないことに絶望しているから世界に馴染もうとせず、どうにかして本を作り出そうとする余り空回りしては周囲を困らせるばかりで、家族や近隣の人たちだけでなく読者から見ても身勝手だ。
それが転機を迎えるのは書籍版だと1巻の終わり頃、幼馴染の男の子が商人見習いになるのを助けるくだりである。その子に協力する時点で既に当初よりは関わりを得ているのだが、ここで初めて自分の持つ異世界の技術知識に高い価値があることを自覚し、本のために積極的に動くことを決意する。同時にそれはこの世界に腰を据え、きちんと周囲に関わってゆくこうとすることでもある。いつしか「見知らぬ他人」ではなく身内といえる関係が築かれ、当初の身勝手だった印象は影を潜める。

しかし本──のための製紙と印刷の技術──は「高い価値」というレベルの話ではない。それまで1頭の羊から1ヶ月かけて2枚程度しか得られず、すべてのページを手書きで作り上げていた貴重品を一気に量産し、庶民にも手の届く嗜好品として普及させようと望むならば、産業構造をひっくり返し社会基盤から変革する必要がある。それは一平民が手掛ける範囲を大きく逸脱している。必然的に主人公は貴族社会に近付き、否応なく取り込まれることになる。それはまた、身分の壁によって親しい者と距離を取らされることをも意味する。

この「主人公が社会を受け入れ、社会が主人公を受け入れる」「異なる社会に足を踏み入れ、同時に以前の繋がりを少しづつ失う」という流れは、その後も繰り返し描写されることになる。
普段は本まっしぐらな主人公が巻き起こすドタバタが笑いを誘う分だけ、不意に訪れる別れのしんみりした描写とのギャップは胸を締め付けるものがある。

魔術社会

魔術が実在するならば、それが社会構造に影響しないはずがない。「本好き」世界では契約に強制力を持たせる魔術や登録された住民とそれ以外を識別する魔術など、社会基盤に魔術が組み込まれている。
また「魔力を有し魔術を行使できるのは(基本的に)貴族だけ」という形で身分差のある支配構造に意義が生じ、同時に「高速な移動/情報伝達技術がありながら中世程度の社会レベルに止まる理由」も明らかになっている:高速伝達のできない平民間では技術が拡散しにくく、また貴族の技術は魔力のない平民には応用できないため、「平民が技術を発明し社会に変革をもたらす」ことがほとんどないのだ。
このように社会構造に魔術が深く関わっているという設定が、平民の主人公が貴族社会で潰されぬ立場を得ることにも繋がり、また政治的混乱による世界への影響にも繋がっている。物語上の要請と設定上の帰結が相互に作用して、複雑で魅力的な描写を生み出していると言える。
魔術の礎を為すのは神話に準じた祈祷であり、そのため貴族の挨拶や会話には高頻度で神話由来の言い回しが登場する。たとえば「フリュートレーネとルングシュメールの癒やしは違う」というのは同じ癒しの魔術でも水の女神であり不浄を清めるフリュートレーネの力と、その眷属で傷を治すルングシュメールの力は異なる=「それはそれ、これはこれ」の意味で用いられるし、「時の女神 ドレッファングーアの紡ぐ糸が重なった」ならば再会を、「時の女神 ドレッファングーアの紡ぐ糸が重なることはない」ならば決別を、「時の女神 ドレッファングーアの紡ぐ糸が重なることがあれば」なら婉曲的な断りを示すなど、背景設定として詳細な神話があり、それが生活に浸透していることを伺わせる描写となっているのも面白い。

本好きのためのメタ構造

元々、異世界転生というテンプレートには「読者と同じ現代日本人視点で描写できるため、現地住民視点よりも共感しやすい表現が可能」という利点があるが、「本好き」の場合は更に読者の属性を絞り込んで一段深まったメタ構造を獲得しているように思われる。
寝食を忘れて読書に没頭する主人公の話を読む側が思わず徹夜してしまい、主人公が本好きを増やすために仕掛けた「続刊待ちの罠」を読む側が続きを待ち焦がれる。活字中毒者メタ視点である。

作者の執筆速度は割合早い方で、ほとんど日刊ペースで連載されている。Web上では現在のところ第5部が連載中で、書籍版では1部あたり3冊構成だから相当な分量だ。1部終わるごとに主人公の社会的立場が一段上がる感じになっているので、恐らくは7部ぐらいまでは続くんじゃないだろうか。
なお書籍版では文章がリライトされて一部のストーリーが整理されたり誤字や多少引っ掛かる言い回しなどが修正されているほか、主人公以外の視点で語られる閑話部分が自己紹介から始まる一人称視点ではなく三人称視点での描写に書き変わっていたり、本編には含まれない書き下ろしサイドストーリーが追加されていたりするので、是非そちらでも読み直されたい。
また「なろう」にも設定系のまとめページがあるが、他に有志によるWikiも作られ情報が纏まっているので、不明点などはその辺りも参照しながら読み進めるといいかも知れない。ただしネタバレ注意。
www8.atwiki.jp

異世界ひとりDASH村(ただし本限定)「本好きの下剋上」

「小説家になろう」で大勢を占める異世界転生チートものの中で、ちょっと異彩を放つ作品である。
ncode.syosetu.com
特徴的なのは「中世ヨーロッパ風世界であること」「(中身が)現代日本人という設定が描写に生きていること」「チートというより苦労話であること」か。

ファンタジーといえば「中世ヨーロッパ風」と相場が決まっているが、その実ほとんどの国産ファンタジー世界は近世〜近代だ。窓にはガラス、鋼の武具、乗りごこちの良い馬車、陶器の皿、遠洋を航海できる船などは、中世には存在しない*1。領主が領民を支配し、宗教の影響力が極めて強く、その一方ではまだ地方に残る土着信仰も根強い、そんな時代である。
中世初期のイメージなら「ヴィンランド・サガ」、後期だと「ホークウッド」などが参考になるだろう。「チェーザレ」なども中世といえば中世なのだが、ルネサンス期は中世から近世への移行期であり様々な発明・発見が産まれ時代が大きく変わってゆく時代なので、標準的な中世のイメージとは些か異なる。

「本好きの下剋上」は、何をするにも木を削って道具を作り、夜間の明かりは獣脂から作る蝋燭、紙といえば庶民には手の出ない羊皮紙、そんな世界で、かなり前期中世の雰囲気に忠実なようだ。もっとも社会構造については、序盤はごく狭い範囲しか見えていないので実際がどうなのかはよくわからないけれども。

異世界転生というテンプレートにはいくつかの利点があるが、その一つが「読者と同じ現代日本人の感覚で異世界を描写できる」ことだろう。比較校正するための「標準」を読者と主人公が共有していることで、差違を明瞭にすることができる。
たとえば異国の料理を、それを日常的に食べて育った人は「普通の味」としか感じないが、日本人が食べれば「食べ慣れない複雑な味」になり、それが何なのかを分析し、あるいは過去の経験から似た料理を思い浮かべる。
たとえば現代文明から遠く離れた生活を、その地の人は特段苦にするわけでもない「普段通りの暮らし」だが、日本人にとっては耐えかねる気候であったり衛生状態であったり、重労働であったりする。そういった意識の差がありありと描かれており、苦労が想像できる。

タイトルの通り、主人公は本好きで、そして転生先は本が個人では入手どころか見ることも叶わぬ世界。自らの境遇を確認した主人公がまず行なうことは「本を作る……ための紙を用意する」ことだ。現地で、虚弱な子供がどうにか手に入れられる限りの材料だけで、どうにかして紙を作り文字を書こうとする、その様はちょっとDASH村っぽくもある。本好き故に様々な知識があるとは雖も、まさか紙を自作することになるなどとは想像もしていないわけで、その辺りはうろ覚えの知識を元に試行錯誤。エジプトに倣い草の茎からパピルスめいたものが作れないかと考えてみたり、シュメールに倣い粘土板に文字を刻んでみたり……
とか思ってたら、

いつだったか、村作りをしていたアイドルらしくないアイドルがテレビ番組で紙を作っていた。アイドルにできて、わたしにできないはずがない

本編にも書かれてた。
もっとも、流石に道具も材料もすべて手探りで独自開発というのは条件が厳しすぎるようで、途中からは段々、自作の工夫よりも交渉が主体になってゆくようだが、その分だけ人との関わりが増えて面白さは加速する。

チートっぽさはむしろ「(日本人だった頃に)母親のオカンアート趣味に付き合わされた」手芸方面の経験と、そもそも「学習」の経験があることに依っている感がある。言葉で読むよりも図で見るよりも、実際に作ってみる方が理解は早いものだ。

まだ序盤しか読んでいないので今後の展開次第な面はあるけれど、期待を裏切られそうな感じはしない。これなら書籍化も納得できるというもの。

*1:まあひとくちに中世といっても1000年ぐらいあって時代ごとに状況も異なるし、「どこまでを中世とするか」によっても多少違ってはくるが

ノベルゼロの初回刊行分をサンプリング

KADOKAWAが新レーベルを創刊した。ノベルゼロ、主に30代の男性をターゲットとした「大人向けライトノベル」的位置付けである。
novel-zero.com
装丁は無地で、上1/3には黒文字だけ、下2/3を絵入りの大帯で覆うという「ライトノベルっぽさとライトノベルっぽくなさを併せ持った」デザインパターンはなかなか洒落ている。
とはいえ本の価値は見た目ではなく中身で決まる。普段あまりライトノベル系を読まないので作者についての前知識もなく、短かい紹介文のみで判断するのは流石に厳しかったので、とりあえずKindleのサンプル版をダウンロードしてみることにした。

個別評

三浦勇雄「皿の上の聖騎士」

伝説の甲冑が纏われた瞬間、新たな神話が開闢る。

フィッシュバーン家には伝説がある。大国レーヴァテインがまだ小さな辺境国だった頃、ご先祖様が大陸中の霊獣を訪ね歩いて防具を授かり、集まったそれらは一着の聖なる甲冑と成った。
――それが全ての始まりだった。

近世ヨーロッパ風の純異世界ファンタジーな「勇者の子孫」もの。ただし能力も武具も、受け継いだのは主人公ではなく姉。読める範囲では武具の来歴と姉の人となりぐらいしか語られないので、面白い展開になりそうかどうか判断しかねる。硬い口調だけど積極的に弟をかまう姉と、それに反発というか逃げたがる弟の姿は割合キャラ色強めな感じか。

師走トオル「無法の弁護人」

この弁護士の策略(トリック)に、誰もが騙される――

理想に燃える新人弁護士の本多は、初めての刑事裁判で苦戦を強いられていた。やむを得ず彼が助力を求めたのは、「他人のウソを見破れる」とうそぶく不敵な男、通称“悪魔の弁護人”だった――。

法廷ものと思われる。ミステリ系なんだろうか。若く頼りない弁護士が「悪魔の弁護人」を訪ね……というところまででサンプルは終わってしまうので、正直面白くなるのかどうかよくわからない。

杉井ヒカル「ブックマートの金狼」

元トラブルシューターの書店店長が裏社会の問題に挑む――

東京・新宿のど真ん中に位置する『くじら堂書店』店長を務める男・宮内直人はかつて伝説的チームを率い、裏社会にまで名を轟かせた元トラブルシューターだった。そんな彼の元に、久々の《トラブル》が舞い込み……?

冴えない雇われ店長だけど実は高い戦闘力を……というところまではわかった。最初は本の話ばかりなので本好きとしてはちょっとばかり好感度上がる。とりあえずサンプル段階で物語が「動いた」感が得られたところも好感触。

伊藤ヒロ峰守ひろかず「S20/戦後トウキョウ退魔師」

ソノ男共、怪力乱神ヲ語ラセズ

敗戦後の混沌とした日本を生き抜く男が二人、おりまして、その名、茶楽呆吉郎と襟之井刀次と申します。不死の呪いに機械仕掛け。そんな二人が掲げる看板は、『不思議問題解決承リマス』

オカルト系の異能バトルものか。個人的には文章がやや装飾過剰に思われるのと、いかつい筋肉系と怜悧な美貌系で見た目と役割が逆っぽいのがなんか引っ掛かったが、その辺はまあ好みの問題。

青木潤太郎「インスタント・マギ」

青年の《科学》が《魔法》に到達した日、彼を巡る魔法使いの戦争が始まった。

科学者の青年が、魔法陣の映像電子ドラッグで脳にストレスを加え、一時的に超能力者《インスタントな魔法使い》になる方法を発明した。それが原因で、青年を巡る本物の《魔法使い》の戦争が引き起こされてしまい……?

「魔法を科学(っぽいもの)で説明しようとする」のはライトノベルとは相性の良い分野で、脳科学方面となればシュタインズ・ゲートなどの「想定科学」系好きにも縁浅からぬ感じだ。そのへん期待できるが、サンプルの範囲ではほとんど「美少女魔術師と頭の良い青年の同棲もの」。

扇友太「竜と正義」

人魔調停局実働部--捜査開始!

人間と魔物が共存する現代。人魔社会の平和維持のため、調停局の新人実働官ライルは今日も事件と、上司であるオーロッドの叱責と戦っている。第9回MF文庫J新人賞・最優秀賞受賞作が加筆修正、完全版として登場。

どうやら「モンスターデイズ」というタイトルで刊行された作品のリライトらしい、「人と魔が混じり合って暮らす社会」の捜査官もの。なかなか好みの設定だし勢いも悪くない。今回の6サンプルの中では一番楽しめたぐらいだが、どうにも「魔物が人に変化して一緒に暮らす」という社会の描かれ方が気になって仕方ない……「なんでヒトに合わせる形で融合してるんだ」というのと「なんで主要キャラ紹介イラストぜんぶ人型で描かれてるんだ」というのと。

総評

昨今のライトノベルの平均的な文章力がどの程度なんだかほとんど知らないので判断は難しいが、総じて力量に定評のある作者を擁立している感じはある。あからさまにチートハーレムっぽかったりしないのは「そういうのに飽きた」ぐらいの、しかしがっつりSFとかに移行するほどでもないぐらいの読者層を狙ってる感じなんだろうか。30代向けとはあるが、執筆予定者の中には水野良友野詳秋田禎信など1990年代前半のライトノベル初期を支えた名も挙がっているあたり、あのころ中高生ぐらいだった30代後半〜40代前半ぐらいもターゲットなんだろう。
今のところ、買って続きを読んでみるとしたらインスタント・マギか(ただ「美少女と同棲」てあたりが正直ちょっと私にとっての地雷感あって引っ掛かっている)、ブックマートの金狼かな……

ディストピアを歌おう

Amazarashiの「古いSF映画」という曲がある。

amazarashi - 古いSF映画(Furui SF Eiga)

すでに世界は汚染されて マスクなしじゃ肺がただれて
瓦礫の如きメトロポリス 未開の惑星みたいな地球
逃げ込んだ先は地下室 ただし80000km2の
昔はシェルターと呼ばれていたが 今じゃ都市と呼んで差し支えない
人工太陽 人工植物 そもそも人工じゃないものはない
ほぼ人間と変わらぬAI 誰もそれに疑問は抱かない

特定の映画を指すものではなく(元となった作品はあるだろうが)あくまで「かつて描かれたディストピア世界」という漠然としたものを歌っているのだが、これほどストレートにディストピアを表現するものはあまり聞かないな、と思ってふと「そもそも他にディストピアの歌はあるのか」が気になった。

まず私のライブラリをざっと眺める。滅びや歪みを歌うものは少なくないが抑圧的なもの(あるいはそれへの反抗)を併せ持つものはあまり見当たらず、あるとしてもディストピアというより「反戦」方面のテーマに思われる。たとえば人間椅子はおどろおどろしくはあっても絶望的でなく、ナチュラルに絶望を歌に乗せてくる谷山浩子やたまは奇妙な世界ではあっても抑圧された社会ではない。意外にディストピアというのは難しい。
たぶん所有曲の中で一番ディストピアっぽいイメージなのはMOONRIDERS「歩いて、車で、スプートニクで」あたりではなかろうか。

記憶のすべて 置いて行けるか 来たるべき知性に
記録のすべて 白紙にするか 去り行く怪物

具体的にこれは、というほどの内容ではないのだけれども。
曲調で言えば「物は壊れる 人は死ぬ 三つ数えて目をつぶれ」もいいような気がするが、こちらはもっと内省的な感じの歌なのでなんか違う。

次にGoogleで「ディストピア 曲」を検索してみた。結果から抜粋する。

暗めの曲ウケが良いボカロ系が多いのはなんとなく予想通りだが、アイドル系の曲が多いのは予想外。ただ、ざっと歌詞を検索してみた限りではどちらもあんまりディストピア感なさそうだった。そもそも曲調に暗さがない。
ボカロといえば、タイトルに入ってないので検索にかかっていないが「こちら、幸福安心委員会です。」はディストピア系か。明らかに「パラノイア」モチーフだし。

ご紹介頂いた情報を追記。そうそう、こういうのが欲しかったんですよ。


ところで「古いSF映画」の歌詞のモチーフとなったディストピアSF、うちひとつが
ブレードランナーなのは確実だろうと思うけど、「人類が住めなくなった地上を捨てて地下に移住する」作品ってどれなんだろう。私の知識範囲では「エンバー 失われた光の物語」ぐらいしか出て来なかったが、もっと古い作品がありそうな気はする。

『エンバー 失われた光の物語』予告編
ざっと過去の映画から「荒廃した地上と地下生活を送る人類」な感じのものをピックアップしてみた。

  • ラ・ジュテ - Wikipedia
    • "第3次世界大戦後のパリは廃墟と化し、戦争を生き延びた数少ない人類は、勝者の支配者と敗者の奴隷に別れ、地上から地下へ逃れて暮らしていた"
  • メトロポリス (1927年の映画) - Wikipedia
    • "ゴシック調の摩天楼がそびえ立ちメトロポリスと呼ばれる未来都市では、高度な文明によって平和と繁栄がもたらされているように見えたが、その実態は摩天楼の上層階に住む限られた知識指導者階級と、地下で過酷な労働に耐える労働者階級に二極分化した徹底的な階級社会だった"
  • 映画 来るべき世界 - allcinema
    • "英国の架空都市エヴリタウンが突然敵機の襲撃を受け、以来20年の戦争が続き、町は独裁者の支配下となる。だが、その体制も自由都市の支援攻撃で滅び、伝染病の猛威などを乗り越え、エヴリタウンは超近未来都市を地下に建設"
  • 少年と犬 (映画) - Wikipedia
    • "核戦争により世界は荒廃し、文明社会の名残は微塵も残っていない。放射能が原因の遺伝子異変で、地上にはほぼ女性がいなくなってしまっていた"
    • "地上とは違い戦争も飢えもなく、男たちと共に多くの女性たちが暮らしているという地下社会"
  • ダークシティ - Wikipedia
    • 地下世界モノではないけど、"町全体は太陽のない“闇”に支配されている"
  • THX 1138 - Wikipedia
    • "人名すら番号で管理されている25世紀。人々は広大な地下都市内で支給される精神安定剤を服用しながら、感情も娯楽も規制された単調な日常を送らされていた"

スプラトゥーンは10年戦えるか

Splatoonが10年戦えるコンテンツとか冗談キツいという匿名記事を見かけたので。賛否はともあれ論点が綺麗にまとまっているので考えやすくていい。

疑問1と2はだいたい同じだ:「新しさを加えた続編を作るのが困難ではないか」「かといってアップデートを継続するのも無理がある」。これに関しては、「(実質的な)有料アップデートとしての続編」という可能性が指摘できるかと思う。
つまりギア、対戦ステージ、ヒーローモードなどを一新──というか前作のそれも引き継ぎつつ同程度のヴォリュームを追加──するだけでも充分に魅力的な続編たり得る。まあその手がどこまで続けられるか、というのはあるが、少なくとも「2」に関しては何の不安もない。

加えてこれは3への回答にもなるのだが、「続編は恐らく新ハード(の、もしかしたらローンチタイトル)」。
任天堂のゲームハードは、据え置き機がファミリーコンピュータ(1983年)→スーパーファミコン(1990年)→NINTENDO64(1996年)→ニンテンドーゲームキューブ(2001年)→Wii(2006年)→Wii U(2012年)、携帯機がゲームボーイ(1989年)→ゲームボーイアドバンス(2001年)→ニンテンドーDS(2004年)→ニンテンドー3DS(2011年)と、概ね6〜7年のサイクルで更新されてきた*1。従って2016年に詳細が発表される予定の次世代機「NX」は、サイクルから見て2018〜9年頃まで保つはずの据え置き機ではなく2017〜8年頃に置き換わるはずの携帯機の新型であろうと予測できる。
つまり、待望の「携帯機で遊べるスプラトゥーン」だ。

(余談ながら、もしかしたらNXは単なる「新型の携帯機」ではなく、「据え置き機と携帯機のセットで構築される、初の融合型ハード」であるかも知れない、というか将来的にゲーム機はそういう方向になってゆくべきだろうと思っているのだけれど、それが今かというのはちょっと疑問もあるので、そこまでは断言できない。)

というわけで「新作」については不安もないし、懸念もまったく解消されるということで納得いただけるのではないかと思うのだが、それはそれとして「10年戦える」かどうかについては一考の余地があるように思う。次回作まではいいとして、その後も長く戦えるのかどうか。

任天堂発売のゲームタイトル一覧 - Wikipediaを見ると、任天堂がいかに多量のIPを抱え、またそれを長期に渡り育ててきたかがよくわかる。逆に言えば滅多に新規IPは投入しないし、する時はがっちり育ててくる傾向にある。
とはいえ任天堂とて全てのIPで成功を収めてきたわけではない。リストの中には2までは出たけど続かなかったらしきものも含まれているし、下の方には続編のないタイトルも並んでいる。

リストを眺めていると発展したIPとしなかったIPの差が見えてくる:発展したものはいずれも初期のゲームパターンと異なるタイトルが発売されており、つまり「違うことをさせる」ことに成功したものだ。同じことしかできなかったものは消えてゆく。
ただしこれは「違うことをさせれば成功する」ことを意味しない。むしろ話は逆で、「同じことを続けて定着したキャラだけが他のことをさせても壊れない強さを身につける」のだろうと思われる。

まあ他のことをさせるにはキャラの行動に幅が必要で、たとえば昇り降り・ジャンプ・ダッシュ・しゃがみ・投げつけとアクションの多彩なマリオはテニスでもレースでもこなせたが、浮かぶだけのバルーンファイトではそれができなかった。
またアイデンティティが極端に狭い場合も難しい。風船を背負っていないバルーンファイトがなんだかわからないように、外見の変化に耐えられないキャラは使えない一方、着ぐるみでもなんでもこなすマリオは強い。キャラデザインの勝利である。
翻ってイカを見るに、最初から武器別に様々なアクションを持ち任意の服装に対応しつつも明瞭な外見的特徴と特色あるインクアクションで見分けが可能であり、かなり強いのではないかと思われる。
とはいえ「塗れる」「潜れる」ことを最大の特徴とするキャラだけに、それを生かせないタイプのゲームへは適用しにくくなりそうだという点では、流石にマリオほどの幅を持たせるのは難しいかもしれない。
さしあたってはヒーローモードを分離して「ブキとギアを買い替えながら進むアクションRPG」的な路線とか、「インク潜りと壁登りを活用して進むスクロールアクション」とか、あるいは「インク塗り潰しによる見た目変化と壁登りによる視点制御を使った錯視系パズル(PSPの「無限迷宮」とかの路線)」みたいな方向は期待できるのではないだろうか。

*1:ゲームボーイ→アドバンスが11年もあってDSまでが3年しかないのは、製品サイクル末期だったはずのゲームボーイに「ポケットモンスター」というモンスターが降臨してしまったことによる乱れ

ミニチュアゲームの市場規模と問題と

先日ちょっとミニチュアゲームについて「多数の障害があってなかなか普及しない」というようなことを言ったところ、色々と批判を受けたようだ。おおよそ「何も知らん部外者がいいかげんなことを言ってる」的な反応であったように見受けられる。
まあ私もミニチュアゲームの経験があるとはいっても10年ぐらい前の話で、以降は気になるゲームのスターターを買ったり通販を覗いたりはしても実際にプレイするには至らずにいるので、確かに現在の内情をよく知っているとは言い難く、それ故に間違ったことを言っている部分はあるだろう。しかし一方では、調べたり買ったりする程度にははっきりとこのジャンルに興味を持っているにも関わらず、その先まで踏み込めないという位置にあるわけで、正に「ミニチュアゲームが普及しない理由」を体感しての発言でもある。
そもそも、どんなジャンルであれ「知らない人に知ってもらう」「知ったけど踏ん切りのつかない人の躊躇要因を軽減する」ことで人口を増やしてゆくことが回り回って流通の拡大や低コスト化、プレイ環境の充実など自分たちの利益になるものであって、「積極的に飛び込んでくる者以外は去れ」では衰退を招くのではないか、ということを、単に「商品として普及が難しい特徴を抱えている」こと以上に心配するに至ったので、この記事を書いている。

なお、「ミニチュア駒を含むボードゲーム」と「ミニチュアゲーム」の境界は明確ではないが、ここでは

  1. ミニチュアそれぞれに固有の能力値があること
  2. ミニチュアを追加購入できること
  3. 所有するミニチュアを選んで編成できること

を満たすもの、と定義したい。

ミニチュアゲームの抱える問題

まずは「ミニチュアゲーム普及の障害」についての持論を述べよう。まあミニチュアゲームといっても様々であるから、すべてに当て嵌まるとも限らないのだが、概ね次のような要因が挙げられる。

言語問題

多くの場合で最大の障害となるのが言語の問題だ。ミニチュアゲームの本場は英語圏であり、大半のゲームはルールブックが英語で書かれている。多言語化されているものでも日本語版がある例は少なく、有志による抄訳、あるいは自力での読解が求められることが多い。
また国内に販売店のないゲーム、あっても流通がごく限られるゲームも多く、そうしたものは個人輸入せざるを得ない場合もある。もっとも、このあたりは近年かなり改善されてきており、多数のラインナップを有する国内専門店もあるので、以前よりは確実に買い易くなっているが。

価格問題

ゲームごとの差もかなりあるのだが、一般にミニチュアゲームに用いられるメタルフィギュアはそこそこ高い。だいたい高さ35-40mmぐらいの人型一体で1000円前後、大型のユニットでは数千〜1万を越すものもある。近年は数を必要とする一般兵士などはプラキット化によって安くなってきたが、それでも1部隊分で4000円ぐらいはする。これらを複数用意する必要があるため、概ね1万円前後、あるいはそれ以上はかかると見た方がいいだろう。ミニチュアゲームの初期投資。 | 狂道化通信@気分更新などによれば「最低限度のルール把握用」でも5000円程度、ちゃんと遊べるレベルで2〜3万円前後を想定した方が良いようだ。これ以外に別途、ルールブックや軍勢ごとのデータが必要になる場合もある。
またミニチュアゲーム事始め2012(仮) | 空想海軍 航海日誌ではディストピアンウォーズが「1万円以内でプレイ開始できて、さらにスタートボックスだけでけっこう長く遊べます」、ロード・オブ・ザ・リングが2万5千〜3万程度、ウォーハンマー40000が「一般的に遊ばれている1000~2000ポイントの編成をするのに3万円~くらいは最低かかりそう」サイクロプスが「スタートボックス(ミニチュア含まず)8000円とミニチュアが1万円程度は必要になりそうですが、ゲーム自体がボードゲームライクなので、それ以上極端な増資は必要ありません」とあり、ゲームによってばらつきはあるものの平均して2万円前後ということになる。

また、フィギュアは通常未組み立て・未塗装の状態であるので、これを組み上げ塗装するための道具も別途必要になる。

ただ、初期投資に数万というのは趣味の金額としてそれほど高いわけではない。たとえばゲーム機を買えば本体価格で2〜4万、ソフト1本あたり5千〜1万程度。スポーツだって野球ならバットとグローブだけでも安いもので2万ぐらい、テニスでも初心者用のラケットで1万5千円から。他にウェアなども要るから、やはり初期投資で数万程度にはなるだろう。従って価格の問題は単体で極端に効いてくるものではなく、「これだけの金を投じるに見合うものがあるかどうか」といった、期待感や見通しと絡んでの割高感の問題になり、これは後述する知名度問題などとも絡んでくる。

時間問題

ミニチュアゲームのプレイそれ自体は1戦につき30分〜2時間といったところで、まあボードゲームなどではよくある規模だし、長く感じるものではない。前後にミニチュアの展開・収納にかかる時間が発生するが、それを含めても面倒で仕方ないということはないだろう。
またゲームの準備として予め保有ミニチュアからいくつかを選んで編成しておく必要があるが、これもまあTCGに起けるデッキ編成などと同じで楽しみの範疇であり面倒の部類ではない。
問題があるとすれば、組み立て塗装の方だろうと思われる。
勿論これも模型趣味的には楽しみの部分であり、ミニチュアゲームとはその部分を含めての趣味ではあるのだが、1点1点を時間かけて仕上げれば良い模型と異なりゲーム駒としてのミニチュアはとにかく数が必要となるため、「同じ塗りを何度も繰り返す」部分が多い。いずれにせよ、丁寧に仕上げるならば1体あたりにかなり時間がかかるのは確かで、私生活で趣味に充分な時間を投じられるかどうかがポイントになるだろう。
また模型よりゲームに比重のあるプレイヤーの場合、ゲームの準備段階に手間がかかりすぎてなかなか遊び始められないことに苛立ちを感じることもある。

場所問題

ゲームによるが、戦場として2〜3m四方程度の広さを必要とする場合が多く、個人宅では場所の確保が難しい。プレイに要する場所だけでなくミニチュアを収納する場所も問題で、フィギュアは塗装剥がれたり部品が取れたりしやすいので個別に緩衝材で挟むなどして固定する必要があり、それが数十〜数百集まるとかなりの体積となる。更には戦場に変化を与える地形オブジェクトも必要になるので、海外のプレイヤーは専用の部屋を用意していたりするようだが、日本の住宅事情ではなかなか厳しい。

知名度問題

これがある意味最大の障害である。そもそもどんなゲームかも知られていない。仮に写真などを見掛けてちょっと興味を持ったとしても、そこから「じゃあやってみようか」までの道程に大きな隔たりがある。たとえばTRPGボードゲームなどの非電源系ゲーム雑誌などにもミニチュアゲームの話題はあまり出てこないし、また模型雑誌でもメタルフィギュアなどはあまり扱われない*1。模型と非電源ゲームの双方に跨がるジャンル、という特徴が仇になっている感がある。
ひとまず「どんなゲームジャンルか」「どこで手に入れられるか」「どうやって遊ぶか」「どうやって塗るか」「どんな種類があるか」「どこに遊び相手がいるか」といったことを網羅したポータルが必要なんじゃなかろうか。なかなか難しい話だが。

国内ミニチュアゲームの人口推計

ところで国内ミニチュアゲーム人口がどの程度なのか、寡聞にして調査事例を知らないので推計してみる。

まず、海外でのシェアを調べる。
Quest for Fun!: Miniature Gamesによれば2011年時点でのミニチュアゲーム市場シェアはおよそ3/4がウォーハンマー系(6割が40K、15%ほどがFB)といった状態のようだ。数年前の状況ではあるが、極端な変動はないだろうと考えてひとまずこの比率を当てにする。
次にウォーハンマーの販売元ゲームズワークショップの決算を見る。上場企業なので決算報告がPDFで公開されており、これによると直近半年の売上は5530万ポンドである。これにはミニチュアの売上以外にも色々含まれるとは思うが、さしあたりその辺りを無視してざっくりユーザ人口スケールを把握してみることにしよう。
AmazonUKで販売されている、ウォーハンマーFBの後継であるAge of Sigmarのスターターセットが62ポンド。単純に売上を割るとおよそ85万倍となる。「半年に一度、スターターと同程度の金額を費やす」というのが客層の平均的購入モデルとして妥当なのかどうかには議論の余地があると思うが、そのように仮定すれば全世界で85万人ぐらいのプレイヤー人口があるということになる。
85万人のGWユーザがミニチュアゲーム全体の75%前後を占めるわけだから、他のタイトルを併せると113万人ぐらい……というのも乱暴な計算で、実際には「WH系だけやる人」「WHとそれ以外もやる人」的な重なりなのでは、という気もするが。

ひとまず世界全体でのミニチュア人口をごく大雑把に100万人前後と見積もるとして、じゃあ国内ではどのぐらいの規模か、という話になる。こちらは更に推計可能な情報が少ない……というかぜんぜんない。

たとえば「趣味人MAP」と題された全国ミニチュアゲームサークルマップに登録されているサークル数は全部で64。これで全てということはなく、掲載されていないサークルやサークルの形態を取っていない仲間内での集まりなどもあるだろうと思われるし、そもそもサークルの構成員が何人ぐらいなのかもよくわからないが、ざっくり倍の実数が存在し、1サークルあたり10人ぐらいがいるのだとして、1280人ぐらいということになる。流石にこれは少なく見積もりすぎだろうか。
あるいは店の数から考えてみよう。国内でのシェアもはっきりしないものの、世界シェアから見ても最多層はゲームズワークショップ系だろうと思われる。国内に直営店を持ち、また多数の正規取扱店を持っているミニチュアゲームメーカーは恐らく他になく、ボードゲーム/TRPG系の店などでもウォーハンマー系のミニチュアを扱う店はそれなりに見るが、他のタイトルは極端に少ない。
公式Twitterによる正規店リストを見ると、2015年8月時点でGW社の正規取扱店は77店舗。うち専門店といえるレベルで品を揃えているのは9店舗。仮に各店10人のユーザを抱え、専門店が100人を抱えているのだとすれば1670人。先程よりは少し多いが、似たり寄ったりだ。
あるいは世界全体の1%ぐらいなのだとすれば8千〜1万1千人ぐらいの間かも知れない。ただ上の試算からは随分乖離しているし、1%という算定の根拠ももちろん何もない。

まあ、(希望的観測も含めて)大体国内に3千人前後、というのが実情ではないかなと思うが、どうだろう。
単純計算で、各都道府県に平均して60人ぐらい、実際には全国人口の1割を占める東京都で300人ぐらい、神奈川・大阪・愛知・埼玉などが70人程度、静岡あたりで30人程度、東北各県で10人程度‥‥といったところか(単純な人口比割り)。なんとなく実感に即しているような気がする。趣味人MAPで東北に全然サークル登録がないあたりとも符合するが、これは偶然なのか実情通りなのか。

どうすればいいのか

色々と書いたが、ではどうすればミニチュアゲームが普及するのか……という話になると、正直なんとも結論が出ない。
ある意味では「売れないから売れない」のだ。ユーザの絶対数が少ないから販売数が少なく、製造にしても流通にしてもコストが割高になり、高いから買いにくい。プレイヤーが少ないから知られる機会も少なく、知らないからプレイヤーが増えない。国内市場規模が小さすぎて国産流通は採算が厳しく、だから輸入品に頼らざるを得ないし公的な日本語化情報も望み薄で、故に買いにくい。堂々巡りである。

問題のうちいくつかを解消する試みがなかったわけではない。例えば国内大手玩具メーカーが「1体あたりが安価で、小数で編成できる」「彩色済みで手間がかからない」「コンパクトなボード上で遊べる」と、価格・時間・場所を解決したミニチュアゲームを売り出したことがあった。しかし結局この試みは潰え、メーカーはわずか1年で撤退した。流通の問題なども指摘されているようだが、それ以前に「メインターゲットとした小中学生が買いやすい程には安価でない」「フィギュアのデザインが今一つ垢抜けない」ことが大きかったように思う。子供向け雑誌でタイアップ漫画を連載したりアニメ1話相当のPVを制作するなど、宣伝にも力を入れていなかったわけではないが、それでも小学生への知名度は0に近かった。また、逆にミニチュアゲームを既に知っている層にも「塗装済み」「サイズ統一感なし」などが仇になったか敬遠されがちであったようだ。
メーカーはその後、解決できなかった部分を改良した新作を出し直す:こちらは既にフィギュア付きであることを諦め紙の駒にすることで小学生に合わせて価格を下げ、人気キャラクターを使うことで知名度・好感度問題も解決してきたが、如何せん人気キャラだけにゲーム市場も飽和気味であり、その中で存在感をアピールするには至らず、こちらは1年どころか第一段リリース後が続かなかった。

従って「問題があるから売れない」が事実であるとしても、安易に「問題を解決すれば売れる」わけではない、というあたりに根の深い問題がある。そもそも「どう売るか」はメーカーの考える問題であって、ユーザー側としては「地道に買い続ける」「なるべく多くの人を引き込むようにする」ぐらいしか手の打ちようがないのだが。
まずは、上にも買いたように「ミニチュアゲームについて知り、始めるために必要な情報を網羅した情報源」を用意するのが先決だろうか。それを執筆し、随時更新するだけでもかなりの労力になるし、かなり深く、かつ広くコミットしている人でないと難しいとは思うが。

というわけで、単に「問題があるよね」と書くだけの記事である。オススメのゲームとかノウハウなどはきっと詳しい人が色々まとめてくれることと思う。
とりあえず「体験方法」「買うもの&選び方」「オススメのゲーム」「購入方法」が揃った【アナログゲーム決死圏】第4回:ミニチュアゲームの始め方…体験方法からオススメのタイトルまで | インサイドをリンクしておく。

*1:どちらにも過去に連載事例などはあるのだが、全体として比重はかなり小さい

スプリンクラーで塗るガチエリア戦術

スプラトゥーン発売から半年。皆様イカがお過ごしであろうか。
今日は若人に反射速度で敵わないとお嘆きの老イカ諸君に向けて「戦わずしてウデマエを上げる」方法についてご紹介する。
戦わずして、とはいっても勿論ガチバトルをやらなければ上がらないわけで、あくまで「直接戦闘を避けつつガチバトルで勝つ」ための方法、ということになる。

用意するもの

ガチバトルのルールは3種類あるが、この中で一番楽に戦えるのが「ガチエリア」であろう。
ガチエリア戦が他と明確に異なるのは、「固定されたエリアを取り合う」こと。つまり主戦場が動かないため、状況が大きく変化しにくく、パターン化された戦術だけでも乗り切れる。また塗りの重要性が非常に高いため戦闘が苦手でも充分に立ち回れる。
そして、塗りに特化したサブといえばスプリンクラーである。
ほとんどのマップでは、スプリンクラーだけでエリアを確保できる。そうでない場合でも、適切に配置されたスプリンクラーならば単体でブキの塗り力と拮抗するぐらいの性能があるためブキと合わせて倍の塗り力で対抗でき、エリア確保力が非常に高まる。

ブキに.96ガロンを推したことに深い意味はない。単にスプリンクラー持ちの中で射程が長い、という程度の話だ。他に慣れたブキがあればそちらを活用しても良い。ただ、戦闘が苦手ならば射程の長いブキを使った方が安全に対処しやすいし、一撃の火力が高い方がまぐれ当たりでたおしやすい、といったことを踏まえると.96ガロンがオススメ、ということになる。
なおこの戦術を使用する場合、基本的にギアはなんでも良い。メイン効率・サブ効率・インク回復などがあればちょっと有利だが、ないと厳しいというほどでもない。反面、移動系などはあまり役立たないだろうと思われる。

ではステージごとのスプリンクラー配置を紹介しよう。これを実践するだけで、あとはやられないように気をつけてさえいれば6〜8割は勝てる。ただしS帯になると通用しなくなってくるので注意。

注意

これは基本的に、限られたパターンを繰り返すやり方である、そのためパターンを読まれると身動き取れなくなるので、連戦は避けること。
また、人によって得手不得手があるので苦手なステージやルールには参加しないこと。まあ余りに応用力少ないと名ばかりウデマエになってしまうけども、不得意状況を避けるのもまたウデマエの一部には違いない。

シオノメ油田

発売前の「試射会」から公開されていた初期ステージ。点対称に作られているスプラトゥーンのステージで現在のところ唯一の線対称構成。
ナワバリバトルでは北側広場の掌握が勝負の鍵となり、そのために北へ繋がる中央広場での攻防が繰り広げられるが、ガチエリアでもその部分を取り合う戦いとなる。
中央広場へ至るルートは広場南側への斜面、下通路からのエレベータ、そして壁を登って高台からのジャンプと3ルート、このうち広場北側に直接移動できるのは高台のみであるので、この位置は橋頭堡として極めて重要になる。そしてまた長射程ブキでの塗りに於いても、この位置を押さえられるかどうかでエリア全域の掌握力が変わる。
逆に言えば、敵(特にチャージャー)がここを押さえている場合は厳しい戦いを迫られることになるので、早めの対処が必要になる。





ハコフグ倉庫

ここもまた最初期からのステージ。横の広がりが弱いため、押し込まれると敵の火力に対抗する術がなくなることに注意。
基本的に中央の障害物を挟んでの睨み合いになるため手前を確実に確保すること、境界の向こう側まで塗れるようにすることでエリアを確保する。
塗り効率の点から言えば中央障害物のてっぺんにスプリンクラーを置くのが最良だが、即座に破壊されるため敢えて破壊しにくい位置に置く。




デカライン高架下

発売前の店頭体験会で先行公開されたステージだが、改装工事により随分と変わってしまった。以前なら左高台から上看板にスプリンクラー投げつつ96で塗っておくだけで確保余裕な感じだったのだが、左右に広がって高台から塗れなくなったため中央にスプリンクラーを置いたら下がって身の安全を確保しつつ端を塗るような感じになる。


アロワナモール

縦に長いステージだが、ガチエリアの場合は中央部分での狭い戦いになる。基本は右ルート高台から中央柱にスプリンクラー投げつつの塗り。ただ敵陣左ルートから制圧を受けやすいので要警戒。エリアを押さえた後では敵陣左高台側へ飛び移って進路妨害に努めると良い。



Bバスパーク

初期5マップの中では唯一の、エリアが2箇所に分かれたステージ。スプリンクラーは中央高台に設置しても良いのだが、「敵陣侵攻ルートから攻撃されにくい」位置としては下の2パターンをおすすめする。



ホッケふ頭

最初の追加ステージ。埠頭、と表記されてないので「ふあたま」だと思ってた人もいるとかいないとか。直線的な通路構成のためメガホンレーザーとチャージャーが威力を発揮する。
スプリンクラーはひとまず自陣側エリア向かいの壁に貼っておくと、敵の進入に対する有効な防御になる。敵側を攻める時は、どこに貼ってもすぐ壊されるのであまり気にしなくていい。


モズク農園

広いステージで、その分エリアも広い。中央高台により4分割されているため、外側から塗るのでは効率が悪く、スプリンクラー位置としてはほぼ中央一択。「どこに貼るか」よりも「どこから貼るか」の方が重要と言える。



ネギトロ炭鉱

本来ならば点対称のステージ構成だが、中央部が左右に分かれているため一方をエリアに、もう一方からジャンプ台で渡れる構成となり線対称になる。
エリアの塗り効率で言えば中央十字壁に上向き設置が最良、次に鉄橋底面に下向き設置だが、いずれも破壊されやすいため私は鉄橋手前面に貼って自陣側の足場を確保しつつ高台から降りずに96で塗り潰すことにしている。


タチウオパーキング

つづら折りステージ。中央広場とそれを押さえる高台を挟んでエリアが分割されており、自陣側の確保は容易だが敵陣確保が難しい。ひとまずスプリンクラーで自陣を押さえておくだけでも敵陣攻略に人数を割けるので有利。可能なら敵陣側も壁スプリンクラーで確保しつつ、それを壊しにくる相手を迎撃できるとなお良い。




モンガラキャンプ場

環状ステージで、主戦場は隣接しているにも関わらず直接行き来できないため、水路を挟んでの撃ち合い+左右から回り込んでの乱戦になりやすい。ひとまずスプリンクラーで自陣側を確保しつつ左右からの敵を警戒する動きが基本になる。余裕があれば敵陣側にスプリンクラーを投げ込んでもいい。


ヒラメが丘団地

このステージだけは攻略できない。攻略法がわからない、というよりも「攻略できないことがわかっている」レベル。主戦場が高い位置にあり周囲からのアウトレンジが不可能で、しかも複数方面から乗り込んでくる乱戦ステージであるため必然的に接近戦を余儀なくされる。このステージが出ている時は参加しないことにしている。

マサバ海峡大橋

縦に長いステージの横に長いエリア。長射程のブキだと真横からの塗りでエリアのかなりを効率良く塗れる反面、左右中央それぞれのルートに敵がダイレクトに出現するためアウトレンジでの塗りが難しい。またエリアが細長いためスプリンクラーで一度に塗れる範囲に限界がある。
スタートダッシュ時点でそれぞれルートが分かれるので、そこで担当したエリアをがっちり塗り固めることに努めつつ、隙を見て塗り広げよう。





キンメダイ美術館

動くステージ。スプリンクラーひとつで広範囲にインクを撒けるが、その分だけ壊されやすくもある。エリア中央回転体の真上に置くのが定番だが、敢えて他のパターンを探してみた。


マヒマヒリゾート&スパ

途中で構成が変化するステージ。エリアは中央にあって障害物のない広場で、スプリンクラーひとつで確実に全範囲を制圧できるが、敵の攻撃を受けずに塗り続けるのが難しい。


ショッツル鉱山

ここは私にとってもうひとつの鬼門のようで、今のところ戦術を確立できていない。

余談:エリアへの立ち入りについて

占拠中はエリア内にいることでカウントが速く進むと言われていたが、検証によると一切の差がない。従って、エリア内でやられて敵色を塗ってしまう危険を避けるためにも、エリア外からの攻撃に徹するのが正解と言える。この点でも「長射程ブキ+スプリンクラー」は強い。
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